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-17-『恐ろしき氷壁』♯

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(うぅうっ……なんだよっ、こいつ。
 まったく、わけがわかんねえんだけど……)

 男の腰が振られる度に、身体を揺すられるシフルは困惑していた。

 襲われているのはわかる。
 わかるが、見ず知らずの男だ。
 記憶を辿って接点を探したが、トンと見当がつかない。

 わかっているのは人間に似ているが――男は精霊寄りの肉体を持っている。

 その証拠に、帯びている魔素の濃度の流れが違う。

 生まれて間もないのか、まとう生気は濃密でありながらも新鮮さがあった。

 その身体の一部、男性器も、相性が良いのか――認めたくはないが、快楽を揺り起こしてくる。

「どーしたよっ!
 抵抗しないじゃないか!」

「くふっ……し、縛られてっ……
 動けないだけだからなっ……ひぅうんっ」

 語尾が震えた。
 自分でも驚くほど、男に媚びた甘い声だった。

 調子の乗った強姦魔が覆い被さってくる――どすりっ、と膣奥を太くて硬いモノが子宮を叩いた。

 悦楽が、喉奥からでていく。
 声にならない声が発せられた。

「っ……!」

 普段は触れない粘膜を男性器で擦られると、小腹に秘めたむず痒さが解消される。気持ちよく、もっとグリグリと膣肉を叩いてほしいとすら思う。

 桜色の尻穴が痺れた。より男のモノを求めてしまい、尻がシーツから浮いた。

(うううっ、なんだよっ……
 あたしの身体……冷たくないのかよぉ……
 あぁ、なんか、おっぱいまで揉まれてるぅ……
 変な気分になるから、やめてくれよぉ……)

 誰にも求められなかった肉体が、愛撫されている。

 その事実を認めてしまうと――永らく秘めた女の身体がどうしても反応してしまう。

「ひぅっ……」

 濡れた股間の奥で暴れる肉棒は、慰めるために使用していたバイブとは快楽の桁が違った。

 生の男は驚くほど熱く、粘膜同士が強く擦れると尻骨に甘い刺激が駆け巡る。

(うぅ、初体験なのに拘束プレイって……
 って、これ。あたしのじゃんっ!
 外そうと思えば外せるな……
 どうしよ……ちょっとイッちゃったし……
 もっ、もう、ちょーっとだけ、続けたいかも……
 こいつの顏もまあまあ好みだし……
 あたしよりも、はるかに若い精霊ってのもいい。
 こんなに若い男を頂きますできる機会なんて……
 もう、ないと思うしなぁ……なんか……
 無理やりってのも、イイかも……)
 
 身体は熱いが、打算的な思考は動いた。

 背中に回った男の力強い二の腕も、体験したことのない刺激だ。自分を抱きしめる腕力が、もはや愛情とイコールはないかと思い始めてくる。

(いい……かん、じっ……)

 冷却体質ゆえに、他者とのスキンシップから遠い日常を送っていた。

 つまりはシフルは肉体的接触に対して極端に免疫がなかったため、異性に触れられると簡単に好きなってしまうほどチョロかった。

「そろそろ、出すから……!」

「うん……って、えっ? 
 ちょ、待て、待ってぇ……うぷぅっ」

 熱烈なキスで唇を封じられる。

 口付けも目が覚めるほど良かった。身体に力が入らなくなる。
 単調だった腰遣いに、激しいうねりが加わった。

 乱暴で遠慮のない不規則な律動だが、それが

 達したことを決して声には出さなかったが、先ほどから短い絶頂が股間から腹部を通り抜けている。

 淫核はそそり立つほど充血し、股間のはしたない液体はとめどなく溢れている。

 肉体の素直な反応に恥ずかしさが湧いた。頬はリンゴと同じくらい赤い。抵抗する気力はもうない。

 男を押しのけようとする腕にも、力が入らない。

 悲しくもないのに、昂ぶる感情がポロポロと涙をこぼさせる。

「くっ!」

「ひぃっ、あうぅ……うぅううぁっ!」

 暴れていた肉棒が、子宮口の間近で止まった。

 意図せずとも、放精を促すように膣肌はぎゅうぎゅうに竿に絡みついた。亀頭は小刻みに動き、胎内に向けて精液が放出される。

 じわじわと、女の苗床へと子種が流れ込んでいく。

 目尻から涙を垂らすシフルは口を半開きにし、呆けながら天井を仰いだ。

(うぅ、びゅくびゅくって、チンポが震えてるぅ。
 熱っついのも、中で出てる……これが噂の中出しかぁ……。
 あ、赤ちゃん、できたらどうしようかな……)

「うっ、かなり、締まるな……」

「はぁーっ、はぁーっ……
 おおお、お前、絶対に殺すからなぁ……」

 殺害予告をしても、男はニヤリと微笑するだけだった。

 射精を終えたのか、先端が白濁したペニスがぬるんと膣口から抜ける。出て行った精液にシフルは名残惜しさを覚えたが、プライドの方が優先された。

「こんなことしやがって……許されると思ってんのかよ」

「まだやれるから、尻を向けて。
 次はバックでやりたいからさ」

「てめえ……ふざけんなよ。とっ、うわっ!」

 腰に手が回ったかと思えば、強引に身体をひっくり返される。
 鎖が回転してねじれた。

 シフルは四つん這いになって、男に臀部を向けた。

 尻を差し出すという、屈辱感を与える体勢だ。歯噛みしながらも、シフルは潜在していた被虐心がくすぐられた。後ろから犯されるのも

「うっ……くっ、やめてっ……あんっ……」

 防御のない秘部に何かが当たった。男の太い指だ。

 ペニスではないと落胆する反面、巧みな指使いに舌を巻く。

 割れ目の浅いところを二本指が行き来する。愛液をかき出そうとする動きだった。

 指での愛撫は気持ちいいが、シフルは物足りなさを覚えた。

 卑劣な男の欲望を満たすためにすぐに挿入し、責めてくると想定していたのに、

「そんなにいいのか?」

「だから、やめろって……ん、んん」

「冷気がさ、
 さっきから弱くなってるんだよなー。
 本当にやめてほしいのか? 俺に気を遣ってるんだろ」

「……うっ、うるせぇ!
 も、もう、さっさとヤれよ。
 あ、あたしは動けないんだからな」

 本当は手かせなどすぐ外せる――真実は口にださない。

 男を調子にノせるのはプライドが許さない。

 けれど、生の男性器は涙が出るほど気持ちよかった。

 一人で慰めていたバイブの冷たさとは全然違う。

 見知ったばかりの男であるのに、はしたないことに子宮が疼いてしまう。

「まあ、やるけどさ」

 すくっと男が身を起こした気配。

 割れ目に圧迫感――続いて、狭い膣道をこじ開けてくる男根の感触。シフルの桜色の肛門が締まった。小尻の柔肌がかいた汗できらりと光る。

 肉欲を満たす弱電流が、膣粘膜から背筋に昇る。
 気が抜けて、口許がゆるんだ。

(あっ、すっげぇ気持ちー……バイブよりも、
 断然、生のチンポの方がよっぽどいい……
 すっげぇなぁ……これ、ほしい……くれないかな)

「気持ちいいか?」

「うん。気持ちー……じゃなくて、
 全然……気持ちよくねえからなっ!
 無理やりしやがって……け、経験豊富な……あたしだから、
 ちょっと……たっ、楽しんでから、始末してやるからな!」

「ふーん。そうかい。
 たっぷりと俺とのエッチを楽しんでくれよ」

 面白がるような口調にイラ立ったが、男が腰を振り始めたので文句が言えなくなった。

 シフルの尻が男の股間に打ちつけられ、叩かれた。

 動物がするような交尾だなと、客観的な見方も頭の隅に残っていたが、シフルは快楽に流されて恍惚した。

 抑えていた冷気が、身体から噴出してしまう。

 その凍てつく霧が男を氷結させてしまうかに思えたが、冷気は男に通用しなかった。熱源と思わしき陽炎が見えざる壁となり、氷温を断絶したのだ。

(こ、こいつが……あ、あたしの……王子様かよ……)

 今まで欠点を克服する男などいなかった。

 肉体を燃やす炎魔系の怪物たちでさえ、シフルから目を背けたのだ。

 異性を諦めていた女体が悦びに打ち震える。結合部から、愛液がぷしゅっと溢れた。とめようとしても、劣情がとまらない。

 これが夢だとしても、今日だけは乱れていい気がした。

「うっ、うううっ……ぁあっ、またイキそっ……
 そうやって、ゆっくりぃ……ねっとり突くのも、いいよっ……」

 ようやく、おのれの心に納得をつけたシフルは正直に欲求を受け入れた。

 長年我慢していた分、貪欲に性欲を発散しにかかる。
 自然と腰が持ち上がり、男のために突きやすい高さを合わせた。

「そう、もっと、もっと……してぇ、
 あっ、イクぅっ、イクからっ……!」

 突く動きに合わせ、丸い尻を小気味よく降る。

 ときにはぴったりと男の股間へ桃尻をくっつけ、グリグリと楕円を描いた。淫らな動きにはためらいがなく、発情したメスとしてのあわれもない姿があった。

「あうぅっ、イクぅうっ!」

「うおっ」

 オーガズムによって、膣ひだの絡みが増した。

 調子に合わせるように、男も二度目の射精をする。

 再び子宮へと精液は飛び散ったが、今度は事情が変わった。膣内の隙間がなくなったのか、互いの体液が混じったものが膣口からコポコポと逆流している。

 シフルは熟れた花びらから、ぴゅーっぴゅーっと潮が吹く。
 性交によって、欲望を押し留めていたダムは既に崩れたのだ。

 どんな媚態を晒しても、二の足を踏むことはない。

「あふぅっ……イッちゃったあ……
 はぁーはぁーっ……気持ちー……こんなの、たまらねぇよぉ。
 きょ、今日は朝まで、ヤりまくるからなっ……!」

「えっ?
 無理やりしたのに……なんか、精神的に乗り越えてない?」

「まあな、こんなの、大したことじゃねえよ。
 あっ……そうだ。
 今度はあたしがお前を犯してやる。
 ちゃーんと、おっ勃てろよ」

「えっ、うおっ」

 ぺろりと唇の上側を舐め、シフルは手かせを外した。手首のひねり方で外れる仕組みだからだ。足かせも同様に外す。

 男はいとも簡単に拘束が解かれたことに驚いていた。間抜け面を押し倒す。そのまま大きく開脚して、勃起を失わない股間にまたがった。

 男性器を指で摘まみ、恥肉がふやけるほど濡れそぼっている割れ目へと運ぶ。

 Y字の媚肉がほんのりと圧し潰れた。萎えかけたペニスが、信じられないほど細い胴体へ中へと、にゅるりと挿っていく。

「あんっ、これ、気持ちーなぁ……」

「よ、喜んでもらえて嬉しいけどさ。
 俺、二回も出したから少し休みたいんだけど」

「ふふふっ、心配するな。
 とりあえずもう一回パコったら、ちょこっと休ませてやる」

「ほんとにぃ?」

「ほんとほんとー。
 あはは、なんだか、立場が逆転しちゃったなー。
 お前はもう、あたしに逆らえるかなー?」

「そ、そーだね。
 逆らえないかなぁ……」

(冷気が出ても大丈夫な男だし、
 思いっきり、ハメ外してヤりまくっても安心だな。
 よーし……死ぬほど、マンコで搾ってやろ。
 中出しされてるし、一回も二回も一緒だ。
 そんで満足したら、こいつは首輪を付けて性奴隷にしろ……うん。いいアイディアだ)

 シフルは魔軍の幹部らしく、邪悪な笑みをたたえた。

 飼い殺しはレイプ魔の末路にふさわしい。強姦という罪を犯したのだ。溜まりに溜まった性欲をぶつける相手にして、何が悪い?

「あのさ、なんか……怖いこと考えてない?」

「別に考えてないよ。全然、考えてない。
 つーか、エッチするだけじゃん。
 これから毎日、お前の好きな中だしさせてやるぞ?」

「えっ、毎日? 毎日は別に……」

「男がぐだぐだ言うなよ。
 さっ……んっ、ヤる……ぞっ!」

 腰を落とし、男根を膣内に収めきるとシフルは忘我の幸福を覚えた。

 ずっとほしくてたまらなかった女の悦びがここある。雪混りの寒々しい魔力風が大気を揺るがし、シフルの藍色の髪が艶めかしくなびいた。

 膣壁を擦るために細腰がくねる。
 凛々しい吊り目が、いやらしく垂れ下がった。

(うん……あんっ、
 やっぱ、この生チンポの方が断然、気持ちーから……
 使って寂しいだけのバイブなんて、もういらないなぁ…。
 あたしは尽くす女だし……これ一本にしよ……。
 てゆーか、こいつは……絶対に逃がさないぞ……)

 表面上は男に乗りながらも唇に手を当て、あえぎ声を漏らさないようにする可憐な少女であったが、胸中は確固たる決意がほとばしっていた。

 結局――愛欲の宴(うたげ)は夜明けまで続き。

 ベッドに残ったのは、枯れ果てて白くなった男と、テカテカに血色をよくしながら眠る少女だけだった。

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