書きの種(エッセイ日記)

ＣＩＡの工作

元ＣＩＡ工作担当官グレン・カール氏へのインタビューの第三回目が新聞に載っていた。この１９８５年から２０年ほど、ＣＩＡの工作をしてきた男が何を言ったかと言うと、こうだ。

「情報操作を成功させるためには、忘れてはならない鉄則がある。それは『最高の（世論）操作は真実の上に築かれる』ということだ」

これがどういう事を言ってるかという例が、後ろの方にある。イラン軍部による１９５３年のクーデター、というものがあった。この時、ＣＩＡは反政府デモを扇動し、英国資本から石油産業を取り戻そうとしていたモサデク政権の転覆に成功した、というのである。つまり、軍事クーデターを成功させる一因になったという事である。

この事について、カール氏はこう言う。「あれはたやすい工作だった。外国資本の長期支配や、（政教を分離する）モサデク首相の世俗主義への不満がイスラム聖職者らの間に充満していたからだ。ＣＩＡは火を付けたにすぎない」

なんとなく言ってる話だが、よくよく考えてみよう。モサデク政権は外国資本から石油産業を取り戻そうとしていた。その不満が国民にもあった。クーデターが起きて、どうなったか。結局、それは外国資本の支配を延命させたに過ぎない。国民のデモは、望みとは全く逆の結果をもったらした事になる。

これを行ったのが『自由の国アメリカ』だというのが笑えない。軍事独裁を増長させ、政教分離や外国支配からの脱却を目指したリベラルな民主主義政権を打倒したのだ。これがアメリカのやり方だ。

カール氏はこの国民の不満という『真実』に付け込んだ工作を自慢げに語っているが、こういうところがやはりＣＩＡだ。倫理観などなく、そこにあるのは『アメリカの都合』だけだ。それを優先させることが、最もよい仕事だと信じて疑うことのない態度だ。本当に、こういう人は恐ろしい。

カール氏は「何故トランプが支持されるか」の説明にこの話をした。それは１・白人優位の差別主義　２・内にこもる孤立主義　３・権威主義への衝動　が、埋もれた『真実』してあるからだという。…まあ、これはもはや蛇足だが。