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第三章 魔族と人間と

第166話

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 ゼバスから大方の情報を聞きだした後、私とアベルそしてノアの三人で今後の動きを決めることにした。ここでゼバスのことを外したのは一応念のためというやつだ。
 ノア曰く彼が裏切るような行為はしないらしいが……疑いをかけておくに越したことはない。

「さっ……てと、彼の話が本当だと信じて今後の動きについて決めていこうか。」

「もうミノルさんっ!!ゼバスさんは嘘を吐くような人じゃないですよ?」

「わかってる。でも念のため……だ。わかってくれ。」

 そうノアを説得すると、彼女は渋々頷いた。

「あの人間の話だと……大多数の人間は引き連れてきて、まだ少数が村とか街にぽつぽつって残ってるんだよね?」

「そういうことらしいな。だから、まず始めに取り組まなきゃいけないのはそういう人たちを取り込んでいくことだな。」

「取り込むって言うと?」

「簡単な話だ。今度はこっちが国境を踏み越えてやればいい。」

「そ、それって……進軍するってこと!?」

 アベルは私の言葉にひどく驚いた様子を見せた。

「まぁそういうことになるな。でも……進軍ってほど大したものじゃない。何せ行くのはアベルとノア……後ゼバスと私。この四人だけだからな。」

 ゼバスを連れていくのは、残った人達の説得が目的だ。そこにノアも加われば、まず説得出来ない……ということはないだろう。

 説得にノアとゼバスの二人……移動が出来ない人を移動させるためにアベル。そして簡易的な料理班の私……これだけいれば対処できる。

「あ~……でもアレだよな。エルフの国とか、獣人の国に近い方とかの村とかはジュンコとかに依頼した方がいいか?」

 流石に四人で一日で全ての人間を移動させて回るのは少しキツいよな。
 ここ最近人間からの襲撃もないからエルフも獣人も手が空いてるだろうし……応援を要請するだけしてみても良いかもしれない。

「ま、またジュンコにお願いするの?」

 ちょんちょんと両方の人差し指を押し合わせながら、おずおずとアベルは問いかけてきた。

「何か問題か?」

「うぅ~……ジュンコに頼んだらまたボクのお小遣い減らない?」

 あ……そういえばアベルのお小遣いは政治資金から出てるんだったな。ついこの前、今回ジュンコから大量に仕入れた食材のせいで財布がすかすかだよ~っ!!って嘆いてたな。

 すかすかだよ~って言いながら、ちゃっかり財布のなかに白金貨が何枚も入ってたのを私は見逃さなかったのだが……その時は敢えて何も言わなかった。

「そういえばだが……アベルはお小遣いを何に使ってるんだ?まずお金を使ってるところを見たことがないんだが……。」

「うえっ!?え、えっとぉ~……その~…………。」

 改めて問いかけてみると、アベルは面白いように動揺した。何かを隠しているようだ。

「まぁ、話したくないなら話さなくてもいい。ちなみに……アベルがめちゃくちゃ頑張って転移を繰り返すってならジュンコとかに応援を頼まなくても良くなるぞ?」

「頑張るっ!!」

 ちなみに……と付け加えるように言うと、アベルは直ぐにそう答えた。

「ならその方向で行こう。」

 なら明日はアベルに頑張ってもらうとしよう。そして明日の計画の方向性を決めているとノアがおずおずと手を挙げた。

「あ、あの~……ミノルさん?」

「ん?どうした?」

「私は何をすれば…………。」

「ノアは魔族を拒んでる人間の説得をしてくれ。多分根気がいるだろうが……ゼバスと協力して頑張ってほしい。今日皆を引き入れた時みたいに言ってやればきっと大丈夫だ。」

「うぅ~、今思い返すとすごい恥ずかしくなってきました。あんな大勢の人の前で……あぅぅ。」
 
 今朝の出来事を思い返し、顔を真っ赤にして手で覆い隠すノア。

 そういえばこっちはこっちで素は人見知りだったな。

 ……明日本当に大丈夫かな?

 最終的には王都で貴族達や暴徒化した人達の前に立たないといけないんだが……。
 まぁまぁまぁまぁ……なんとかなるか。…………多分。

「あと、忘れてはないと思うが……行方をくらましたシルヴェスターの動きも気になる。私達が人間の国に入ったら何か仕掛けてくるかもしれないから……それだけ気を付けておいてくれ。」

 あいつだけは何をしでかすかわかんないからな。隠れて禁術の用意でもして、私達のことを虎視眈々と狙ってるかもしれない。

 今回の作戦においてアイツが唯一の懸念点だ。

 だが、ヤツがどこで何をしているのか分からない以上、対策のしようがない。気を付けることしか今の私達には出来ないのだ。
 歯がゆいがな。

 そして会議を終えた私は明日に備えて、いつもより少し早くベッドに潜り込むのだった。
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