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第三章 魔族と人間と
第162話
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天候を操って雨が降らないようにしてから数ヶ月の時が経った。
季節は冬になり、時にはさんさんと雪が降る日もあった。
そしていよいよ人間の国の中では食料の枯渇が始まり、今まで動きがなかった人間側が動きを見せてきた。
「お~……ノアがいっぱい。」
アベル達の目の前には視界を埋め尽くすほど、大量にホムンクルスが立ち並んでいた。
「う~ん、だけど私の力を持ってるのはほんの一部みたい。」
「そうみたいだね。核の位置は相変わらず?」
「うん。」
「じゃ~なにも問題ないね~。」
コキコキと首を鳴らすとアベルはパチンと指をならした。すると、目の前を埋め尽くしていた大半のホムンクルスが一瞬でどこかへと消え去ってしまう。
そして彼女達の前にはノアの力を埋め込まれたホムンクルス何人かだけが取り残される。
「ミノルにはなるべく核をバラバラにしないように……って言われてたからちょっと気を付けないとね。」
「あと、服を破くのもやめてよ?こっちまで恥ずかしくなっちゃうんだから。」
「はいは~い善処しま~す。」
アベルは軽くそう言うと、ホムンクルス達へと向かって駆けていった。
「も~……絶対だからね!!」
軽く言ったアベルに対して、そう釘を刺しながらノアも剣を手にとってホムンクルス達へと向かっていく。
一方その頃……カミル達、三龍の前に大量にノアのホムンクルスが現れた。
「お~お~、大量じゃな。」
「でもあれでしょ?厄介なのは魔王様達が相手してるんでしょ?」
「そういうことだ。私達は何の力も持たないこいつらを機能停止させればいい。」
「あ、そうじゃ!!ミノルに言われておったのじゃ、核はなるべく粉々にしないように気を付けるのじゃぞ?」
思い出したようにカミルは言った。
「承知した。」
「まぁ面倒だけど~ミノルのお願いじゃ断れないわね。」
アスラとヴェルの二人はカミルの言葉に頷いた。
「では行くぞ。足を引っ張るなよ?」
「こっちの台詞よ。あんたこそ鈍ってないでしょうね!?」
そしてアスラとヴェルの二人はホムンクルス達のど真ん中へと飛び込んでいった。
一人出遅れたカミルは大きくため息を吐いた。
「はぁ……これは妾の出番はあるかのぉ~。」
そう呟いた次の瞬間、ホムンクルス達の中心で竜巻が起こり、巨石が飛び交い始めた。
その光景を見てカミルはあることを確信する。
「この様子では妾の出番はないのぉ~。じゃが、ここで暇を潰すのもつまらんし、ちと混ざるとするかの。」
自分の出番はそんなにないだろうと思いつつもカミルはホムンクルス達の方へと歩みを進めるのだった。
そしてカミルが加わることによって、その場所が地獄絵図と化したのは言うまでもない。
◇
人間による2度目のホムンクルスによる襲撃はまたしても失敗に終わる。
何事もなかったように帰って来た皆と私は食事を共にしながら、今回の襲撃の分析を始めた。
「今回の襲撃も普通の人間の兵士は混ざってなかったんだな?」
「うん、全部ノアのホムンクルスだけ~。それにノアの力を埋め込まれたのも全部投入してきたみたいだよ?」
「なるほど。」
なら、あちら側としては間違いなく総力戦だったというわけか。ただ、こっちにはある程度力を取り戻したノアがいて……アベルもいたから、大幅に戦力が上回っていた。
「となると、次はいよいよ普通の人間の兵士を送り込んでくる可能性が高いな。」
いや、下手すると農民や子供まで戦力として数えるかもしれない。そうなったらいよいよこっちの思惑通りなんだが……。
「そのときはどうするの?」
「そのときが人間の前で料理を作るときだ。」
「ふっふ~ん、いよいよボクたちの料理の腕を振るうときがくるんだね。」
「だ、大丈夫かな……。」
自信満々なアベルと対照的に不安がるノア。そんな彼女に声をかけようとした時、私より先にノノが声をかけた。
「大丈夫ですっ!!アベルさんもノアさんもお師様に教わったんですから。」
「ノノの言うとおりだ。それに、その時は私もノノも手伝うし……何も問題はない。」
アベルもノアもまだまだ半人前だが、ある程度美味しい料理は作れるようになった。手際も良いし、問題ないだろう。
「あとは……そろそろ食材を買い集めておかないといけなさそうだな。」
「あ、それジュンコからこの前書類で来たよ?」
「その書類見せてもらってもいいか?」
「いいよ~。」
そしてアベルからその書類を受け取り、目を通してみると……。
「ちっ……儲ける気満々じゃないか。」
どれもこれも平均の値段より少し高い。あの時「お安くしとくでありんすよ~。」とか言いながら悪い笑みを浮かべていたからな。
予想はしていたが……ジュンコはやはり期待を裏切らないな。
「まぁ、これで買い付けていいだろう。ちょっと高いけどな。」
「うん、わかった。」
さて、後は人間の動きを見逃さないようにするだけだな。これから先はタイミングを逃せない。
季節は冬になり、時にはさんさんと雪が降る日もあった。
そしていよいよ人間の国の中では食料の枯渇が始まり、今まで動きがなかった人間側が動きを見せてきた。
「お~……ノアがいっぱい。」
アベル達の目の前には視界を埋め尽くすほど、大量にホムンクルスが立ち並んでいた。
「う~ん、だけど私の力を持ってるのはほんの一部みたい。」
「そうみたいだね。核の位置は相変わらず?」
「うん。」
「じゃ~なにも問題ないね~。」
コキコキと首を鳴らすとアベルはパチンと指をならした。すると、目の前を埋め尽くしていた大半のホムンクルスが一瞬でどこかへと消え去ってしまう。
そして彼女達の前にはノアの力を埋め込まれたホムンクルス何人かだけが取り残される。
「ミノルにはなるべく核をバラバラにしないように……って言われてたからちょっと気を付けないとね。」
「あと、服を破くのもやめてよ?こっちまで恥ずかしくなっちゃうんだから。」
「はいは~い善処しま~す。」
アベルは軽くそう言うと、ホムンクルス達へと向かって駆けていった。
「も~……絶対だからね!!」
軽く言ったアベルに対して、そう釘を刺しながらノアも剣を手にとってホムンクルス達へと向かっていく。
一方その頃……カミル達、三龍の前に大量にノアのホムンクルスが現れた。
「お~お~、大量じゃな。」
「でもあれでしょ?厄介なのは魔王様達が相手してるんでしょ?」
「そういうことだ。私達は何の力も持たないこいつらを機能停止させればいい。」
「あ、そうじゃ!!ミノルに言われておったのじゃ、核はなるべく粉々にしないように気を付けるのじゃぞ?」
思い出したようにカミルは言った。
「承知した。」
「まぁ面倒だけど~ミノルのお願いじゃ断れないわね。」
アスラとヴェルの二人はカミルの言葉に頷いた。
「では行くぞ。足を引っ張るなよ?」
「こっちの台詞よ。あんたこそ鈍ってないでしょうね!?」
そしてアスラとヴェルの二人はホムンクルス達のど真ん中へと飛び込んでいった。
一人出遅れたカミルは大きくため息を吐いた。
「はぁ……これは妾の出番はあるかのぉ~。」
そう呟いた次の瞬間、ホムンクルス達の中心で竜巻が起こり、巨石が飛び交い始めた。
その光景を見てカミルはあることを確信する。
「この様子では妾の出番はないのぉ~。じゃが、ここで暇を潰すのもつまらんし、ちと混ざるとするかの。」
自分の出番はそんなにないだろうと思いつつもカミルはホムンクルス達の方へと歩みを進めるのだった。
そしてカミルが加わることによって、その場所が地獄絵図と化したのは言うまでもない。
◇
人間による2度目のホムンクルスによる襲撃はまたしても失敗に終わる。
何事もなかったように帰って来た皆と私は食事を共にしながら、今回の襲撃の分析を始めた。
「今回の襲撃も普通の人間の兵士は混ざってなかったんだな?」
「うん、全部ノアのホムンクルスだけ~。それにノアの力を埋め込まれたのも全部投入してきたみたいだよ?」
「なるほど。」
なら、あちら側としては間違いなく総力戦だったというわけか。ただ、こっちにはある程度力を取り戻したノアがいて……アベルもいたから、大幅に戦力が上回っていた。
「となると、次はいよいよ普通の人間の兵士を送り込んでくる可能性が高いな。」
いや、下手すると農民や子供まで戦力として数えるかもしれない。そうなったらいよいよこっちの思惑通りなんだが……。
「そのときはどうするの?」
「そのときが人間の前で料理を作るときだ。」
「ふっふ~ん、いよいよボクたちの料理の腕を振るうときがくるんだね。」
「だ、大丈夫かな……。」
自信満々なアベルと対照的に不安がるノア。そんな彼女に声をかけようとした時、私より先にノノが声をかけた。
「大丈夫ですっ!!アベルさんもノアさんもお師様に教わったんですから。」
「ノノの言うとおりだ。それに、その時は私もノノも手伝うし……何も問題はない。」
アベルもノアもまだまだ半人前だが、ある程度美味しい料理は作れるようになった。手際も良いし、問題ないだろう。
「あとは……そろそろ食材を買い集めておかないといけなさそうだな。」
「あ、それジュンコからこの前書類で来たよ?」
「その書類見せてもらってもいいか?」
「いいよ~。」
そしてアベルからその書類を受け取り、目を通してみると……。
「ちっ……儲ける気満々じゃないか。」
どれもこれも平均の値段より少し高い。あの時「お安くしとくでありんすよ~。」とか言いながら悪い笑みを浮かべていたからな。
予想はしていたが……ジュンコはやはり期待を裏切らないな。
「まぁ、これで買い付けていいだろう。ちょっと高いけどな。」
「うん、わかった。」
さて、後は人間の動きを見逃さないようにするだけだな。これから先はタイミングを逃せない。
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