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第二章 平和の使者
第128話
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そしていよいよ、食事を終えるころにはジュンコは幸せそうに酔っぱらってしまっていた。
「ほえ~……幸せでありんす~。」
「あはっ♪それは良かったよ~。それじゃあボクはジュンコのことを送り届けてくるから……。」
アベルはジュンコのことをお姫様抱っこすると、私の方に近寄ってきて耳元で囁いた。
「ボクの分……何か作ってくれてると嬉しいな?」
「あぁ、任せておけ。」
アベルは自分の分の料理まで犠牲にして、ジュンコに食べさせていたからな。それもあってか、カミル達もあんまり手を付けていなかったし。何なら彼女たちは葡萄酒をまだ飲んでいない。
幸い、まだ材料は山ほど残っているし……同じものを作れるだろう。カミル達もそれを望んでいるだろうしな。
「うん!!じゃ行ってくるよ~。」
そして空間に亀裂が入ると、その裂け目の中にジュンコを抱えたアベルが入っていった。
この場に静寂が訪れると、ふぅ……とカミルが大きく息を吐いた。
「ふぅ、ようやく行ったかの。」
「も~びっくりしちゃったわよね~。急に獣人族の女王を連れてくるなんて。うかつに声をかけれなかったから思わず黙っちゃったわ。」
「ま、変なことを言って関係を悪化させるよりかは遥かにマシな結果になったのではないのかの?かなり満足して帰ったようじゃしな。」
満足して帰ったことは間違いない。……この後が見ものだな。
この後ジュンコがどんな反応をしてくるかを想像していると……。
「そういえば、ミノルも魔王様もずいぶん悪い笑みを浮かべておったな。まるで何かを陥れてやった後の笑みじゃったぞ?」
「ふ、まぁ陥れてやったからな。……っとさて、カミルたちはアベルが戻ってきてから本格的に宴を始めるんだろ?」
「うむ!!」
「もちろんよ~」
「まだまだ……食べる。」
さてじゃあ、アベルが戻ってくる前に料理の補充をするか。そう思って席を立つと……
「あ、お師様……ノノも手伝いますよ!!」
「いや、大丈夫だ。休んでていいぞ。」
「え……いいんですか?」
「あぁ、今日はもう手を休めておいたほうがいい。明日筋肉痛になって料理ができなくなっても知らないぞ?」
「あぅっ……それはイヤです!!」
「じゃあ今はゆっくり休んでおけ、今日やったことを忘れないようにしながら……な。」
ノノの頭を撫でて、私は一人再び料理を作りに向かうのだった。
◇
それから少し時は経ち……
「ミノルぅ~……酒じゃあ~!!」
「おいおい、もう飲みすぎだぞ?完全に酔っぱらってるじゃないか。」
あの後、アベルが戻ってくるのを待ってから、いよいよ本格的な酒を交えた食事が始まったのだが……。
悲しいことに現在正気でいられているのは私と、ノノの二人だけだった。
あれだけ、ヴェルは酒癖が悪いと言っていたカミルも、顔を真っ赤にして酔っぱらっているし……。
マームとアベルの二人はペロリと葡萄酒を舐めただけで、酔い潰れて寝てしまった。
「うぅ~……ミノルはいじわるじゃぁ~……。む~……ではノノっ!!」
「は、はい?」
「もっと妾の近くに来るのじゃ~。」
カミルに言われた通りにノノは、彼女の近くに歩み寄る。
すると
「むっふふふ~捕まえたのじゃ~。んふ~……妾もこうしてもっとお主のことを撫でてやりたかったのじゃ~。」
「あぅ、あぅ~お師様~……。」
カミルに捕まってしまったノノは助けてください~……という視線を私に送ってくるが、残念なことに私にノノを助ける手立てはない。
すまないが、もう少しの間耐えてくれノノ……これも社会勉強というやつだ。
心の中でそう思っていると、不意に私の背中にむにゅん……と何か柔らかいものが当たる感触がした。
驚いて後ろを振り返ろうとしたとき、誰かの手によって私の視界が覆い隠されてしまった。
「~~~っ!?」
「うふふっ……だ~れだ~?」
声色からして間違いなくヴェルなのだろうが……妙に声が艶っぽい。彼女も酔っぱらってしまっているのだろう。
「ヴェル、悪ふざけはその辺に……。」
「ねぇ……ミノルは番いないの?」
番……とは私達でいう婚約者という意味だろうか?生憎料理に全てを捧げてきた人生。
そんなものはいない。だが、素直にいないと答えるのも少し恥ずかしいな。
「どうしてそんなことを聞く?」
「あ~!!その反応もしかしてぇ~いないの?うふふふっ♪」
「いなくて悪かったな。」
ツン……とした態度をとっていると、突然ヴェルに顔を掴まれてお互いに向き合う形になってしまった。
「いないならぁ~……私が番になってあげよっかぁ?ミノルなら私、大歓迎なんだけど~ねぇ?」
「あ、いや……だからそのだな……。」
戸惑っていると、私の目の前にあるヴェルの表情がにんまりと歪む。
「あははははっ!!照れてる~可愛いわねぇ~。…………襲っちゃおうかしら。」
「!?」
突然ヴェルにお姫様抱っこのような形で抱き抱えあげられる。
「なっ……何をっ。」
「うふふっ♪ベッド……行きましょ?」
「!?!?」
もがいて逃れようとするが、万力のような力で抱かれているため抜け出すことができない。
終わった……私の貞操はここまでのようだ。
自身の貞操を諦めかけたその時……。
トン……。
「ほぇ?……きゅぅ。」
「ほっほっほ、またまた危ないところでしたなミノル様?」
「し、シグルドさん……助かりました。」
またもや神タイミングで私のことをシグルドさんは救ってくれた。
そしてヴェルのことを寝室に運び、カミル達のもとへ戻ってくると、皆もう酔い潰れてしまっていた。
「あぅ~お師様ぁ~!!」
「今助けるぞノノ。」
「では、私めはカミル様達をお部屋に運ばせていただきます。」
「助かります。」
シグルドさんに手伝ってもらい酔いつぶれた皆を寝室へと運ぶ。ノノも疲れたらしく、ベッドに入るとすぐに寝息をたててしまった。
そしてシグルドさんと二人になったとき……
「シグルドさん、よかったら晩酌に付き合ってもらえませんか?」
「良いのですかな?」
「それぐらいのお礼はさせてください。今何かありものでツマミ作りますね。」
「それではありがたく、お言葉に甘えさせていただきます。」
余り物で簡単な料理を作り、私はシグルドさんと酒を飲み交わしたのだった。
「ほえ~……幸せでありんす~。」
「あはっ♪それは良かったよ~。それじゃあボクはジュンコのことを送り届けてくるから……。」
アベルはジュンコのことをお姫様抱っこすると、私の方に近寄ってきて耳元で囁いた。
「ボクの分……何か作ってくれてると嬉しいな?」
「あぁ、任せておけ。」
アベルは自分の分の料理まで犠牲にして、ジュンコに食べさせていたからな。それもあってか、カミル達もあんまり手を付けていなかったし。何なら彼女たちは葡萄酒をまだ飲んでいない。
幸い、まだ材料は山ほど残っているし……同じものを作れるだろう。カミル達もそれを望んでいるだろうしな。
「うん!!じゃ行ってくるよ~。」
そして空間に亀裂が入ると、その裂け目の中にジュンコを抱えたアベルが入っていった。
この場に静寂が訪れると、ふぅ……とカミルが大きく息を吐いた。
「ふぅ、ようやく行ったかの。」
「も~びっくりしちゃったわよね~。急に獣人族の女王を連れてくるなんて。うかつに声をかけれなかったから思わず黙っちゃったわ。」
「ま、変なことを言って関係を悪化させるよりかは遥かにマシな結果になったのではないのかの?かなり満足して帰ったようじゃしな。」
満足して帰ったことは間違いない。……この後が見ものだな。
この後ジュンコがどんな反応をしてくるかを想像していると……。
「そういえば、ミノルも魔王様もずいぶん悪い笑みを浮かべておったな。まるで何かを陥れてやった後の笑みじゃったぞ?」
「ふ、まぁ陥れてやったからな。……っとさて、カミルたちはアベルが戻ってきてから本格的に宴を始めるんだろ?」
「うむ!!」
「もちろんよ~」
「まだまだ……食べる。」
さてじゃあ、アベルが戻ってくる前に料理の補充をするか。そう思って席を立つと……
「あ、お師様……ノノも手伝いますよ!!」
「いや、大丈夫だ。休んでていいぞ。」
「え……いいんですか?」
「あぁ、今日はもう手を休めておいたほうがいい。明日筋肉痛になって料理ができなくなっても知らないぞ?」
「あぅっ……それはイヤです!!」
「じゃあ今はゆっくり休んでおけ、今日やったことを忘れないようにしながら……な。」
ノノの頭を撫でて、私は一人再び料理を作りに向かうのだった。
◇
それから少し時は経ち……
「ミノルぅ~……酒じゃあ~!!」
「おいおい、もう飲みすぎだぞ?完全に酔っぱらってるじゃないか。」
あの後、アベルが戻ってくるのを待ってから、いよいよ本格的な酒を交えた食事が始まったのだが……。
悲しいことに現在正気でいられているのは私と、ノノの二人だけだった。
あれだけ、ヴェルは酒癖が悪いと言っていたカミルも、顔を真っ赤にして酔っぱらっているし……。
マームとアベルの二人はペロリと葡萄酒を舐めただけで、酔い潰れて寝てしまった。
「うぅ~……ミノルはいじわるじゃぁ~……。む~……ではノノっ!!」
「は、はい?」
「もっと妾の近くに来るのじゃ~。」
カミルに言われた通りにノノは、彼女の近くに歩み寄る。
すると
「むっふふふ~捕まえたのじゃ~。んふ~……妾もこうしてもっとお主のことを撫でてやりたかったのじゃ~。」
「あぅ、あぅ~お師様~……。」
カミルに捕まってしまったノノは助けてください~……という視線を私に送ってくるが、残念なことに私にノノを助ける手立てはない。
すまないが、もう少しの間耐えてくれノノ……これも社会勉強というやつだ。
心の中でそう思っていると、不意に私の背中にむにゅん……と何か柔らかいものが当たる感触がした。
驚いて後ろを振り返ろうとしたとき、誰かの手によって私の視界が覆い隠されてしまった。
「~~~っ!?」
「うふふっ……だ~れだ~?」
声色からして間違いなくヴェルなのだろうが……妙に声が艶っぽい。彼女も酔っぱらってしまっているのだろう。
「ヴェル、悪ふざけはその辺に……。」
「ねぇ……ミノルは番いないの?」
番……とは私達でいう婚約者という意味だろうか?生憎料理に全てを捧げてきた人生。
そんなものはいない。だが、素直にいないと答えるのも少し恥ずかしいな。
「どうしてそんなことを聞く?」
「あ~!!その反応もしかしてぇ~いないの?うふふふっ♪」
「いなくて悪かったな。」
ツン……とした態度をとっていると、突然ヴェルに顔を掴まれてお互いに向き合う形になってしまった。
「いないならぁ~……私が番になってあげよっかぁ?ミノルなら私、大歓迎なんだけど~ねぇ?」
「あ、いや……だからそのだな……。」
戸惑っていると、私の目の前にあるヴェルの表情がにんまりと歪む。
「あははははっ!!照れてる~可愛いわねぇ~。…………襲っちゃおうかしら。」
「!?」
突然ヴェルにお姫様抱っこのような形で抱き抱えあげられる。
「なっ……何をっ。」
「うふふっ♪ベッド……行きましょ?」
「!?!?」
もがいて逃れようとするが、万力のような力で抱かれているため抜け出すことができない。
終わった……私の貞操はここまでのようだ。
自身の貞操を諦めかけたその時……。
トン……。
「ほぇ?……きゅぅ。」
「ほっほっほ、またまた危ないところでしたなミノル様?」
「し、シグルドさん……助かりました。」
またもや神タイミングで私のことをシグルドさんは救ってくれた。
そしてヴェルのことを寝室に運び、カミル達のもとへ戻ってくると、皆もう酔い潰れてしまっていた。
「あぅ~お師様ぁ~!!」
「今助けるぞノノ。」
「では、私めはカミル様達をお部屋に運ばせていただきます。」
「助かります。」
シグルドさんに手伝ってもらい酔いつぶれた皆を寝室へと運ぶ。ノノも疲れたらしく、ベッドに入るとすぐに寝息をたててしまった。
そしてシグルドさんと二人になったとき……
「シグルドさん、よかったら晩酌に付き合ってもらえませんか?」
「良いのですかな?」
「それぐらいのお礼はさせてください。今何かありものでツマミ作りますね。」
「それではありがたく、お言葉に甘えさせていただきます。」
余り物で簡単な料理を作り、私はシグルドさんと酒を飲み交わしたのだった。
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