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第三章 魔族と人間と

第172話

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「ん~!!今日も良い運動になったのじゃ~。」

「ね~?今日のはちょっと歯応えあったし~、思いっきり魔法を使えて楽しかったわ。」

 私とノノの事を抱えて運んでくれているカミルとヴェルの二人がスッキリしたような顔で言った。 

 彼女達は今さっき、魔物退治を終えて帰って来たところだった。

「二人とも……ちょっと痩せた?」

 私達と共に飛んでいるマームが二人の姿を見てポツリと問いかけた。

「うむ、無駄な肉が少し落とされたやもしれんな。」

「今までずっと、食っちゃ寝~の生活を続けてたからね~。」

 確かにマームの言うとおり、少し彼女達は痩せたかもしれない。
 ……ただ、この龍の状態の話だが。普段の人間のような姿ではまったく変化は感じられないような気がする。

「マームも太らぬように気を付けるのじゃぞ?」

「大丈夫……私はいっつも動いてるから。」

 キリッとした表情でマームは言う。

「それに……まだまだ成長期。だからお肉は全部ここにつく……はず。」

 マームは未だ絶壁と言っても過言ではない自身の胸を指差して言った。
 ちなみに……服を着ててもわかるんだが、ノノの方が多分……。

 大きく胸を張る彼女に一同が哀れみの視線を送るなか、話題を変えようとカミルが口を開いた。

「そういえば……妾達が相手をした、ホムンクルスどもはどうするのじゃ?」

「一応目覚めさせた分は魔王城で仕事をしてもらってるぞ。と言ってもまだまだたくさん残ってるんだけどな。」

 まったく、どうやってあんなにホムンクルスを産み出したんだか……。いちいち魔力をおきかえるこっちの身にもなってくれ。
 十体ぐらいで魔力が底をつくんだぞ。

 ちなみにアベル曰く、未だにオリジナルのノアとホムンクルスを間違えることがあるのだとか……。最近は服で見分けをつけるために様々な服を買い漁っているらしいが。

「妾の城もあれだけいれば管理も問題ないからのぉ~……。」

 もっぱら、最近のカミルの城は毎日ノアのホムンクルスが清掃を行っているため、常にピカピカだ。

「そういえば……彼女達の様子はどうなんだ?」

「相変わらずじゃな。命令されたことをただひたすらにこなすだけじゃ。」

「ふむ……。」

 以前カミルは彼女達に自我を芽生えさせられれば……と話していたが、その課題はどうやら未だ解決できていないらしい。
 難しい問題だからな、仕方ないな。……とそう思っていたとき、カミルがふと思い出したように言った。

「じゃが、最近……ピッピとモーモーと戯れておることがあるのじゃ。」 

「あ、それ私も見たわよ?あの子達結構懐いてるみたいじゃない。」

「ほぉ?」

 もしかすると……ピッピとモーモーが彼女達の自我を芽生えさせるきっかけになるか?

「城の掃除はきちんとしておるから、何も言わずに見守っていたのじゃが……。」

「あぁ、見守ってた方がいいかもしれない。もしかすると……もしかするからな。」

 だが、仮にもし……自我が芽生えたらどうなるんだ?

 …………ヤバイ、かなり哲学的なことになりそうな予感。生憎哲学は……理解できないものが多過ぎて、ほぼ知識がない。

 自我を持たないものが自我を持った結果……は正直なところかなり怖いところではある。
 どんな自我を持つのか……まったく予想ができない。

 しかし、ピッピ達と戯れてるってことは……ある程度優しい感情を持ったりするのだろうか?
 なんか、どこかで聞いた話だが……精神治療には愛らしい動物が効果的だとか、あっちの世界では耳にしたことがあるし。

 ひとまず様子見をしていくしかないな。仮に抱く自我が優しいものであると信じて……な。

「そうじゃな……っと見えてきたのじゃ~。」

 そんなことを話していると、私達の前に白一色の街が見えてきた。今回の目的地であるウルジアだ。

「大きなお魚市場……楽しみですお師様!!」

「私は葡萄……?が楽しみ。美味しかったから……蜜の原料にしても良いかも。」

「そういえば二人はここに来るのは初めてだったな。」

 前は水龍のウルがいるから……と連れてこられなかったからな。今日は思いっきり楽しんでもらいたいものだ。

「またあのドデカイ魚があると良いのぉ~。」

 空を飛びながら口元からよだれを垂らしそうになっているカミル。

「捌くの大変だったんだぞあれ……。」

 本格的に鮪包丁みたいなのを私も作ってもらおうか。流石に何回もあれを出刃包丁で下ろす気にはなれない。
 これは後でまた、あの鍛冶屋と相談してこないといけなさそうだな。

 
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