46 / 50
レーダー基地
しおりを挟む
*
レーダー基地に向かう前に、二人は必要な工作をしてきていた。
中条今日子が、和真と佑一が見守る中で電話をする。スピーカーになってるスマホから、コール音が響く。やがて、電話の相手が出た。
「もしもし、パパ」
「なんだい今日子、どうかしたのかい? 仕事の方はどうだ、順調にやってるかい? 所轄の連中にイジメられてないかい? もしイジメられてたら言いなさい。すぐに飛ばしてやるから」
太い声を無理に可愛くしたような声色で、電話の向こうの声が一気に話した。相手は今日子の父親、中条官房長である。今日子は父親に、返事をした。
「所轄の人たちはとても親切でいい人たちよ。ねえ、パパ。それより聞きたいことがあるの」
「なんだい、何でも聞きなさい」
「ねえ……パパは娘に嘘言ったりする?」
今日子は、甘いものをねだるような声で問うた。
「何を言ってるんだ。パパは今日子に嘘を言ったりしないよ。そんな事したことないだろ?」
「そうね。いつもパパは、良いパパだったわ。…じゃあね、訊きたいことがあるの」
「なんだい、言ってごらん」
今日子は息を吸うと、一息で言った。
「中国にミサイルを撃ち込む予定はある?」
「は?」
電話の向こうで、驚いた気配が判る。
「なんだい? 何を言い出したのかな、今日子は。そんな事、日本がするわけないだろう。変な奴が、そんな事を言いふらしてるのかい? とんでもない話だよ」
「――それでは北京に中距離弾道ミサイルを撃つ計画は、官房長は了承してないという事でよろしいんですね?」
脇から佑一が、そう割り込んだ。声を聴いて驚いたのは、官房長である。
「誰だ、君は? きょ、今日子の彼氏なのか? そういう関係なのか?」
「そういう関係じゃありません」
佑一はうんざりした表情で言った。
「公安の国枝佑一警部補です。実際にそういう計画があって、もう既に動いています。しかも時間がありません」
佑一の言葉を聞いて、官房長は少し黙り込んだ。が、今度は深みのある声が、電話口から響いてきた。
「――詳しい話を聞こうじゃないか」
官房長に話をして今日子に必用な指示を出した佑一は、次は別のところに電話をかけた。
「おや、国枝君、どうかしたのかい?」
「矢崎さん、何処にいますか。いや、もしかしてですが…王日駐屯地に張り付いたりしてませんでした?」
「君、どっかで見てたのかい?」
電話口の矢崎は、軽口を叩いた。
「矢崎さん、今朝がた宗方とその一派が出ていきませんでしたか?」
「出て行ったねえ。移動車両だけだったんで、なんだろうと思ったけど」
「何人くらいか、大雑把でいいんで判りませんか?」
佑一の問いに、矢崎が答えた。
「宗方、それに黒岩って奴も見えたな。その二人を含めて10人」
「10人……」
「アリが言ってた、響の会は、そのくらいの数だそうだよ」
「そうですか、ありがとうございます」
佑一が礼を言って電話を切ろうとすると、その寸前で矢崎が言った。
「国枝君」
「はい」
「…命は大事にした方がいいよ」
「まったく、そう思います」
佑一はそう言うと、電話を切った。
「本当に二人だけで行くんですか?」
バイクに乗る和真と佑一に、今日子が声をかける。心配そうな顔の今日子に、和真は答えた。
「ああ。もう人数を用意して突入する時間がない」
「けど、相手は自衛隊員ですよ? 危ないんじゃないですか?」
「かもな」
「かもじゃないでしょ! せめて仁さんたちに応援を頼んだ方が…」
「仁さんたちには別の件を頼んである。それに、お前の動きも重要だ。頼んだぞ、中条」
不服そうに上目遣いで見ていた今日子だが、思い切ったように敬礼をして返事をした。
「はい! 了解しました!」
「よし、じゃあ行くか。いいな、佑一」
「ああ」
佑一が、和真の腰を掴む。発進しようとする二人に、今日子が言った。
「二人とも……気をつけて下さいね」
「おう」
それだけ言うと和真はバイザーを降ろし、イグニッション・キーを廻した。
峠を走ること一時間。佑一は和真の腰に捕まったまま、腕時計を見た。
「10:12。もう時間がないぞ」
「いや、もうすぐ着くはずだ」
和真の言葉通り、レーダー基地建設予定地が見えてきた。
森の中に、鉄のゲートが現れる。和真はバイクを傍の茂みに止めると、バイクを降りた。
「まだカメラも赤外線装置もついてないな」
佑一が辺りを確認して言った。二人はゲートを乗り越えて侵入する。
「どれがミサイルなんだ?」
「恐らく、あの装甲車だ」
中の敷地は広く、その奥に巨大な箱を積んだような装甲車が停車していた。
二人は陰に隠れて様子を伺う。
「中には二人か」
「左右同時に行こうぜ」
「判った」
二人は移動式発射車両の後方から接近する。車両の後尾に着いた後、和真が頷いた。
二人が飛び出す。和真は左、佑一は右に向かう。ドアは大きく、通常車両より高い位置にあった。和真は左のドアをいきなり開ける。
「な、なんだ!」
中に乗っていた隊員が声を上げた。が、和真は胸倉をつかむと、前足を腹に当てて巴投げの要領で車外に放り出す。地面に転がった隊員の背後に素早く回り込み、右手で左の襟首を掴み、左手で右の襟を掴んで引き締める。柔道の裸締めであった。
「む……」
暴れる気配を一瞬見せた隊員だが、すぐに落ち(・・)た。
一方、佑一は和真がドアを開けるのを待っていた。左のドアが開いて異変に気付いた隊員が、左の方を向いている。そこを狙って右のドアを開けると、隊員が驚いて振り返った。
佑一はその鼻っぱしらに肘打ちを入れた。
「ぐあ――」
呻く間もなく、佑一は隊員を後ろから引っ張ると同時に、車から飛び降りた。そのまま落下する隊員の後頭部を、膝で迎え撃つ。隊員が地面に落ちた時には、もう気を失っていた。
和真が廻り込んでくると、佑一にやられた隊員を見て言った。
「お前、結構乱暴だな。鼻折れてるんじゃないか?」
「オレなりに実戦を意識した結果なんだが」
佑一はそう言いながら、車に乗り込む。和真は眉を上げて呟いた。
「なるほど」
和真は横から、佑一が運転席の機器を調べるのを覗き込んだ。
「どうだ、止められそうか?」
佑一は『停止』をあるボタンを押すが、何の反応もない。
「いや…この発射台から操作はできなさそうだ。やはり基地内の制御室が、コントロールしてる場所らしい」
「この車ごと、移動させちまうのはどうだ?」
「駄目だ。移動させても目標に向かって発射する。発射位置が変わっても、軌道は自動修正されるだろう」
「なんだよ。じゃあやっぱり、基地に突入するしかないのか」
和真は少し離れている基地の方を見た。まだ足場が組まれていて、その足場を覆うように全体がブルーシートで覆われている。
その時、突如、移動発射台が揺れた。
「な、なんだ?」
降りてみると、後方部のポッドが持ち上がっていく。そしてほぼ垂直になったところで、さらに角度を少し変えた。
「まずい、目標位置に設定してる」
佑一は時計を見た。10:30である。
その時、車内から声が聞こえてきた。
「こちら司令部。発射台、応答せよ」
和真は佑一を見た。佑一が渋い顔をして、車に乗り込む。無線機の通話機を外した。
「はい。こちら発射台」
「発射台を目標に設定した。正常作動を確認されたし」
「正常に稼働しております」
「了解。命があるまで待機」
通話が切れる。佑一は息をついた。
「……バレなかったかな?」
和真の心配そうな声に、佑一は答えた。
「バレたかもな。隊特有の言い回しや、暗号を使っていた可能性もある。――いや、待てよ」
佑一は車を降りると、気を失っている隊員の服装を探り始めた。ベルトに無線機がついている。それを取ると、佑一は自分のベルトに取りつけた。
「特に連絡が入らないという事は、まだ警戒はされてないという事だ。基地に行こう」
二人は基地に向かって、移動した。
途中で、二人の隊員が立っているのが見える。二人は姿を隠した。
「あそこが入り口か。ある意味判りやすいが」
「しかし自動小銃を持ってる。迂闊には近づけないぞ」
「廻り込もう」
二人は建物に隠れて、ぐるりと回り込んで逆の陰に潜んだ。しかし、入り口までは10m以上ある。
「どうする?」
佑一の囁きに、和真は上を指さした。
入り口を守る隊員は、何か物音を聞いて横を見た。誰もいない。しかし、建物の角の向う側から、僅かだが何か物音がする。隊員はもう一人の隊員に頷くと、自動小銃を抱えたまま角に近づいた。
警戒しながら角を曲がる。何もない。が、次の瞬間、空中から降ってきた衝撃が、頭部を襲った。
「う――」
隊員は小さく呻いて倒れる。その異変に、もう一人の隊員が気づいた。
隊員は小銃を脇に構えながら、そっと角まで近づいてくる。角に張り付いて、気配を殺す。静かな様子に、隊員は小銃を構えて、角を出た。
と、その足元がすくわれる。先に降りていた和真が、足元に潜んでいて、その足を掴んだのだった。と同時に、佑一が空から降ってきて、上を向いた隊員の眉間に、肘打ちを喰らわせた。隊員は後頭部から地面に激突し、物も言わずに昏倒した。
「ふう……捕まりやすい足場でよかったぜ」
和真が身体を起こす。佑一は、隊員たちから自動小銃を外していた。
「持って行くのか?」
「いや、次に目覚めた時に、使われないようにしておくだけだ」
佑一はそう言うと、弾倉を外して傍の茂みに隠した。和真が後ろから呟いた。
「よかった、俺、拳銃苦手なんだよ」
「オレたちの目的は殺しじゃないからな」
佑一は振り向くと、そう軽く笑ってみせた。
レーダー基地に向かう前に、二人は必要な工作をしてきていた。
中条今日子が、和真と佑一が見守る中で電話をする。スピーカーになってるスマホから、コール音が響く。やがて、電話の相手が出た。
「もしもし、パパ」
「なんだい今日子、どうかしたのかい? 仕事の方はどうだ、順調にやってるかい? 所轄の連中にイジメられてないかい? もしイジメられてたら言いなさい。すぐに飛ばしてやるから」
太い声を無理に可愛くしたような声色で、電話の向こうの声が一気に話した。相手は今日子の父親、中条官房長である。今日子は父親に、返事をした。
「所轄の人たちはとても親切でいい人たちよ。ねえ、パパ。それより聞きたいことがあるの」
「なんだい、何でも聞きなさい」
「ねえ……パパは娘に嘘言ったりする?」
今日子は、甘いものをねだるような声で問うた。
「何を言ってるんだ。パパは今日子に嘘を言ったりしないよ。そんな事したことないだろ?」
「そうね。いつもパパは、良いパパだったわ。…じゃあね、訊きたいことがあるの」
「なんだい、言ってごらん」
今日子は息を吸うと、一息で言った。
「中国にミサイルを撃ち込む予定はある?」
「は?」
電話の向こうで、驚いた気配が判る。
「なんだい? 何を言い出したのかな、今日子は。そんな事、日本がするわけないだろう。変な奴が、そんな事を言いふらしてるのかい? とんでもない話だよ」
「――それでは北京に中距離弾道ミサイルを撃つ計画は、官房長は了承してないという事でよろしいんですね?」
脇から佑一が、そう割り込んだ。声を聴いて驚いたのは、官房長である。
「誰だ、君は? きょ、今日子の彼氏なのか? そういう関係なのか?」
「そういう関係じゃありません」
佑一はうんざりした表情で言った。
「公安の国枝佑一警部補です。実際にそういう計画があって、もう既に動いています。しかも時間がありません」
佑一の言葉を聞いて、官房長は少し黙り込んだ。が、今度は深みのある声が、電話口から響いてきた。
「――詳しい話を聞こうじゃないか」
官房長に話をして今日子に必用な指示を出した佑一は、次は別のところに電話をかけた。
「おや、国枝君、どうかしたのかい?」
「矢崎さん、何処にいますか。いや、もしかしてですが…王日駐屯地に張り付いたりしてませんでした?」
「君、どっかで見てたのかい?」
電話口の矢崎は、軽口を叩いた。
「矢崎さん、今朝がた宗方とその一派が出ていきませんでしたか?」
「出て行ったねえ。移動車両だけだったんで、なんだろうと思ったけど」
「何人くらいか、大雑把でいいんで判りませんか?」
佑一の問いに、矢崎が答えた。
「宗方、それに黒岩って奴も見えたな。その二人を含めて10人」
「10人……」
「アリが言ってた、響の会は、そのくらいの数だそうだよ」
「そうですか、ありがとうございます」
佑一が礼を言って電話を切ろうとすると、その寸前で矢崎が言った。
「国枝君」
「はい」
「…命は大事にした方がいいよ」
「まったく、そう思います」
佑一はそう言うと、電話を切った。
「本当に二人だけで行くんですか?」
バイクに乗る和真と佑一に、今日子が声をかける。心配そうな顔の今日子に、和真は答えた。
「ああ。もう人数を用意して突入する時間がない」
「けど、相手は自衛隊員ですよ? 危ないんじゃないですか?」
「かもな」
「かもじゃないでしょ! せめて仁さんたちに応援を頼んだ方が…」
「仁さんたちには別の件を頼んである。それに、お前の動きも重要だ。頼んだぞ、中条」
不服そうに上目遣いで見ていた今日子だが、思い切ったように敬礼をして返事をした。
「はい! 了解しました!」
「よし、じゃあ行くか。いいな、佑一」
「ああ」
佑一が、和真の腰を掴む。発進しようとする二人に、今日子が言った。
「二人とも……気をつけて下さいね」
「おう」
それだけ言うと和真はバイザーを降ろし、イグニッション・キーを廻した。
峠を走ること一時間。佑一は和真の腰に捕まったまま、腕時計を見た。
「10:12。もう時間がないぞ」
「いや、もうすぐ着くはずだ」
和真の言葉通り、レーダー基地建設予定地が見えてきた。
森の中に、鉄のゲートが現れる。和真はバイクを傍の茂みに止めると、バイクを降りた。
「まだカメラも赤外線装置もついてないな」
佑一が辺りを確認して言った。二人はゲートを乗り越えて侵入する。
「どれがミサイルなんだ?」
「恐らく、あの装甲車だ」
中の敷地は広く、その奥に巨大な箱を積んだような装甲車が停車していた。
二人は陰に隠れて様子を伺う。
「中には二人か」
「左右同時に行こうぜ」
「判った」
二人は移動式発射車両の後方から接近する。車両の後尾に着いた後、和真が頷いた。
二人が飛び出す。和真は左、佑一は右に向かう。ドアは大きく、通常車両より高い位置にあった。和真は左のドアをいきなり開ける。
「な、なんだ!」
中に乗っていた隊員が声を上げた。が、和真は胸倉をつかむと、前足を腹に当てて巴投げの要領で車外に放り出す。地面に転がった隊員の背後に素早く回り込み、右手で左の襟首を掴み、左手で右の襟を掴んで引き締める。柔道の裸締めであった。
「む……」
暴れる気配を一瞬見せた隊員だが、すぐに落ち(・・)た。
一方、佑一は和真がドアを開けるのを待っていた。左のドアが開いて異変に気付いた隊員が、左の方を向いている。そこを狙って右のドアを開けると、隊員が驚いて振り返った。
佑一はその鼻っぱしらに肘打ちを入れた。
「ぐあ――」
呻く間もなく、佑一は隊員を後ろから引っ張ると同時に、車から飛び降りた。そのまま落下する隊員の後頭部を、膝で迎え撃つ。隊員が地面に落ちた時には、もう気を失っていた。
和真が廻り込んでくると、佑一にやられた隊員を見て言った。
「お前、結構乱暴だな。鼻折れてるんじゃないか?」
「オレなりに実戦を意識した結果なんだが」
佑一はそう言いながら、車に乗り込む。和真は眉を上げて呟いた。
「なるほど」
和真は横から、佑一が運転席の機器を調べるのを覗き込んだ。
「どうだ、止められそうか?」
佑一は『停止』をあるボタンを押すが、何の反応もない。
「いや…この発射台から操作はできなさそうだ。やはり基地内の制御室が、コントロールしてる場所らしい」
「この車ごと、移動させちまうのはどうだ?」
「駄目だ。移動させても目標に向かって発射する。発射位置が変わっても、軌道は自動修正されるだろう」
「なんだよ。じゃあやっぱり、基地に突入するしかないのか」
和真は少し離れている基地の方を見た。まだ足場が組まれていて、その足場を覆うように全体がブルーシートで覆われている。
その時、突如、移動発射台が揺れた。
「な、なんだ?」
降りてみると、後方部のポッドが持ち上がっていく。そしてほぼ垂直になったところで、さらに角度を少し変えた。
「まずい、目標位置に設定してる」
佑一は時計を見た。10:30である。
その時、車内から声が聞こえてきた。
「こちら司令部。発射台、応答せよ」
和真は佑一を見た。佑一が渋い顔をして、車に乗り込む。無線機の通話機を外した。
「はい。こちら発射台」
「発射台を目標に設定した。正常作動を確認されたし」
「正常に稼働しております」
「了解。命があるまで待機」
通話が切れる。佑一は息をついた。
「……バレなかったかな?」
和真の心配そうな声に、佑一は答えた。
「バレたかもな。隊特有の言い回しや、暗号を使っていた可能性もある。――いや、待てよ」
佑一は車を降りると、気を失っている隊員の服装を探り始めた。ベルトに無線機がついている。それを取ると、佑一は自分のベルトに取りつけた。
「特に連絡が入らないという事は、まだ警戒はされてないという事だ。基地に行こう」
二人は基地に向かって、移動した。
途中で、二人の隊員が立っているのが見える。二人は姿を隠した。
「あそこが入り口か。ある意味判りやすいが」
「しかし自動小銃を持ってる。迂闊には近づけないぞ」
「廻り込もう」
二人は建物に隠れて、ぐるりと回り込んで逆の陰に潜んだ。しかし、入り口までは10m以上ある。
「どうする?」
佑一の囁きに、和真は上を指さした。
入り口を守る隊員は、何か物音を聞いて横を見た。誰もいない。しかし、建物の角の向う側から、僅かだが何か物音がする。隊員はもう一人の隊員に頷くと、自動小銃を抱えたまま角に近づいた。
警戒しながら角を曲がる。何もない。が、次の瞬間、空中から降ってきた衝撃が、頭部を襲った。
「う――」
隊員は小さく呻いて倒れる。その異変に、もう一人の隊員が気づいた。
隊員は小銃を脇に構えながら、そっと角まで近づいてくる。角に張り付いて、気配を殺す。静かな様子に、隊員は小銃を構えて、角を出た。
と、その足元がすくわれる。先に降りていた和真が、足元に潜んでいて、その足を掴んだのだった。と同時に、佑一が空から降ってきて、上を向いた隊員の眉間に、肘打ちを喰らわせた。隊員は後頭部から地面に激突し、物も言わずに昏倒した。
「ふう……捕まりやすい足場でよかったぜ」
和真が身体を起こす。佑一は、隊員たちから自動小銃を外していた。
「持って行くのか?」
「いや、次に目覚めた時に、使われないようにしておくだけだ」
佑一はそう言うと、弾倉を外して傍の茂みに隠した。和真が後ろから呟いた。
「よかった、俺、拳銃苦手なんだよ」
「オレたちの目的は殺しじゃないからな」
佑一は振り向くと、そう軽く笑ってみせた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる