9 / 17
オレンジは嫌い
ヒーロー様の憂鬱
しおりを挟む
生前と言っていいのだろうか?
俺は単なる消防士で、それもオレンジの制服を着るまでになったというのに、数年前の東京大火の際に全てのキャリアを失った。
炎に巻かれて次々と瓦礫と化していく世界に、その破壊を行った五匹の怪人が夜空を舞っている。
立ち昇る炎に纏いつく五匹の蛾。
速水御舟の炎舞そのままの光景に、俺は世界が壊れた絶望よりも、美しいとその怪人たちが飛び交う様を眺めてしまっていた。
それも仕方が無いだろう。
俺の足は崩れて来たビルの破片で打ち砕かれ、防火服だって炎の熱で溶けだしているという地獄に取り残されているからだ。
俺は無意識に空に向かって手を差し伸べた。
俺はその時何になりたかったか?
東京を破壊した怪人を打ち砕くヒーローか?
いいや、俺も空を飛びたかった。
それだけだ。
「らいこう!雷光!緊急事態よ!直ぐに学校にいらっしゃって!」
襟元についている通信機器が、聞き覚えのある声をがなり立てた。
「あなたが来なくても大丈夫なんだからね、で、お願いします。」
「いい加減になさいな!」
俺は転寝していた木の幹から地面へと舞い降りた。
「来なくても大丈夫って言わないと。君の殺処分命令が出たら、それを実行するのは俺なんだからさ。」
俺は子供達が騒ぎながら逃げまどっている校庭を見つめた。
すると、茶色で大きな着ぐるみ怪人は急に立ち止まり、くんと何かを嗅いだ素振りをすると、なんと、俺に向かって来た?
俺は単なる消防士で、それもオレンジの制服を着るまでになったというのに、数年前の東京大火の際に全てのキャリアを失った。
炎に巻かれて次々と瓦礫と化していく世界に、その破壊を行った五匹の怪人が夜空を舞っている。
立ち昇る炎に纏いつく五匹の蛾。
速水御舟の炎舞そのままの光景に、俺は世界が壊れた絶望よりも、美しいとその怪人たちが飛び交う様を眺めてしまっていた。
それも仕方が無いだろう。
俺の足は崩れて来たビルの破片で打ち砕かれ、防火服だって炎の熱で溶けだしているという地獄に取り残されているからだ。
俺は無意識に空に向かって手を差し伸べた。
俺はその時何になりたかったか?
東京を破壊した怪人を打ち砕くヒーローか?
いいや、俺も空を飛びたかった。
それだけだ。
「らいこう!雷光!緊急事態よ!直ぐに学校にいらっしゃって!」
襟元についている通信機器が、聞き覚えのある声をがなり立てた。
「あなたが来なくても大丈夫なんだからね、で、お願いします。」
「いい加減になさいな!」
俺は転寝していた木の幹から地面へと舞い降りた。
「来なくても大丈夫って言わないと。君の殺処分命令が出たら、それを実行するのは俺なんだからさ。」
俺は子供達が騒ぎながら逃げまどっている校庭を見つめた。
すると、茶色で大きな着ぐるみ怪人は急に立ち止まり、くんと何かを嗅いだ素振りをすると、なんと、俺に向かって来た?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる