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20 冒険者は、酒望む。
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「いらっしゃい」
そう言って迎えてくれたのは、タットさんの友だちのオーナーさんだった。そうタットさんが教えてくれた。
バーと言われたので、俺の拙い想像力を駆使して黒い制服姿のバーテンダーを思い描いていたんだが、オーナーさんはデニムに白シャツ、濃い緑のエプロンを身につけ、なんともラフな格好をしていた。胸元にはプラのネームプレートがあり、「イシヤマ」とカタカナで書かれてた。
「イシヤマさん」
俺が呟くと、イシヤマさんは営業スマイル満点でこちらを見た。
「はい、オーナーのイシヤマです。お見知り置き願いますね。席のご予約承ってますので、こちらにどうぞ」
スマートな案内だったけど、少し機械的だなぁとカフェアルバイトの俺が思ってみたり。案内された席は向かい合うタイプの二人がけのテーブルだった。椅子の下には荷物置きの箱が置かれていたので、そこにしまう。キョロキョロと店内を見渡すと、全体的に薄暗く、コンクリ打ちっぱなしの内装で、所々にオシャレな絵が飾られてる。バーってこう言う雰囲気なのだろうか?
「キョロキョロしてるゆん君可愛い。初めてだよね?お酒を飲むお店は」
「はい。初めて入りました。バーってみんなこんな感じなんですか?」
「どうだろ?ここはイシヤマの好みが反映されてるから割とシンプルだと思う」
「そうだね、俺の好きなモノしか置かないってコンセプトだから」
スっとメニューが置かれ、会話に入って来たのはイシヤマさん。「好きなモノを置く」コンセプトがイロトリみたいで少し好ましく思った。
「食事もお酒も自信もって提供するよ。どうせこいつの奢りでしょ?気になったものガンガン頼んでね。今日のオススメは地元牧場から仕入れたソーセージの盛り合わせ。俺のお気に入りの仕入先だから安心して頼んでいいよ」
「地元牧場ってあの有名な所のですか?」
「お?知ってる?そうそこ。ここからだとちょっと遠いから直接行くのは大変だけど、美味しいよね。俺大好き」
「俺も好きです」
思わずイシヤマさんの手をギュッと握り、熱視線を送ってしまう。そう、イシヤマさんが言った牧場は、県内では超有名な牧場で、特に豚肉に力を入れている。加工肉も人気で、そこのソーセージやハムも絶品。ただ、言われた通り、ここからだと離れてるし、交通の便も良くない。車があれば、そこまで不便ではないのかもしれないが、あいにくペーパードライバーの俺には無縁の話だ。たまに近所のスーパーにも商品が卸される事もあるのだが、数が限られており、直ぐに売り切れてしまう。なので、好きなのだが、なかなか俺の口には入らない逸品なのだ。
「うわぁ~告白されちゃった。俺ノンケだけどちょっとクルね。どう?年上のバーテンダー。付き合ってみる?」
ギュッと手を握り返されて気づいた。コレあれだ。まんま告白だ。そっと手を外し、チラッとタットさんを見ると頬をプクンと膨らませてる。あ、なにこの人可愛い。
「告白っぽくなってしまいましたが、アレはソーセージに対する愛の告白なのでイシヤマさんに対してではないです。タットさん、俺ソーセージの盛り合わせ食べたいです」
「知ってる……!知ってたけど腑に落ちない!ずるい俺もゆん君から熱視線送られながら告白されたい!!あとジャンバラヤとシーザーサラダ!俺のオススメ!飲み物どれにする!?」
感情をダダ漏れさせながらも、オススメのメニューをしっかり主張してくるのも、タットさんらしい。そう言えば、初めてイロトリに来た時もこんな感じだったなぁ。
ほんの1ヶ月前の話なのに、懐かしく思ってしまう。
「タットさんのオススメメニューも食べてみたいので、それも頼みたいです。あと飲み物は完全に初めてなので、一緒に選んでください」
飲み物のメニューをタットさんと一緒に見れるように角度を変え、少しテーブルから乗り上げ身体を寄せると、タットさんは少し満足気な顔してた。……分かりやすい。「いーよー」なんてご機嫌に応えられると、俺も少し嬉しくなる。飲み物を決めるのに、時間がかかると踏んだのか、イシヤマさんは伝票に何か書き込み、
「とりあえず飲み物から聞こうと思ったんだけど、食事だけ先に貰っとくよ。格式ばった決まり事とか、ここには無いから。好きに頼みなね。あぁ、でもお酒は初めてなんだっけ?きちんと自分の身体と相談して飲むんだよ。古川、あまりキツいのは飲ませんなよ?」
と、カウンターの方に戻っていった。最初は機械的とか思ってしまったけど、話をしてみたら、面倒見の良いお兄さんだった。
「もう言われなくても分かってるのに……度数が低いのはここらへんかなー?普通にビールでもいいとは思うんだけどね」
「苦いのはちょっと……大人の人って感じで憧れはありますけどね」
「あは。苦いって言うと思った」
「タットさんはビールですか?」
「とりあえずね!あ、ビアカクテルもあるよ。それだと苦味はほとんど感じないから、美味しく飲めるんじゃないかな?定番だとシャンディガフかな?ジンジャーエールで割ってるよ。あと憧れがあるなら苦味が残るビター・オレンジ?オレンジジュースで割るやつね」
つらつらと説明込みで進めてくれたので、俺はとりあえずシャンディガフなるものを頼むことにした。
「ジンジャーエール多めでお願いします」
飲み物の注文を受けたのは、別の女性スタッフさんだった。タットさんの注文に、にこやかに応えていた。
全体的に、良い雰囲気の店だなと思った。
そう言って迎えてくれたのは、タットさんの友だちのオーナーさんだった。そうタットさんが教えてくれた。
バーと言われたので、俺の拙い想像力を駆使して黒い制服姿のバーテンダーを思い描いていたんだが、オーナーさんはデニムに白シャツ、濃い緑のエプロンを身につけ、なんともラフな格好をしていた。胸元にはプラのネームプレートがあり、「イシヤマ」とカタカナで書かれてた。
「イシヤマさん」
俺が呟くと、イシヤマさんは営業スマイル満点でこちらを見た。
「はい、オーナーのイシヤマです。お見知り置き願いますね。席のご予約承ってますので、こちらにどうぞ」
スマートな案内だったけど、少し機械的だなぁとカフェアルバイトの俺が思ってみたり。案内された席は向かい合うタイプの二人がけのテーブルだった。椅子の下には荷物置きの箱が置かれていたので、そこにしまう。キョロキョロと店内を見渡すと、全体的に薄暗く、コンクリ打ちっぱなしの内装で、所々にオシャレな絵が飾られてる。バーってこう言う雰囲気なのだろうか?
「キョロキョロしてるゆん君可愛い。初めてだよね?お酒を飲むお店は」
「はい。初めて入りました。バーってみんなこんな感じなんですか?」
「どうだろ?ここはイシヤマの好みが反映されてるから割とシンプルだと思う」
「そうだね、俺の好きなモノしか置かないってコンセプトだから」
スっとメニューが置かれ、会話に入って来たのはイシヤマさん。「好きなモノを置く」コンセプトがイロトリみたいで少し好ましく思った。
「食事もお酒も自信もって提供するよ。どうせこいつの奢りでしょ?気になったものガンガン頼んでね。今日のオススメは地元牧場から仕入れたソーセージの盛り合わせ。俺のお気に入りの仕入先だから安心して頼んでいいよ」
「地元牧場ってあの有名な所のですか?」
「お?知ってる?そうそこ。ここからだとちょっと遠いから直接行くのは大変だけど、美味しいよね。俺大好き」
「俺も好きです」
思わずイシヤマさんの手をギュッと握り、熱視線を送ってしまう。そう、イシヤマさんが言った牧場は、県内では超有名な牧場で、特に豚肉に力を入れている。加工肉も人気で、そこのソーセージやハムも絶品。ただ、言われた通り、ここからだと離れてるし、交通の便も良くない。車があれば、そこまで不便ではないのかもしれないが、あいにくペーパードライバーの俺には無縁の話だ。たまに近所のスーパーにも商品が卸される事もあるのだが、数が限られており、直ぐに売り切れてしまう。なので、好きなのだが、なかなか俺の口には入らない逸品なのだ。
「うわぁ~告白されちゃった。俺ノンケだけどちょっとクルね。どう?年上のバーテンダー。付き合ってみる?」
ギュッと手を握り返されて気づいた。コレあれだ。まんま告白だ。そっと手を外し、チラッとタットさんを見ると頬をプクンと膨らませてる。あ、なにこの人可愛い。
「告白っぽくなってしまいましたが、アレはソーセージに対する愛の告白なのでイシヤマさんに対してではないです。タットさん、俺ソーセージの盛り合わせ食べたいです」
「知ってる……!知ってたけど腑に落ちない!ずるい俺もゆん君から熱視線送られながら告白されたい!!あとジャンバラヤとシーザーサラダ!俺のオススメ!飲み物どれにする!?」
感情をダダ漏れさせながらも、オススメのメニューをしっかり主張してくるのも、タットさんらしい。そう言えば、初めてイロトリに来た時もこんな感じだったなぁ。
ほんの1ヶ月前の話なのに、懐かしく思ってしまう。
「タットさんのオススメメニューも食べてみたいので、それも頼みたいです。あと飲み物は完全に初めてなので、一緒に選んでください」
飲み物のメニューをタットさんと一緒に見れるように角度を変え、少しテーブルから乗り上げ身体を寄せると、タットさんは少し満足気な顔してた。……分かりやすい。「いーよー」なんてご機嫌に応えられると、俺も少し嬉しくなる。飲み物を決めるのに、時間がかかると踏んだのか、イシヤマさんは伝票に何か書き込み、
「とりあえず飲み物から聞こうと思ったんだけど、食事だけ先に貰っとくよ。格式ばった決まり事とか、ここには無いから。好きに頼みなね。あぁ、でもお酒は初めてなんだっけ?きちんと自分の身体と相談して飲むんだよ。古川、あまりキツいのは飲ませんなよ?」
と、カウンターの方に戻っていった。最初は機械的とか思ってしまったけど、話をしてみたら、面倒見の良いお兄さんだった。
「もう言われなくても分かってるのに……度数が低いのはここらへんかなー?普通にビールでもいいとは思うんだけどね」
「苦いのはちょっと……大人の人って感じで憧れはありますけどね」
「あは。苦いって言うと思った」
「タットさんはビールですか?」
「とりあえずね!あ、ビアカクテルもあるよ。それだと苦味はほとんど感じないから、美味しく飲めるんじゃないかな?定番だとシャンディガフかな?ジンジャーエールで割ってるよ。あと憧れがあるなら苦味が残るビター・オレンジ?オレンジジュースで割るやつね」
つらつらと説明込みで進めてくれたので、俺はとりあえずシャンディガフなるものを頼むことにした。
「ジンジャーエール多めでお願いします」
飲み物の注文を受けたのは、別の女性スタッフさんだった。タットさんの注文に、にこやかに応えていた。
全体的に、良い雰囲気の店だなと思った。
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