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本編

ep20_2

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 ぎいいいい。って、お城の正門が開かれる。
 もう何度もこの道通ってるからね。街へ降りるためのなっがい坂道。
 だけど今日の景色は全然ちがう。どこにこんなに人がいるのってくらい、道を挟むようにして、人、人、人――!

「わあああ! 愛し子さまっ!」
「ノウト閣下! おめでとうございますー!」

 トランペットの音色といっしょに届く、みんなの声。
 すごっ、めっちゃ歓迎されてるじゃんっ!

「うぉ……」

 あはは! ギリアロってばかんっぺき表情が引きつってる。
 目立つこと好きじゃないんだろうなあ。今もめちゃくちゃがんばってここに立ってくれてるんだね?

 あたしたちの前には先導車が。それに取り付けてある装置についていくように、ギリアロの愛機の自動操縦はセットされてる。だから操縦とかはぜんっぜん気にしなくていいんだけど……。

「くそ、やっぱ自分で操縦するべきだった……」

 あはは! なにしたらいいかわかんないって顔してるね!
 ギリアロってば、あたしのこと抱きしめたまま固まっちゃってる。
 いますぐ帰りたいって顔してるけど、そういうことは言葉にしないようにしてくれてるっぽい。ふふ、普段すぐ文句言うのにね。今日はあたしに気をつかってくれてるっていうか……えへへ、やさしーじゃん?

「ギリアロ、ほら。笑顔笑顔」
「お前さんにまかせた……」
「ふふ。じゃあせめて、手を振ろうよ?」
「く……」

 あたしはめちゃめちゃに手を振ると、みんなわーってわきたってくれる。
 男のひとも、そして女のひとも、ちっちゃな子までいっぱい!
 晶精もすっごいふわふわ浮いてるし、今日は雲ひとつない青空だから、いつもよりさらに元気みたい。
 お祝いするためにペンライトみたいな装置とか、音を出る装置持ってるひとも大勢いて、すっごく華やかだしにぎやか。
 なかには建物の屋根に登ってみてるひととかもいっぱいいて、花びらがいっぱい空から降ってくるの!
 まだお花がたくさん咲く季節じゃないっぽいのに、すごい!

「わああ……めちゃくちゃうれしー……」

 お祝いされるのわくわくしてたけど、ここまでだとは思わなかったよ。
 ふつーにはしゃいでいるだけじゃなくて、なんか涙出そうになって。いやいやメイクがヤバいからダメだよってめっちゃ耐える。
 顔をパタパタ扇いでいたら、ギリアロってば、あたしの様子に気がついたっぽい。ちょっと焦ったように眉を寄せて、周囲をきょろきょろ確認する。
 で、覚悟きめたように口閉じて。あたしの額にこつんって、自分のおでこぶつけてきてさ。

「あーあー……、泣いたり笑ったり、忙しいな?」
「う……」
「でも今は、笑っとくんだろ?」

 なんて。
 ほっぺにちゅって……ちゅって……!?
 ギリアロ!? いきなりそれは大胆では……???
 わーっ! ってめっちゃくちゃみんなわきたったけど!?

 えっ、ギリアロ自身も真っ赤だし。めちゃくちゃ気恥ずかしそうに目を逸らしたけどさ。
 なに? あたしの気を紛らわそうって頑張ってくれたの、今?
 人前でキスとかぜったいしないタイプだよね!? なになに!? なんなの!? 結婚式特権!?

 ひょああああ……!!
 あたしもあたしで真っ赤になっちゃって、涙なんか一瞬でどっかいった!
 普段もうちょっとディープなキスもするけど、今日はね……特別じゃん?
 びっくりするくらいきゅんきゅんして、あたしは心臓もちません……。
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