39 / 96
35 冒険者は、包まれる。
しおりを挟む
どう返したら良いか、分からず、でも抱き着いた体は離したくなく、結果、くっ付いたまま、視線だけをウロウロとさせていたら、「ぷふっ!」と、タットさんが吹き出した。
「なーんてね!半分冗談、半分本気。気を付けてね、可愛い可愛い、俺のオオカミさん」
「うぁ……はい……」
ニコっと笑うタットさんは、いつもの雰囲気に戻っていた。
「先にお風呂入っちゃって。着替えは俺の貸そうね。洗濯物も全部出すんだよ。夜のうちに洗っちゃえば、夏だし、朝には乾くだろうから。……って下着は……新しいのあったかな?途中で買えば良かったね」
いそいそとソファを降り、部屋をあちこち行き来しながら着替えを持ってきてくれている。
「あ、俺ノーパンでも気にしないです。タットさんが気になるなら、新品じゃなくても、貸してくれたら履きますよ?」
「……は?」
「……ん?」
「パンツ……だよ?流石にそれ……」
タットさんが、宇宙人か何かと遭遇したときの様な顔をしてる。宇宙人と遭遇した事ないから、あくまで想像の範疇だが。
「俺、良く間違えて兄ちゃんとか父さんのパンツ履いちゃうんですよ。この体型になってから、サイズが一緒になってしまって、どれも同じに見えるんですよ。洗濯されてれば、俺、気にならないんで」
デブだった頃は、明らかにサイズもウエストのビロビロ具合も違っていたので、間違える事は無かったのだが、今の体型になってから区別が付かなくなってしまった。
よって、俺は良くパンツを履き間違える。父さんや兄ちゃんは、きちんと自分のパンツを履いているんだが。
アレ、不思議で堪らない。
「ゆん君て……こう……おおらかだよね?」
「良く言われます」
タットさんは、タンスを漁って「比較的新しいのだから」と言ってパンツも貸してくれた。黒の無地のボクサータイプだった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「着替え、ありがとうございます。着心地良いです。ほんのりタットさんの匂いします」
お風呂から上がって、貸してもらった服に一式着替えると、いつもと違う匂いが自分からしてきた。
「それ柔軟剤だよ」
ソファでくつろいでいたタットさんがニコニコしながら答えた。
「それでもコレはタットさんの匂いです」
ボスっと隣に勢い良く座り、寄りかかろうとしたら「俺も風呂入っちゃうね」とタットさんが立ち上がったため、俺はそのままソファにコロンと転がった。
「はーい」
寝そべったまま、ヒラヒラと手を振って見送ると、タットさんが近付いてきて「その角度も可愛い」と言いながら、キスしてきた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
タットさんが風呂に入っている間、俺はCDフィットを起動させ、簡単なストレッチメニューをこなしていた。バイトの終盤、ユネさんに色々言われて、悩んで、タットさんと会って話をして……思えば結構な急展開だったかも知れない。
無意識に緊張していたのか、身体がかなり強ばっていて、ストレッチがいつもよりも気持ちがいい。
足を可能な限り開脚し、身体を横に倒してググッと痛気持ち良い所まで筋肉を伸ばして静止する。CDフィットからはカウントの音楽が流れる。歴代のCDゲームミュージックのアレンジだからついつい聴き入ってしまう。
「はぁぁぁ~~……」
息を吐いて、どこまで身体を倒せるか、チャレンジしてると、
「うわ柔らかっ!ゆん君めっちゃ身体柔らかいね?」
と、タットさんに驚かれた。
俺は身体を起こし、CDフィットのストレッチメニューを一時停止させてから振り向く。
タットさんはTシャツ、短パンで、かなりリラックスした出で立ちだった。
「あ、気にしないで続けて。俺、横で見てるから」
と、言われたので、ストレッチメニューを再開する。タットさんはソファに座って俺のストレッチを眺めてる。見られるのは慣れてないので、少し恥ずかしいのだが、ことある事に「凄い」「そこまで曲がるの?」「柔らかいねぇ」と驚いたり、誉めてくれるので、いつもより捗ってしまった。
ストレッチメニューも終わり、使役モンスターに経験値を付与する。一通りの操作を終え、アプリを閉じると、タットさんが床に座って柔軟をしていた。
「……くっ!!……んふっ!」
全然伸びてないし、足が曲がってる。足がとても良く曲がってる。びっくり過ぎて同じこと2回思った。
「タットさん、めっちゃ身体硬いですね?」
「いやコレが普通。成人男性の普通だよ。ゆん君が柔らかいの」
そう言いながら、タットさんが広げた両腕を俺の方に向けたので、座って腕の中におさまった。
「んふっ」
と笑う吐息が、俺の耳にかかる。
背中から、ゾワゾワとする何かがせり上がってきて、ブルっと思わず震えた。
「耳、弱い?」
そうタットさんに耳元で囁かれ
「ひあっ!?」
と、思わず叫んでしまった。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
ストック切れました……
不定期になりますが、これからもよろしくお願いします。
完結は、必ずさせます。
「なーんてね!半分冗談、半分本気。気を付けてね、可愛い可愛い、俺のオオカミさん」
「うぁ……はい……」
ニコっと笑うタットさんは、いつもの雰囲気に戻っていた。
「先にお風呂入っちゃって。着替えは俺の貸そうね。洗濯物も全部出すんだよ。夜のうちに洗っちゃえば、夏だし、朝には乾くだろうから。……って下着は……新しいのあったかな?途中で買えば良かったね」
いそいそとソファを降り、部屋をあちこち行き来しながら着替えを持ってきてくれている。
「あ、俺ノーパンでも気にしないです。タットさんが気になるなら、新品じゃなくても、貸してくれたら履きますよ?」
「……は?」
「……ん?」
「パンツ……だよ?流石にそれ……」
タットさんが、宇宙人か何かと遭遇したときの様な顔をしてる。宇宙人と遭遇した事ないから、あくまで想像の範疇だが。
「俺、良く間違えて兄ちゃんとか父さんのパンツ履いちゃうんですよ。この体型になってから、サイズが一緒になってしまって、どれも同じに見えるんですよ。洗濯されてれば、俺、気にならないんで」
デブだった頃は、明らかにサイズもウエストのビロビロ具合も違っていたので、間違える事は無かったのだが、今の体型になってから区別が付かなくなってしまった。
よって、俺は良くパンツを履き間違える。父さんや兄ちゃんは、きちんと自分のパンツを履いているんだが。
アレ、不思議で堪らない。
「ゆん君て……こう……おおらかだよね?」
「良く言われます」
タットさんは、タンスを漁って「比較的新しいのだから」と言ってパンツも貸してくれた。黒の無地のボクサータイプだった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「着替え、ありがとうございます。着心地良いです。ほんのりタットさんの匂いします」
お風呂から上がって、貸してもらった服に一式着替えると、いつもと違う匂いが自分からしてきた。
「それ柔軟剤だよ」
ソファでくつろいでいたタットさんがニコニコしながら答えた。
「それでもコレはタットさんの匂いです」
ボスっと隣に勢い良く座り、寄りかかろうとしたら「俺も風呂入っちゃうね」とタットさんが立ち上がったため、俺はそのままソファにコロンと転がった。
「はーい」
寝そべったまま、ヒラヒラと手を振って見送ると、タットさんが近付いてきて「その角度も可愛い」と言いながら、キスしてきた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
タットさんが風呂に入っている間、俺はCDフィットを起動させ、簡単なストレッチメニューをこなしていた。バイトの終盤、ユネさんに色々言われて、悩んで、タットさんと会って話をして……思えば結構な急展開だったかも知れない。
無意識に緊張していたのか、身体がかなり強ばっていて、ストレッチがいつもよりも気持ちがいい。
足を可能な限り開脚し、身体を横に倒してググッと痛気持ち良い所まで筋肉を伸ばして静止する。CDフィットからはカウントの音楽が流れる。歴代のCDゲームミュージックのアレンジだからついつい聴き入ってしまう。
「はぁぁぁ~~……」
息を吐いて、どこまで身体を倒せるか、チャレンジしてると、
「うわ柔らかっ!ゆん君めっちゃ身体柔らかいね?」
と、タットさんに驚かれた。
俺は身体を起こし、CDフィットのストレッチメニューを一時停止させてから振り向く。
タットさんはTシャツ、短パンで、かなりリラックスした出で立ちだった。
「あ、気にしないで続けて。俺、横で見てるから」
と、言われたので、ストレッチメニューを再開する。タットさんはソファに座って俺のストレッチを眺めてる。見られるのは慣れてないので、少し恥ずかしいのだが、ことある事に「凄い」「そこまで曲がるの?」「柔らかいねぇ」と驚いたり、誉めてくれるので、いつもより捗ってしまった。
ストレッチメニューも終わり、使役モンスターに経験値を付与する。一通りの操作を終え、アプリを閉じると、タットさんが床に座って柔軟をしていた。
「……くっ!!……んふっ!」
全然伸びてないし、足が曲がってる。足がとても良く曲がってる。びっくり過ぎて同じこと2回思った。
「タットさん、めっちゃ身体硬いですね?」
「いやコレが普通。成人男性の普通だよ。ゆん君が柔らかいの」
そう言いながら、タットさんが広げた両腕を俺の方に向けたので、座って腕の中におさまった。
「んふっ」
と笑う吐息が、俺の耳にかかる。
背中から、ゾワゾワとする何かがせり上がってきて、ブルっと思わず震えた。
「耳、弱い?」
そうタットさんに耳元で囁かれ
「ひあっ!?」
と、思わず叫んでしまった。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
ストック切れました……
不定期になりますが、これからもよろしくお願いします。
完結は、必ずさせます。
1
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
年下幼馴染の家庭教師をしていたら、堕とされてしまいました
中七七三
BL
矢上鋭一が引っ越してきたのは七歳のときだった。
その町で出会った、晶は一見、美女と見間違えるほどのキレイな顔の持ち主。
晶に惹かれていく鋭一。鋭一の告白に晶は言葉を濁す。
やがて、鋭一の家庭教師となる晶。
強引に迫る鋭一に晶は……
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
夜空に舞う星々のノクターン
もちっぱち
BL
星座と響き合う調べ、
野球場に鳴り響く鼓動。
高校生活が織りなす、
フルート奏者と
野球部キャプテンの出会い。
音楽の旋律と野球の熱情が
交差する中で、
彼らの心に芽生える友情とは?
感動と切なさが交錯する、
新たな青春の物語が始まる。
表紙イラスト
炭酸水様
@tansansui_7
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
【完結】僕らの配信は――
ほわとじゅら
BL
大手ゲーム配信者(31)x若手ゲーム配信者(21) -
ゲーム配信を行う冬珈琲チャンネルの浅沂時生(あさぎときお)は、プロゲーミングチーム・キングスで準備生として活動していたが、2年目を迎えた今、ストリーマー部門で活動の幅を広げようとしていた。夢は登録者数90万以上の盤(ばん)とのコラボ。
一方、女優の妻を持つ勝ち組のゲーム配信者と呼ばれるまでになった盤こと来田誉史(こだよしふみ)は、大学時代からの友人に衝撃的な「ある告白」を打ち明ける。
配信者同士の一回り近くある年の差スローラブ。
やがて互いに出会い、ゆっくりと、ゆっくりと落ちていく物語。
※#は、本ストーリーの両者2視点です。 / ★は、リアルな配信アーカイブのエピソードです。
※R15性表現入ります。本作は完全フィクションのオリジナル作品です。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる