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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
2−11
しおりを挟む――で、帰り道。
ギルドホールの裏口のドアを開けて、周囲を見て……。
「……」
……はぁ。
なんだか、落ちこんじゃう自分にげんなりするっていうか。
ラルフが、いない。
待っててはくれなかった。
ううん……もしかしたらミリアムから逃げ回ってるとかかもしれないし。
……でも、わたしだって、ちゃんと言い返してあげられなかった。
ミリアムにはいろいろ言いたいことはあるけど、仕事中だったし。…………ううん、それもいいわけ。
大丈夫だって思うのに、やっぱりどうしても不安で。なにも言えなくなっちゃう。
ラルフはわたしの彼氏だから、とらないで――とか、口にできたらどんなにいいだろう。
自分の自信のなさに打ちのめされるよね……。
おばかだなあ、リリーってば……。
はぁ。
ラルフ、家には帰ってるかな。
話、したいな。
もやもやばっかりが溜まって、落ち着かない。
もう。
全部全部、ラルフのせいなんだからねっ。
厄介な子に好かれて……ううっ、紅晶姫……紅晶姫かぁ……。
うな垂れながら、とぼとぼ帰りの道を歩く。
人通りは少なくないからね、怖くはないんだけど――と、突然、後ろから腕を引かれて、心臓が嫌な音を立てた。
「!?」
あまりにたくましい手。
やだっ、突然っ!
怖い……!
けど、その誰かはわたしを問答無用で細い路地に引っ張りこんで。
やだやめてっ!? えっ!? まって!!
ばかばかばか! やめなさいって!!
って、暴れようとして、気がつく。
「しーっ!」
耳元で、静かに呼びかけられて。
はっとして、わたしはその大きな影を見てみると……。
「!」
「しずかに」
ラルフ!?
わわわ、この腕の感じ、たしかに。
なーんだ。はぁー……よかった。びっくりした……。
心臓に悪いよ、もう……。
「このまま、見つからないように帰るから。手、はなすなよ?」
見つからずにって、彼女にってことだよね。
わ……ラルフも苦労してたんだ。
さっきまで不安と、あと……嫉妬とか。で、むかむかしてたけど。ちょっと安心する。
逃げ回っててくれたってことなんだよね?
うーっ……。
ラルフ。ラルフーっ……。
いろいろ言いたいことがあるのに、でも、伝えることができなくて、ぎゅうって彼の腕を掴む。ラルフはあまってる方の手で、わたしの頭をぽんぽんって撫でてくれて――。
あーもう、よかったよおおおお。
あんな失礼な子にとられるんじゃないかとか……大丈夫って信じてても、やっぱり不安で。なにも言い返せなくて、申し訳なさもあって。胸の奥でぐるぐる嫌な気持ちだけが膨らんでいって、どうにかしたかった。
ラルフってば、それもわかってくれてたんだよね。
ぐりぐりー、ぐりぐりーって、ちょっと痛いくらいに頭を撫でてくれてさ。でも、彼女に見つからないようにって細心の注意を払いながら、わたしたちは帰路についたの。
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