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第7話・私は特別留学生です

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ーーー「う、うそだ……デラタメだ……そんなの、そんなの、だって、」

呆然として、嘘だ嘘だと呟きルゲインは頭を振った。もしかして目の前の婚約者の言ったことが本当かもしれない、という考えを振り払うためだ。

そんなルゲインを見て、リリーナは必死に慰めた。

「大丈夫よ、ルゲイン君!そんな女の言ったこと、信じないで!それに、」
「そ、そうだ。そうだ。そうだよな、リリーナ。君は本当に優しいな。ありがとう」

パールは、リリーナが後になんと続けようとしたか、唇の動きで分かった。
ーーー公爵令息なことに、変わりはないんだし。

もしかして、あんなに熱っぽく浮かされて愛し合っていたのに、方や身分目的なのでは、とパールは考える。リリーナの爵位がなんなのかは知らないが、頭も性格もあまりよろしくなさそうだ、と他人事のように思った。実際他人事であるが。

「あの……先程から、お見苦しいところをお見せしましたわ。私の名はミラベル・ファースト。これでも社交界に顔を出しているつもりでしたが、あなたの事を存じ上げないのです。大変申し訳ないことですが、御名前をお伺いしても…?」

おずおずとそう言ってきた様子の令嬢ーーーミラベルに、パールは勿論と微笑み返した。気になっていたのだろう、会場中の貴族たちはピタリと停止し、耳をダンボの如く大きくして聞き耳をたて、いちゃいちゃしだしていたルゲインとリリーナも口をつぐんだ。

特にルゲインなんかは、大したことのない領地を収めている、王家の血筋も薄いような家だったら自分直々に処罰してやると意気込んでいた。半ば八つ当たりである。とても美しい容姿のパールにいい思いを抱いていなかったリリーナもルゲインの意見に賛成し、称えるように腕に抱きついた。

それを見てまだ事を理解しないのかとばかりにミラベルは眉を顰めたが、それよりも目の前の少女の名前が気になっていたので、特に咎めることもなくパールと視線を合わせた。




ーーーさあでは聞こうじゃないか、と静寂に包まれた会場で聞き耳を全員立てたとき、信じ難い言葉が聞こえてくる。




「ご挨拶が遅れてしまい、ごめんなさい」



竪琴の似合いそうな、透き通った美しい声だった。









  














「私、隣国から特別留学生として参りました、パール・カクルックと申します。」


以後、お見知りおきを。
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