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捜査12日目
捜査12日目~ルツコイの決断
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夕方ごろ、マイヤーとクラクスは城に戻り、司令官ルツコイの執務室にやってきた。部屋の中に入ると敬礼した。ルツコイは今日も少し不機嫌そうにしている。部屋に入ってきた二人を見ると口を開いた。
「ちょうどよかった、君らに話をしないといけないことがある」。ルツコイそういうと手に持っていた書類を振り上げたて言った。「面倒なことになった」。
すでにヴェールテ家の事件が面倒なことになっているのに、さらにまた何だろうと二人は思った。
ルツコイは書類を持った手を下して、話を続ける。
「つい今しがた、オストハーフェンシュタットの警察から連絡が来た。クリーガーが向こうで警察に足止めさせられているらしい」。
二人は驚いて尋ねた。
「それはなぜですか?」
「クリスティアーネ・ヴェールテが殺害されたらしい。クリーガーが持って行ったワインの中に毒が入っていたようだ」。
「えっ?!」
二人は思わず声を上げた。そのワインはクリーガーが出発するとき、執事のベットリッヒから手渡されるのを見た。あのワインだろうか?
「警察はクリーガーを疑っているようだ」。
「そんなバカな!」クラクスは思わず大声を上げた。「師がそんなことをするはずがありません」。
「私も彼が殺人に関与したとは思っていない。彼の事も今回の事件の状況も向こうの警察はよくわかっていないからな。向こうの司令官イワノフに宛に、クリーガーを解放して帰らせるように依頼する文書を早馬で出した。そうなれば彼はすぐにでも解放されると思う」。
それを聞いて二人は胸を撫で下ろした。
「彼の帰還は明日夜の予定だったが、最低二日は延びるだろう」。
「わかりました」。
マイヤーは了承した。
「しかし、クリスティアーネまで殺害されるとは。これで四きょうだいのうち三人が殺害されたということです」。
「三男のマルティンとは会ったのか?」
「会いました。結論から言うと彼はきょうだいの殺害には関与していないと思います」。
「それはなぜだ?」
「まず、彼は遺産には興味がないそうです。それに、彼は政府内の汚職を調べています。そういった人物が内務局の長官に言って警察の捜査を中止させるとは思えません」。
「彼が遺産に興味がないというのは信じても良いのか?」
「信用に足ると思います」。
「わかった。いいだろう」。
「それで、我々が今日参りましたのは、その政府内の汚職の件です。司令官のご協力をお願いしたく」。
「協力とは?」
「旧貴族たちが賄賂を使って政府内で影響力を持っています。マルティンの話によると帝国軍にも賄賂が及んでいるそうです。ですので、この機会に汚職の一掃ができないかということです」。
「なるほど。殺人事件を調べているうちに汚職にたどり着いたわけだね?」。
「そうです」。
「帝国軍内の汚職については噂で耳にしていたが、さほど大きなものではないと思っていた」。
帝国出身でもある警察長官のミューリコフの話では、帝国内部の汚職は小さなものは取り締まらないと言っていた。司令官は軍の汚職は大きなものとは思っていないようだ。だから、あえて無視していたのだろう。
「司令官。このままでは軍の汚職も政府同様に拡大してしまいます。今のうちに芽を摘んでおかないと、取り返しのつかないことになるかもしれません」。
ルツコイはしばらく考え込んだ。
共和国の旧貴族が帝国軍に影響を及ぼせるようになったら、反乱などの取り締まりに影響が出てしまうだろう。そうなると旧共和国内の統治も危うくなるということか。
ルツコイは決断して、立ち上がった。
「わかった。軍の内部のほうは私に任せてくれ。政府内は内務局に任せよう」。
「内務局の長官は、未だ行方不明では?」
「臨時で帝国出身の長官代行を任命する。ちょうど適任の者が、首都からこの街を訪問しているから彼に依頼してみるよ」。
「わかりました。提案をお聞きくださり、ありがとうございます」。
「早速、動こう」。
ルツコイ、マイヤー、クラクスは執務室を後にした。
ルツコイは城内の軍の兵舎に向かう。マイヤーとクラクスもその後に続く。
「ちょうどよかった、君らに話をしないといけないことがある」。ルツコイそういうと手に持っていた書類を振り上げたて言った。「面倒なことになった」。
すでにヴェールテ家の事件が面倒なことになっているのに、さらにまた何だろうと二人は思った。
ルツコイは書類を持った手を下して、話を続ける。
「つい今しがた、オストハーフェンシュタットの警察から連絡が来た。クリーガーが向こうで警察に足止めさせられているらしい」。
二人は驚いて尋ねた。
「それはなぜですか?」
「クリスティアーネ・ヴェールテが殺害されたらしい。クリーガーが持って行ったワインの中に毒が入っていたようだ」。
「えっ?!」
二人は思わず声を上げた。そのワインはクリーガーが出発するとき、執事のベットリッヒから手渡されるのを見た。あのワインだろうか?
「警察はクリーガーを疑っているようだ」。
「そんなバカな!」クラクスは思わず大声を上げた。「師がそんなことをするはずがありません」。
「私も彼が殺人に関与したとは思っていない。彼の事も今回の事件の状況も向こうの警察はよくわかっていないからな。向こうの司令官イワノフに宛に、クリーガーを解放して帰らせるように依頼する文書を早馬で出した。そうなれば彼はすぐにでも解放されると思う」。
それを聞いて二人は胸を撫で下ろした。
「彼の帰還は明日夜の予定だったが、最低二日は延びるだろう」。
「わかりました」。
マイヤーは了承した。
「しかし、クリスティアーネまで殺害されるとは。これで四きょうだいのうち三人が殺害されたということです」。
「三男のマルティンとは会ったのか?」
「会いました。結論から言うと彼はきょうだいの殺害には関与していないと思います」。
「それはなぜだ?」
「まず、彼は遺産には興味がないそうです。それに、彼は政府内の汚職を調べています。そういった人物が内務局の長官に言って警察の捜査を中止させるとは思えません」。
「彼が遺産に興味がないというのは信じても良いのか?」
「信用に足ると思います」。
「わかった。いいだろう」。
「それで、我々が今日参りましたのは、その政府内の汚職の件です。司令官のご協力をお願いしたく」。
「協力とは?」
「旧貴族たちが賄賂を使って政府内で影響力を持っています。マルティンの話によると帝国軍にも賄賂が及んでいるそうです。ですので、この機会に汚職の一掃ができないかということです」。
「なるほど。殺人事件を調べているうちに汚職にたどり着いたわけだね?」。
「そうです」。
「帝国軍内の汚職については噂で耳にしていたが、さほど大きなものではないと思っていた」。
帝国出身でもある警察長官のミューリコフの話では、帝国内部の汚職は小さなものは取り締まらないと言っていた。司令官は軍の汚職は大きなものとは思っていないようだ。だから、あえて無視していたのだろう。
「司令官。このままでは軍の汚職も政府同様に拡大してしまいます。今のうちに芽を摘んでおかないと、取り返しのつかないことになるかもしれません」。
ルツコイはしばらく考え込んだ。
共和国の旧貴族が帝国軍に影響を及ぼせるようになったら、反乱などの取り締まりに影響が出てしまうだろう。そうなると旧共和国内の統治も危うくなるということか。
ルツコイは決断して、立ち上がった。
「わかった。軍の内部のほうは私に任せてくれ。政府内は内務局に任せよう」。
「内務局の長官は、未だ行方不明では?」
「臨時で帝国出身の長官代行を任命する。ちょうど適任の者が、首都からこの街を訪問しているから彼に依頼してみるよ」。
「わかりました。提案をお聞きくださり、ありがとうございます」。
「早速、動こう」。
ルツコイ、マイヤー、クラクスは執務室を後にした。
ルツコイは城内の軍の兵舎に向かう。マイヤーとクラクスもその後に続く。
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