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第3話・婚約破棄って、貴方誰ですか?
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ーーー「貴様とは、婚約破棄させてもらう!!」
高らかに叫んだ金髪の青年を見て、パールはこっくりと優雅に首を傾げた。
「婚約破棄って、貴方誰ですか?」
◇◇◇◇◇◇
あの後、両親の熱烈な行ってらっしゃいと感激の抱擁を受け、ご令嬢達から涙ぐんで送られ、さあ出発だと愛する我が国を発ったパールだったが、只今大変不可解な状態に見舞われていた。
何故か見知らぬ青年に婚約破棄を宣言され、しかもその傍らにいる少女にドヤ顔をされたのである。パールの心情は疑問でいっぱいになったし、そもそも特別留学生、つまり隣国からの大事なお客様である自分にこのような幼稚な悪戯を働くなど、もしかしてこの国は程度が低いのだろうかと眉を顰めるのも無理はなかった。
パールのどちら様ですかという発言に、会場が一気に静かになり目の前の二人は固まりついたが、どうやら解凍されたらしく顔を真っ赤にして睨みつけてきた。
「そうか、そうやってとぼけて乗り切るつもりか……!このパーティーに出席している、美しい公爵令嬢とは貴様のことだろう!?」
「はあ、確かに私は公爵令嬢ですが……」
その条件に当てはまる者なら、ごまんといるのではないか?とパールは目の前の人物の頭の悪そうな発言に首を撚る。
そも、このパーティーは特別留学生である自分のために開かれたパーティーなのに、何故主役である私が侮辱されなければいけないのだ?
パールはそう考えて、はあとため息をついた。
もしや、これがこの国なりの歓迎の仕方なのだろうかとぼんやり考えて、なにやら喚いている目の前の男を視界に捉える。
「ほら見ろ、お前だろう!?お前が図々しくも僕の婚約者であり続けるせいで、愛しのリリーナと僕は結ばれない!何度父様に抗議しても、お前が拒否するせいで、婚約が破棄されないんだ!」
大声でそう喚き立てると、青年は強く睨みつけてきた。その隣で、明るい茶髪の少女がこちらにしてやったりという顔を向けてくる。
婚約だなんて、一切した覚えはないし、そもそも違う国の違う身分の者が婚約する物なのだろうか?仮にも国の代表として来た私にここまで言うとは、相当の身分の者なのだろうか…?
ぐるぐるとパールは考えて、猿のように真っ赤になって憤る男に目を細めた。
「そもそも、父様が名前を明かさないからいけないんだ!『今教えたら危害を加えるだろう』だって!?ああ、そうするさ!愛するリリーナのためだからな!だが、それも無駄だったようだ!して、お前はどこの家のものだ?」
「何故、名乗られてもいないのに名乗らなくては?不躾ですね」
「…………なんだと?」
「ルゲイン君っ、怒らないであげて……どうせ、もう貰い手もいなくなるんだから」
ぴくり、とその言葉にパールの指先が反応する。それを見て笑みを深める茶髪の少女ーーー確か、リリーナという名の少女に、パールは少しの苛立ちを感じた。
「ああ、君は優しいな。おい、名乗りもしない無礼者!リリーナに嫉妬するんじゃないぞ。この国の宰相の息子である僕とその妻のリリーナに、公爵令嬢如きが楯突こうだなんて思わないほうがいい。」
「きゃっ、素敵っ!ルゲイン君……!」
ーーー(なんなのかしら?この茶番……)
まだ続きそうなこの茶番問答に、パールはひっそりとため息を吐いたのであった。
高らかに叫んだ金髪の青年を見て、パールはこっくりと優雅に首を傾げた。
「婚約破棄って、貴方誰ですか?」
◇◇◇◇◇◇
あの後、両親の熱烈な行ってらっしゃいと感激の抱擁を受け、ご令嬢達から涙ぐんで送られ、さあ出発だと愛する我が国を発ったパールだったが、只今大変不可解な状態に見舞われていた。
何故か見知らぬ青年に婚約破棄を宣言され、しかもその傍らにいる少女にドヤ顔をされたのである。パールの心情は疑問でいっぱいになったし、そもそも特別留学生、つまり隣国からの大事なお客様である自分にこのような幼稚な悪戯を働くなど、もしかしてこの国は程度が低いのだろうかと眉を顰めるのも無理はなかった。
パールのどちら様ですかという発言に、会場が一気に静かになり目の前の二人は固まりついたが、どうやら解凍されたらしく顔を真っ赤にして睨みつけてきた。
「そうか、そうやってとぼけて乗り切るつもりか……!このパーティーに出席している、美しい公爵令嬢とは貴様のことだろう!?」
「はあ、確かに私は公爵令嬢ですが……」
その条件に当てはまる者なら、ごまんといるのではないか?とパールは目の前の人物の頭の悪そうな発言に首を撚る。
そも、このパーティーは特別留学生である自分のために開かれたパーティーなのに、何故主役である私が侮辱されなければいけないのだ?
パールはそう考えて、はあとため息をついた。
もしや、これがこの国なりの歓迎の仕方なのだろうかとぼんやり考えて、なにやら喚いている目の前の男を視界に捉える。
「ほら見ろ、お前だろう!?お前が図々しくも僕の婚約者であり続けるせいで、愛しのリリーナと僕は結ばれない!何度父様に抗議しても、お前が拒否するせいで、婚約が破棄されないんだ!」
大声でそう喚き立てると、青年は強く睨みつけてきた。その隣で、明るい茶髪の少女がこちらにしてやったりという顔を向けてくる。
婚約だなんて、一切した覚えはないし、そもそも違う国の違う身分の者が婚約する物なのだろうか?仮にも国の代表として来た私にここまで言うとは、相当の身分の者なのだろうか…?
ぐるぐるとパールは考えて、猿のように真っ赤になって憤る男に目を細めた。
「そもそも、父様が名前を明かさないからいけないんだ!『今教えたら危害を加えるだろう』だって!?ああ、そうするさ!愛するリリーナのためだからな!だが、それも無駄だったようだ!して、お前はどこの家のものだ?」
「何故、名乗られてもいないのに名乗らなくては?不躾ですね」
「…………なんだと?」
「ルゲイン君っ、怒らないであげて……どうせ、もう貰い手もいなくなるんだから」
ぴくり、とその言葉にパールの指先が反応する。それを見て笑みを深める茶髪の少女ーーー確か、リリーナという名の少女に、パールは少しの苛立ちを感じた。
「ああ、君は優しいな。おい、名乗りもしない無礼者!リリーナに嫉妬するんじゃないぞ。この国の宰相の息子である僕とその妻のリリーナに、公爵令嬢如きが楯突こうだなんて思わないほうがいい。」
「きゃっ、素敵っ!ルゲイン君……!」
ーーー(なんなのかしら?この茶番……)
まだ続きそうなこの茶番問答に、パールはひっそりとため息を吐いたのであった。
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