書きの種(エッセイ日記)

『フェイスレス』を読んだ…が？

『フェイスレス　―警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結―』（沢村鐡著）を読んだ。題名長いな。けど、読み進めてるうちは面白く読んだ。まず題名の『フェイスレス』って何かと思うと、この作品の登場人物である大学講師が「相貌失認」という先天性の障害を持ってる人なのだが、その暗喩だ。

相貌失認ってのは何かというと、人の顔が覚えられない、という認知障害なのだ。名前とか声とか覚えられるのだけど、個人の顔が識別できない。しかしこの講師は理系部門でかなりの先端学者で、優秀な留学生たちがそこに集っている。けど、その個々の顔を認識できないから、腕輪のカラーで見分けたりしてる、という設定なのである。

で、事件はこの講師がいる大学で起きた。爆破事件である。この講師が下についている教授がいるのだが、その爆破事件に巻き込まれて死亡してしまう。問題なのは、その爆破直前に、この講師が犯人らしい人物に会っている、という事なのだ。

つまり犯人を目撃してる。にも関わらず、相貌失認のせいで、誰だか判らない。そういう特殊設定の中で捜査は進み、怪しいのはこの講師の下についてる四人の留学生たち、という事になる。しかもそのうちの中国人女性は、事件以降、姿をくらましている。

この爆破事件の捜査にあたる主人公が一柳美結なのだが、彼女がコンビを組まされた相手が間の悪いことに元カレの吉岡優馬だ。こいつ、顔もよくて頭も切れるので、ヒロインより出世してる。しかもアニキは公安である。

この事件が、何故だがネットで崇められてる謎のハッカー『Ｃ』が絡んでくると同時に、公安からも捜査に対して干渉が加わる。なかなか、この辺の展開は面白く、ぐいぐい読ませた。

……が。読み終わって判ったのだが、これ一巻で完結してない話だった。カバーを見ると、二・三とあるらしい。そこで事件は完結してるのか？　いや。この爆破事件のくだりは一応、解明はされるのだが――という感じである。あと、ちょっと気になるのは、ヒロインがほぼ今のところ無能力なこと。何か過去があるらしいのだが、一巻ではまだ判らない。う～む、気になるが……