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第三章 魔族と人間と

第150話

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 一通りまた料理を作り、ノノとマームと一緒にアベル達の帰りを待っていると……

 突然部屋の空間に大きな亀裂が入った。

「お、どうやら帰ってきたみたいだな。」

 ノノとマームと、その亀裂の方を見つめていると……

「戻ったのじゃ~!!」

「戻ったわよ~。」

 まず最初にカミルとヴェルの二人が元気そうに姿を現した。見た感じ目立った怪我も無いようだ。

 そして二人に続き、アベル、ノア、そしてシグルドさんが姿を現した。

「たっだいま~!!」

「た、ただいま戻りました。」

 無事に帰ってきたみんなを見て、ホッと一安心……といきたいところだったが……そんな時、私の視界にアベル達が抱えている上半身裸の女性が目に入った。

「っ!?なっ、な……なんで裸の女性なんかを抱えてるんだ!!」

 直視しないように目をそらす。するとアベルがその答えを教えてくれた。

「あ……この子達?あれだよあれ……元人工勇者?って言ったら良いのかな。」

「だとしてもなんで裸なんだよ!!」

「あ~それは……」

 答えを言い渋るアベルの代わりに、となりにいたノアが叫ぶように言った。

「アベルが無理矢理裸にひん剥いたからですっ!!」

「だって仕方ないじゃん?これが胸の位置にあったんだもん。服の上からじゃわかんなかったよ。」

「それでも下着まで破り捨てることはなかったでしょ!?もうお嫁にいけないよぉ~。」

 しくしくと泣き始めてしまうノア。まぁ、あの人工勇者はノアそのものといっても過言ではない。顔も体つきも、何もかもすべて一緒だ。
 つまり……人工勇者の裸はノアの裸と言える。

「ゴメンゴメン、ほらなんだったらボクがお嫁にもらってあげるから。泣かないでよ……ねっ?」

 泣き崩れるノアをなだめるアベル。

 私はふと疑問に思ったことをカミルに聞いてみることにした。

「なぁカミル、この国って同性結婚が認められてるのか?」

「認められておるぞ?」

 認められてんのか……。

 まぁ今さら驚きはしないけどな。この国結構自由だし……。

 そして元人工勇者にひとまず服を着させ、ご飯を食べながら状況の整理をすることにした。

「それで?あの人工勇者達に埋め込まれてたやつは持って帰ってきたのか?」

「あ、うん一応ね。割れちゃってるけど……。」

 アベルが私に見せてくれたのは黄色く輝く破片だった。

「これに勇者の力が……ねぇ。」

 手に取ってみても何も感じないが……本当にこんなものに勇者の力が込められているのだろうか?

「らしいんだけど……どうやって取り出せば良いのかわかんないんだよね。ノアが触っても何の反応もないし……。」

「なるほどな。」

 取り出す……か。…………取り出す?待てよ?もしかしたら……。

「これ、ちょっといじってみてもいいか?」

「いじる……って何かするの?」

「あぁ、もしかするとノアの勇者の力を取り出せるかもしれない。」

「ほ、ホントですかミノルさん!!」

「もしかしたら……だけどな。」

 期待を込めた視線を送ってくるノアに私はあくまで可能性の話だと釘を刺す。

 そして一ヶ所に集めたその欠片に向かって私は手をかざした。

 早速抽出を試そうと思ったが……その前に一度しっかりと鑑定をしておいた方が良いんじゃないか?
 一応これがどういうものなのか、把握しておくことに悪いことはないだろう。
 
「鑑定。」

 そう呟くと、私の前に見慣れた画面が現れた。そこにはこの黄色く輝く破片の詳細が書かれていた。

 ・改造されたホムンクルスの核片。
 禁術によって産み出された人工的な人間ホムンクルスの動作に必要な核片。勇者の力、及び禁術『無限再生』の効果が付与されている。

 おぉぅ……なるほどな。色々気になる点はあるが、この破片にノアの勇者の力が付与されているのは間違いないようだ。
 そうとわかれば、後は勇者の力を抽出するだけだな。

 手をかざしたまま、私はさらに呟いた。

「抽出……勇者の力。」

 そう唱えた瞬間だった……。

 ズキン…………。

「っ!!ぐあっ……。」

 強烈な頭痛が私の頭を襲った。まるで頭のなかを直接かき混ぜられているかのような激痛。今にも気を失いそうだ。
 しかし、私の手には確かに何かが集まってきているのを感じる。

 今中断したらこれはどうなる?下手したら消えてしまいかねない。だからやめるわけにはいかない。

「ぐっ……。」

 早く……早く……早くっ!!

 激痛に苛まれながらも、最後の1滴まで抽出を終えた私は、ふらふらとした足取りでノアのもとへと向かう。

 そして彼女の肩に手を置いて抽出したものを全て流し込んだ。

「あ……力が戻ってきました!!」

「それは……よかった……な。」

 バタッ……。

 そして私の意識は急速に闇の中へと沈んでいった。

「ミノルさん!?」

「ミノル!!しっかりするのじゃ~!!」

「お師様!!」

 意識がなくなる刹那みんなが私を呼ぶ声が聞こえたが、私はそれに答えることができなかった……。
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