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第一章 龍の料理人
第112話
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アルマスの屋敷に仕えている妖精ミルに手伝ってもらい、アルマス達の前に料理を並べていく。私が料理を持って部屋の中へとはいると、アベルが口を開いた。
「いや~良い時に来てくれたよミノル~。ホント、後少し遅かったら大変なことになってたかも~。」
「お待たせしてしまい申し訳ありません魔王様。」
この場は無礼講じゃないから、敬語でアベルに接しようと思いそう口にした途端。アベルが自らの身を抱いてぶるりと震えた。
「うわ……やめてやめて、なんかミノルに魔王様って呼ばれると違和感ありすぎて変な感じする。いつも通りで良いよ?」
「そう仰られても、この場は厳粛な場ですから……。」
「ボクが良いって言ってるんだから良いの!!アルマスだって素のミノルが見たいよね?ねっ!?」
「そうだね、これからもしかすると密な関係になるかもしれないし……この際だから堅苦しいのは無しにしよう。」
「ほら!!アルマスもこう言ってるんだし?」
アルマスが言ってるんじゃなくて、半ばアベルが言わせたんだけどな。
そんな風に思いながら、私は自分の中にある接客スイッチをパチリとオフにした。
「…………これでいいか?」
「うんうん、やっぱりそっちのがいいや。にしても、急に畏まられるとこんなに変な感じがするって思ってなかったよ。」
「まぁ、無理もないな。料理人ってのは多重人格を疑われるほど、接客する姿と普段の姿との間に深い境界線があるからな。」
私もよく陰で囁かれたものだ。「八意さんは二重人格なんじゃないか~。」とかな。ま、そんなことは置いといてだな……。料理が冷める前にぱぱっと説明をしないと。
「っと、さて……じゃあ冷める前に今日作った料理の説明をさせてもらおう。先ずは今回の料理の題材だが、『相乗』というのを基に作らせてもらった。」
「相乗……か。なかなか興味深いね。お互いに働いた力が何倍にもなるって意味だったかな?」
「なるほどね~。」
「先ず1品目は『胡麻豆腐』この国で取れた胡麻をペースト状にして、乾燥させた海藻から引いた出汁でのばし、でんぷんで練り固めた料理。」
胡麻豆腐は精進料理でよく食されるメジャーな料理の一つだ。香り高いゴマの香りと、出汁の旨味を存分に味わえる料理だな。
「胡麻か……あんなに小さい種がこんな料理になるんだね。」
「乾燥させた海藻はボクの国で採れたやつでしょ?ここには海が無いもんね。」
まじまじと胡麻豆腐を見つめるアベル達に、私は更に次の料理の説明を始めた。
「次に2品目は『旬の野菜の天ぷら』これはこの国で今まさに旬を迎えてる野菜を衣で包んで油で揚げた料理。食べる前に手前に盛ってある塩を少しつけて食べてほしい。」
野菜はエルフの国で採れたものだが、塩は魔族の国で採れた極めて質の良い物を使っている。塩気が野菜の甘味や旨味の引き立て役になって、より野菜の味を強く感じることができるはずだ。
「3品目は『けんちん汁』根菜類を胡麻豆腐でも使った出汁と、この国で生まれた醤油という調味料で煮込んだすまし汁。」
あっさりとした味付けだから口直しにはピッタリだな。根菜類も出汁を含んで美味しく仕上がっている。
「4品目は『霊樹茸の炊き込みご飯』米を霊樹茸と出汁と共に炊き上げた料理。」
説明を読み上げると共に、卓の真ん中に置かれた土鍋の蓋を開ける。すると、湯気と共に部屋の中に霊樹茸の香りがいっぱいに広がった。
「なるほど、さっきから香っていた霊樹茸の香りの正体はこれか。それに米は僕達の主食だけど……こんな風に綺麗に炊き上がってるのは初めて見たよ。」
「この国に伝わってる炊き方と、私の炊き方は少し違うからな。」
この国に伝わってる米の炊き方は少し……曖昧な部分が多い。米は少し水加減を間違えただけで炊き上がりが変わってくる意外と繊細な食材だ。曖昧な調理法でどうこうできる代物じゃない。
「そして5品目……『豆腐ハンバーグキノコあんかけ』豆乳から作った豆腐とおからを潰して練り固めて焼き上げた料理。今回は上からキノコのあんかけをたっぷりとかけた。」
原料はほぼ大豆だが、出来うる限り肉のような食感に近付けた。噛んだときの食感に驚いてくれたら嬉しいが……。
「最後に6品目……『焼き霊樹果』そのままで食べても美味しい霊樹果をオーブンでじっくりと焼き上げた、食後の甘味。」
「へぇ……霊樹果を焼いたのか。この発想はなかったね。」
「そのまま食べても勿論美味しいが……食べ飽きてるだろ?」
アルマスと初めて会ったとき、彼は自分が300歳だと言っていた。それだけ生きてたら霊樹果なんて飽きるほど食べてるだろうから、少し変わった工夫が必要だった。かといって卵を使うタルトなどの菓子は出来ないから、最終的にこの形になってしまったのだ。
「手短だったが料理の説明は以上だ。後は実際に食べて、それがどんな料理なのかを自分で確かめてみたらいい。」
ぶっちゃけた話、それが一番早いからな。
さて……私にできる仕事はここまでだ。後はアルマスが食べて何と言うかを見守るだけだ。
「いや~良い時に来てくれたよミノル~。ホント、後少し遅かったら大変なことになってたかも~。」
「お待たせしてしまい申し訳ありません魔王様。」
この場は無礼講じゃないから、敬語でアベルに接しようと思いそう口にした途端。アベルが自らの身を抱いてぶるりと震えた。
「うわ……やめてやめて、なんかミノルに魔王様って呼ばれると違和感ありすぎて変な感じする。いつも通りで良いよ?」
「そう仰られても、この場は厳粛な場ですから……。」
「ボクが良いって言ってるんだから良いの!!アルマスだって素のミノルが見たいよね?ねっ!?」
「そうだね、これからもしかすると密な関係になるかもしれないし……この際だから堅苦しいのは無しにしよう。」
「ほら!!アルマスもこう言ってるんだし?」
アルマスが言ってるんじゃなくて、半ばアベルが言わせたんだけどな。
そんな風に思いながら、私は自分の中にある接客スイッチをパチリとオフにした。
「…………これでいいか?」
「うんうん、やっぱりそっちのがいいや。にしても、急に畏まられるとこんなに変な感じがするって思ってなかったよ。」
「まぁ、無理もないな。料理人ってのは多重人格を疑われるほど、接客する姿と普段の姿との間に深い境界線があるからな。」
私もよく陰で囁かれたものだ。「八意さんは二重人格なんじゃないか~。」とかな。ま、そんなことは置いといてだな……。料理が冷める前にぱぱっと説明をしないと。
「っと、さて……じゃあ冷める前に今日作った料理の説明をさせてもらおう。先ずは今回の料理の題材だが、『相乗』というのを基に作らせてもらった。」
「相乗……か。なかなか興味深いね。お互いに働いた力が何倍にもなるって意味だったかな?」
「なるほどね~。」
「先ず1品目は『胡麻豆腐』この国で取れた胡麻をペースト状にして、乾燥させた海藻から引いた出汁でのばし、でんぷんで練り固めた料理。」
胡麻豆腐は精進料理でよく食されるメジャーな料理の一つだ。香り高いゴマの香りと、出汁の旨味を存分に味わえる料理だな。
「胡麻か……あんなに小さい種がこんな料理になるんだね。」
「乾燥させた海藻はボクの国で採れたやつでしょ?ここには海が無いもんね。」
まじまじと胡麻豆腐を見つめるアベル達に、私は更に次の料理の説明を始めた。
「次に2品目は『旬の野菜の天ぷら』これはこの国で今まさに旬を迎えてる野菜を衣で包んで油で揚げた料理。食べる前に手前に盛ってある塩を少しつけて食べてほしい。」
野菜はエルフの国で採れたものだが、塩は魔族の国で採れた極めて質の良い物を使っている。塩気が野菜の甘味や旨味の引き立て役になって、より野菜の味を強く感じることができるはずだ。
「3品目は『けんちん汁』根菜類を胡麻豆腐でも使った出汁と、この国で生まれた醤油という調味料で煮込んだすまし汁。」
あっさりとした味付けだから口直しにはピッタリだな。根菜類も出汁を含んで美味しく仕上がっている。
「4品目は『霊樹茸の炊き込みご飯』米を霊樹茸と出汁と共に炊き上げた料理。」
説明を読み上げると共に、卓の真ん中に置かれた土鍋の蓋を開ける。すると、湯気と共に部屋の中に霊樹茸の香りがいっぱいに広がった。
「なるほど、さっきから香っていた霊樹茸の香りの正体はこれか。それに米は僕達の主食だけど……こんな風に綺麗に炊き上がってるのは初めて見たよ。」
「この国に伝わってる炊き方と、私の炊き方は少し違うからな。」
この国に伝わってる米の炊き方は少し……曖昧な部分が多い。米は少し水加減を間違えただけで炊き上がりが変わってくる意外と繊細な食材だ。曖昧な調理法でどうこうできる代物じゃない。
「そして5品目……『豆腐ハンバーグキノコあんかけ』豆乳から作った豆腐とおからを潰して練り固めて焼き上げた料理。今回は上からキノコのあんかけをたっぷりとかけた。」
原料はほぼ大豆だが、出来うる限り肉のような食感に近付けた。噛んだときの食感に驚いてくれたら嬉しいが……。
「最後に6品目……『焼き霊樹果』そのままで食べても美味しい霊樹果をオーブンでじっくりと焼き上げた、食後の甘味。」
「へぇ……霊樹果を焼いたのか。この発想はなかったね。」
「そのまま食べても勿論美味しいが……食べ飽きてるだろ?」
アルマスと初めて会ったとき、彼は自分が300歳だと言っていた。それだけ生きてたら霊樹果なんて飽きるほど食べてるだろうから、少し変わった工夫が必要だった。かといって卵を使うタルトなどの菓子は出来ないから、最終的にこの形になってしまったのだ。
「手短だったが料理の説明は以上だ。後は実際に食べて、それがどんな料理なのかを自分で確かめてみたらいい。」
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