私とツノ付きお兄ちゃん

緋宮閑流

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私とツノ付きお兄ちゃん

#07 ってことでお兄ちゃんとお買い物に行きます

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兄が迎えに来てくれた。
私の学校が終わってから兄の夜間学校が始まるまでの間に父母の結婚祝いを買うのだ。
「お兄ちゃん!」
私は兄に駆け寄った。こちらを向いた兄の頭にキラッと光るツノ飾り。兄の目と同じ綺麗な金色の石は私が兄にプレゼントしたもの。渡した日からいつも付けていてくれるの、ちょっと照れ臭いけど嬉しい。
そう。校門に佇む兄には私には無いツノがある。更に言えばローブの下から矢印型の尻尾がぶらぶらと覗いている。見ての通り私と兄は種族が違うんだけど、父と母が好き合っちゃって家族になった。
父と兄は魔法の国から来た魔族。魔法が使える種族、って意味だ。
「お兄ちゃん、もう来てたの?」
「ああ、まぁ、暇だからな」
行くぞ、と歩き出されて、慌てて後を追う。すごく背が高いってわけでもないけど、兄の足は早い。
「プレゼント、何買う?」
小走りに追い抜いて振り向けば、兄は小首を傾げた。
「うーん…魔石とかは無いんだろ?」
「流石に村のお店には無いかなー」
学校が有る大きさの村ではあるけれど、魔法の石なんて見たことが無い。そりゃ、ひも細工が名物の村だから綺麗な石はたくさん売っているんだけど、アクセサリーに使うものであって魔法の石ではないんだ。
「お菓子は?」
「母さんのアプリンパイ以上の味が思い付かない」
「お母さんのパイ、美味しいもんねぇ」
兄が母のパイを初めて食べた瞬間の顔を思い出す。いつも白いほっぺたがふわああぁぁっと赤くなって、金色の目がキラキラしていたっけ。
「本はどうだ?」
「お父さんが読む本なんて何買ったら良いかわかんないよ」
「……そうだな」
行くお店も決めなければならないから、しばらく道端で考え込む。
お土産のお店なら綺麗なものがたくさん並んでいるけれど、地元民が買うことはあんまり無い。みんな編みかたを知っているから、贈り物にするなら自分で編んだほうがずっと気持ちが込められるでしょ?
でも今回は兄と二人で一緒にプレゼントをしたかったから、組み紐はお休み。
そうすると……

「とりあえず、雑貨屋さんに行ってみる?」

そんな選択肢しか出てこないのだった。

────────────────────

「日用品も悪くないもんだな」
昼食のテーブルから、食器棚に並んだカップを眺めて兄が目を細める。つまんだパンにてんこ盛りのコケモモジャムが垂れそうなのはご愛嬌あいきょう
「そうだねぇ」
お皿の隅っこに取り分けられたジャムをパンで掬いながら私が答える。
あの日、雑貨屋さんに並んでいた二つのカップ。お揃いの柄は色違い。あんまりにも可愛くて、兄と私は満場一致でそれをプレゼントにすることに同意した。
父母はとっても喜んでくれて、今では毎日そのカップでお茶を楽しんでくれている。
「お兄ちゃん、お茶っ葉、まだ有った?」
「……やべ、これで最後だ」
自分のカップにお茶を足していた兄がポットを揺すった。ぽたりと最後の一滴が落ちる。
「……後で雑貨屋行くか」


──今日も兄とお買い物に行ってきます。
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