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第6話・宰相になるには

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「なっ、ど、どういうことだ!?出鱈目をいうのもやめろ!僕が宰相を継ぐことは、もう決まっている!」
「ですからその宰相を継ぐ条件が、私との婚約だとご説明しています。貴方の仕事を補える頭脳があり、貴方の家柄と釣り合う、いざという揉め事の時、最もたる権力の象徴である王家へのコネがある、そんな都合のいい存在が私。逆に言えば、私と婚約するから貴方は宰相になれた。」

ふう、と少女は呆れたように一つ溜息を吐くと、キャンキャンと子犬のように喚き続けるルゲインに、冷たい視線を送った。

「というか、私達は初対面ではありません。まあ、お忘れになっているようですが。」
「!?お前のようの冷酷な女と関わりなんぞない!!この大嘘つきめ!」

パールはそっと令嬢を気遣わしげに見た。なんともまあ、こんな男の婚約者を今までよくやってきたものだ。ルゲインと同じくキーキーと甲高い声で騒ぎ立てるリリーナを見て、それからご令嬢を見て、比べるまでもないと思ったがこの男には違うらしい。圧倒的に少女の方が素敵なレディーだと思うのだが、他国の殿方のご趣味は変わっている。

「はあ……いいですか?そもそも貴方のお父上が貴方を宰相にしようと思ったのは、体のいい表側の傀儡が欲しかった故です。宰相とは国王に最も近しい職であり、国務を総理する役目ですわ。これがどれだけ大変なことかお分かり?貴方が普段馬鹿にする平民の生活から税のことまで、全てあなたに責任が回るのよ。この国は宰相が複数人いる。つまり、他の宰相や国務に携わる人達がとんだ粗相をしたり、経済体制に不満を抱かれ襲撃されたりした時のための、表側の宰相が貴方です。ホラ、ここまで言えば分かるでしょう?いくら形だけ宰相になろうと、貴方は国に操られ国に犠牲にされる。そのために、貴方をお馬鹿にお馬鹿に甘やかして育て、そして私をあてがった。」

ここで一息、とばかりに話を切ると、話を理解したのかしてないのか、真っ青になってわなわなと震えているルゲインを気にも止めずに、令嬢は能面のように表情を削ぎ落として話を再開した。

「本当、反吐が出るわ。流石に形だけの宰相でも『いないよりはマシ』な存在になってほしいからと、私は利用された。宰相の仕事を手伝えて、王家へのコネがあって……そして、あなたに愛がない。こんなに条件に見合った女はいないものね。なんせ、愛していないのならば貴方に何かあったって気にもしないから。傷つかないから。それでも元妻という肩書があるから、宰相の仕事を押し付けられるから。

ーーーそれを分かって、私は国の犠牲になる覚悟で貴方と婚約した。情が湧いては困ると、極力会わないようにした。その結果が、この婚約破棄よ!ええ、ええ。謹んでお受けするわ。受理されるかは別として。お飾り宰相としての利用価値がなくなった上、関係ない公爵令嬢を侮辱した貴方の対応は、どうなるのか知った事ではないけれど」






ーーーそういえば、とパールは考えた。
自分は一応、違う国からの特別留学生。だが、この人達の態度を見るに私が特別留学生だと知らない。
一国の代表として来ている私を侮辱し、性悪だの最低だのと………。あれ?


ルゲイン、詰んでない?

最悪国際問題に発展すると思うのだが。





パールは早々に両親に顔を見せることになりそうだと瞳を伏せた。
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