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放浪編

9話 スカウトされた異世界の人類人

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俺の名前は入江だ
この世界では下の名前があるはずなのだが、俺にはそんな名前が無かった
名前を付けられる価値も人間なのだと、人々にそう言われたからだ

「植物人間じゃ何も出来ないよ」

そう、俺は植物人間だ 四肢が動かないのだ
どれほどの会話を希望した所で、この現実世界ではチャンスもきっかけも寄越しやしなかった

俺は嘆き涙を流しながら、その一生を30年と過ごしていた
そんなある日の事である


俺は30年と病院で生きてきたが、
ある日を境に試験体とされたのだ
完全なる神経回路の再現だ

「やめろ!俺は生きてるんだ!」
「けど君の四肢は動かないだろ」
「それに君は元々戸籍もない状態だよ 助けなど無い」

俺の有無を聞かずに
戸籍すら持てなかった俺は、そのまま四肢を切断された
勿論、麻酔を打たれて痛みは無かった
だが、心の平穏は訪れやしなかったのだ

30年という長い月日を病院から聞こえるわずかな声によって日本語を開花させて
飢えた状況の中、必死に生きてこのザマだ


<全く、何たる仕打ちなのだ>


そして俺は時間を要さずに
そのまま四肢を機械にされた
この機械が物を言ったのだ 動く事に成功した俺は


「おい、やめろ!」
「だれか!たすけてくれー!!」

(助け?助けをくれたか?この俺に!)

病院をまずはガソリンを巻き放火させてやった
そう、こんなチャンスは二度と訪れないのだ

俺は、この30年間復讐だけを考えていた 計画性のある犯行だけを



そして俺は世界を征服した征服者となっていた
恐怖政治によって俺は支配した

「俺は勝ったぞー!!」

その時だった
深夜になって俺は高らかに叫んだ後、核ミサイルを放たれていた

<何もかも道ずれに俺を殺すのか?>

しかし問題は違っていた
核シェルターが秘密裏に俺のいる国で作られていたのだ
深夜に全員がシェルターへと隔離されてから
全世界から核ミサイルをぶっ放されて征服者である俺だけが殺された手はずという訳だ

「被爆したのも俺だけ…そして、ここにいるのも瓦礫と俺だけ…」

はは、実に滑稽だ
なんだこの世界、なんなんだよこんな世界…!

「被爆したのにまだ生きてるって人間しぶといね~」

ずっと孤独だった俺に語り掛けた純粋な言葉を聞いた
そこでは被爆した俺の痛々しい姿を何とも思わないような子供が存在していた



「なるほどなるほどー、植物人間として生きて30年誰からも見捨てられてた後
廻った最後のチャンスの瞬間に君は世界征服者になったんだね

しかし残念だったねー、君の独裁政治を善しとしない奴らに根絶やしにされちゃってかわいそうに
でも安心してよ 君のいる地域の国民は全て地下の核シェルターに逃げ延びてるから!

君は復讐を考えるあまりに、裏の暗躍を取り逃がしていたようだ」

残念だったね とウインクする

「お前、誰だよ 苦しいよ どうにかしてくれよ」

被爆したこの体では苦しみしか存在し得ない
痛いという感覚を通り越した何かがこみ上げるよ

「え?僕の名前?僕の名前はドッペリアンだよ」

ドッペリアンという奴は意味が分からない
カバに浮遊している子供だ

「俺は夢を見ているのか?」

「この世界自体夢みたいなもんだよ(笑)
地平線の向こう側には君の知らない異世界が存在しているのだから
君のいる世界のメタ概念とは違った世界が垣間見えるよ」

俺の苦しみなど造作もないように辺りを見渡して瓦礫と灰を見ては面白がっている

「で、君はどうする?
ここで天寿を全うするのかい?
それとも異世界でやり直し転生するかい?
僕は君の救いようのなさにスカウトしに来たんだよ」

そして笑顔でドッペリアンはもう一言言った

「どちらにしろこの世界には君はもう存在しないって事だよ^^」

俺は、どうしたいのだろう?
俺は、チャンスが復讐でしかなかった
けどもこの子は何か違う そんな気がした
変わりたい そう信じれる何かがあった

「俺、やり直してぇよ」
「次は何になりたい?」
「何も考えない 快楽だけ貪るような性格になりてぇかな」

恥ずかしそうに言った俺をドッペリアンは喜んで受け入れてくれた
もう、深夜は明けて
太陽が天を昇っていたそんな時に、俺とドッペリアンはスカウトの交渉を終えたのだ



「なんだこいつ!逃げるぞ!絶対逃がすな―!」
「この大量殺人者め!許さんぞ!」

大勢の人口その全てが俺を完全否定する
だがもう、俺には関係が無いのだ
この被爆した身体からも感じる微かな希望
その希望だけが俺の生きる糧なのだ


「ではでは、異世界へごあんなーーい♪」

ブラックホールがいきなり現れてドッペリアンはそのまま向かった
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