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#3 経済的戦略と黒狸
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カラスマとマフラは棟恐に本社を構える株式会社ラクーンに足を運ぶ。タヌキ族ばかりが集まって働くこの会社で唯一のドクロ族社員であるカラスマはため息まじりに社員証をかざす。彼は聞き慣れた電子音が鳴ったのを確認して自身のデスクについた。
「遅かったなカラスマ」
休日に呼び出しておきながらそんなことを言っているのは彼の先輩、クロマルである。
「すみません」
「わかればいい。悪いな、折角の休日に」
「何を今更」
「いやー、体裁的に謝っとかねーとなと思って」
そんなことを言いながら、クロマルはカラスマのデスクに大量の書類を置く。ドスッという、到底紙のものではない音がする。
「お前に回された仕事、半分はやっておいたんだけど終わんなくてさ」
「…なんで俺休みなのに仕事回されてるんすか?」
カラスマは至極真っ当な質問をした。
「今に始まったことじゃねーだろ」
クロマルはそれに対し冷酷な言葉を返す。
「っすよねぇ…」
カラスマは、今更ながらこの会社に入ったことを後悔した。
彼の入った会社、株式会社ラクーンは社員の98%をタヌキ族の妖が占めている。別にそういった経営体制は珍しいものではない。実際、種族ごとの得意不得意を活かすという視点では合理的だろう。理系が得意なキツネ族はこれ、文系に向いているタヌキ族はこれ、ドクロ族はこれ…と仕事を割り振るのが一番効率的である。
「俺もドクロ族ばっかりの会社に入ればよかったかなぁー…」
彼はドクロ族であるにも関わらず、タヌキ族ばかりの会社に入った。タヌキ族以外の社員は貴重なため金払いもよく、会社としては仲の悪い種族が多い会社との商売をするために必要な存在だと重宝されるので上司らからの扱いも悪いものではないが、いかんせんタヌキばかりの会社では浮いてしまう。今回のように、仕事を押し付けられることもしばしばあるのだ。
「俺ももう少し手伝うから、そう気を悪くするな」
こう言ってくれるのも会社の経営陣の考えを理解しているクロマルらごく一部の妖たちだけだあり、同僚からは名前を呼ばれたことすらない。
「…あざっす」
カラスマは改めて大きなため息をつき、パソコンを起動した。
「遅かったなカラスマ」
休日に呼び出しておきながらそんなことを言っているのは彼の先輩、クロマルである。
「すみません」
「わかればいい。悪いな、折角の休日に」
「何を今更」
「いやー、体裁的に謝っとかねーとなと思って」
そんなことを言いながら、クロマルはカラスマのデスクに大量の書類を置く。ドスッという、到底紙のものではない音がする。
「お前に回された仕事、半分はやっておいたんだけど終わんなくてさ」
「…なんで俺休みなのに仕事回されてるんすか?」
カラスマは至極真っ当な質問をした。
「今に始まったことじゃねーだろ」
クロマルはそれに対し冷酷な言葉を返す。
「っすよねぇ…」
カラスマは、今更ながらこの会社に入ったことを後悔した。
彼の入った会社、株式会社ラクーンは社員の98%をタヌキ族の妖が占めている。別にそういった経営体制は珍しいものではない。実際、種族ごとの得意不得意を活かすという視点では合理的だろう。理系が得意なキツネ族はこれ、文系に向いているタヌキ族はこれ、ドクロ族はこれ…と仕事を割り振るのが一番効率的である。
「俺もドクロ族ばっかりの会社に入ればよかったかなぁー…」
彼はドクロ族であるにも関わらず、タヌキ族ばかりの会社に入った。タヌキ族以外の社員は貴重なため金払いもよく、会社としては仲の悪い種族が多い会社との商売をするために必要な存在だと重宝されるので上司らからの扱いも悪いものではないが、いかんせんタヌキばかりの会社では浮いてしまう。今回のように、仕事を押し付けられることもしばしばあるのだ。
「俺ももう少し手伝うから、そう気を悪くするな」
こう言ってくれるのも会社の経営陣の考えを理解しているクロマルらごく一部の妖たちだけだあり、同僚からは名前を呼ばれたことすらない。
「…あざっす」
カラスマは改めて大きなため息をつき、パソコンを起動した。
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