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第一章 龍の料理人
第23話
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さて、小麦粉もふるったし後は蜂蜜を適量量るだけだな。ちなみに今から作ろうとしているのはとても簡単なバタークッキーだ。作り方は簡単で……出来上がったバターと蜂蜜を良く練って、振るった小麦粉と混ぜる。そして棒状に整形して一度冷やした後適度な大きさに切り分けてオーブンで焼き上げるだけだ。
本当は卵黄も使いたかったが……予想外の事態があって使えなくなってしまったからな。蜂蜜の計量をしながらチラリとコカトリスの雛の方を見てみると、もうすでに注いだ牛乳が半分以上なくなってしまっている。すごい飲みっぷりだ。
そのまま視線をカミルの方に向けると……。
「できたのじゃ~!!」
歓喜の声とともにカミルは固形物が入った瓶を天に掲げていた。そしてすぐさま私の方に駆け寄ってくる。
「ミノルッ!!できたのじゃ!!これでよいのじゃろ?」
「あぁ、完璧だ。ありがとなカミル。」
「ふっふっふ~……妾にかかればこんなものじゃ~。」
エッヘンと、ない胸を大きく張りカミルは威張る。そんなカミルに私は以前聞いた話を少し話してあげることにした。
「そういえば……私がいた世界でそうやってバターを作る世界記録があったな。」
「ほぉ~?きっと妾のほうが速いに決まってるのじゃ~。」
自信たっぷりに言ったカミルに私は現実というものを突きつけてみることした。さてさてどんな反応をしてくれるかな?
「ちなみに私と同じ人間で一番早い記録が……50秒ぐらいだったかな。」
「な……なん……じゃと?」
私の言葉に思わずカミルは固まってしまう。あまりにも速いその記録に開いた口が塞がらないといった様子だ。ちなみに凹凸があるペットボトルとかでやるとやりやすいらしいな。
「ぐっ……ぐぬぬ……ぐぬぬぬぬ……く、悔しいのじゃ~。」
「結構速いだろ?」
「に、人間にできて妾にできないわけがないのじゃ!!ミノルッもう一度妾にそれを貸すのじゃっ!!」
「今日はこのぐらいバターがあれば足りるからまた今度な?無駄に作りすぎても使いきれない。」
「ぐぬぬぬぬ……煮え切らんのじゃぁ~!!悔しいのじゃぁ~!!次はぜっっったいに一瞬で作ってみせるのじゃっ!!」
と、カミルは次回へのリベンジを誓う。カミルがちょっと本気を出したら本当に50秒を超えてきそうだから怖いな。力を籠めすぎて瓶を割ったりしないだろうか?カミルの力ならやりかねないな。
さて、バターができたのなら早めに次に移るとしよう。悔しがるカミルを見て苦笑いを浮かべながらも私は次の作業に移ることにした。
「バターが柔らかいうちに蜂蜜と混ぜ合わせないとな。」
出来立ての柔らかい状態のバターと蜂蜜を良く練り、そこに振るった小麦粉を入れる。そして更に良く混ぜ合わせた後、棒状に整形する。
「あとはこれを冷蔵庫で冷やして……生地が落ち着くのを待つ。」
その間にカミルが食べ終わった後の皿とか、使った器具の後片付けをしておこう。
カチャカチャと皿洗いをしていると、私の足首をツンツンとつつく感触があった。足元へと目を向けると、そこには口元を牛乳まみれにしたコカトリスの雛がいた。
「ピィッ!!」
「口元が牛乳だらけじゃないか。ちょっと動くなよ……。」
洗い物をしていた手を止め、私は屈み綺麗な布で雛の口元をぬぐう。
「これで良し……。」
「……まるで母親のようじゃなミノル。」
そんな私の姿を見たカミルがポツリとつぶやいた。
「まぁ、傍から見たらそうかもな。」
「傍から見てもそうじゃが……実際こいつもお主のことを母親と思っておるのではないか?いくら雛とはいえ、魔物がここまで他の生き物に懐くことはないはずなのじゃ。」
……これも聞いた話だが、産まれたばかりの雛は最初に見たある程度の大きさの物体と、音を発する物を親と認識することがあるらしい。
「ピッ!!」
「むっ!?な、何じゃ!?」
昔聞いた話を思い出していると、コカトリスの雛が今度はカミルの足にすり寄りに行った。突然の行動にカミルは慌てている。
「ふっ、カミルのことも親だと思っているんじゃないか?」
「なっ……なんじゃと~?……じゃがそうでもなければ妾のような存在にここまで寄ってくるはずないか。」
「まっ、カミルも石にされたくなかったら少しでもこの子に愛情を注ぐんだな。」
「むぅ、仕方がないか。石になるのはごめんじゃからのぉ~。」
やれやれと言った様子でカミルはコカトリスの雛を両手で持ち上げた。そしてその瞳をじっと見つめながら言った。
「良いか?妾がお前の親じゃ。しかとその眼に焼き付けておくのじゃぞ?間違っても石化の魔眼なんぞ使うでないぞ?」
「ピィー?」
何を言われているのかわからないようで、コカトリスの雛は首をかしげているが……カミルに話しかけられてなんだか嬉しそうだ。小さな羽をパタパタと動かして全身で嬉しさを表現している。
「む、むぅ?な、なぜこ奴は喜んでおるのじゃ?」
「カミルに話しかけられてうれしいんじゃないのか?」
「そ、そうか……うむ、なんじゃよくわからんが急にこ奴が可愛く見えてきたのじゃ。」
どうやらコカトリスの雛の純粋さがカミルの母性本能を刺激してしまったらしい。急に可愛く見えてきてしまったようだ。
「こ奴の世話は妾がするのじゃ~。ミノルは外にいるあの牛を世話するのじゃろ?」
「ん、まぁそうだな。だが一人で大丈夫か?」
「妾に任せておけば何も問題ないのじゃ~。くっふっふ……最強のコカトリスに育ててやるのじゃ~。」
う~ん、何か主旨が変わっている気がするがまぁいいか。カミルが自分で世話をするというのならやらせてあげればいい。
「それじゃあその子のことは任せたぞ?」
「うむ、妾に任せるのじゃ~!!」
思わぬ事態が良い方向に転がったな。これからは賑やかになりそうだ。
雛と戯れるカミルを見て、これからまた一段と生活が賑やかになることを確信したのだった。
本当は卵黄も使いたかったが……予想外の事態があって使えなくなってしまったからな。蜂蜜の計量をしながらチラリとコカトリスの雛の方を見てみると、もうすでに注いだ牛乳が半分以上なくなってしまっている。すごい飲みっぷりだ。
そのまま視線をカミルの方に向けると……。
「できたのじゃ~!!」
歓喜の声とともにカミルは固形物が入った瓶を天に掲げていた。そしてすぐさま私の方に駆け寄ってくる。
「ミノルッ!!できたのじゃ!!これでよいのじゃろ?」
「あぁ、完璧だ。ありがとなカミル。」
「ふっふっふ~……妾にかかればこんなものじゃ~。」
エッヘンと、ない胸を大きく張りカミルは威張る。そんなカミルに私は以前聞いた話を少し話してあげることにした。
「そういえば……私がいた世界でそうやってバターを作る世界記録があったな。」
「ほぉ~?きっと妾のほうが速いに決まってるのじゃ~。」
自信たっぷりに言ったカミルに私は現実というものを突きつけてみることした。さてさてどんな反応をしてくれるかな?
「ちなみに私と同じ人間で一番早い記録が……50秒ぐらいだったかな。」
「な……なん……じゃと?」
私の言葉に思わずカミルは固まってしまう。あまりにも速いその記録に開いた口が塞がらないといった様子だ。ちなみに凹凸があるペットボトルとかでやるとやりやすいらしいな。
「ぐっ……ぐぬぬ……ぐぬぬぬぬ……く、悔しいのじゃ~。」
「結構速いだろ?」
「に、人間にできて妾にできないわけがないのじゃ!!ミノルッもう一度妾にそれを貸すのじゃっ!!」
「今日はこのぐらいバターがあれば足りるからまた今度な?無駄に作りすぎても使いきれない。」
「ぐぬぬぬぬ……煮え切らんのじゃぁ~!!悔しいのじゃぁ~!!次はぜっっったいに一瞬で作ってみせるのじゃっ!!」
と、カミルは次回へのリベンジを誓う。カミルがちょっと本気を出したら本当に50秒を超えてきそうだから怖いな。力を籠めすぎて瓶を割ったりしないだろうか?カミルの力ならやりかねないな。
さて、バターができたのなら早めに次に移るとしよう。悔しがるカミルを見て苦笑いを浮かべながらも私は次の作業に移ることにした。
「バターが柔らかいうちに蜂蜜と混ぜ合わせないとな。」
出来立ての柔らかい状態のバターと蜂蜜を良く練り、そこに振るった小麦粉を入れる。そして更に良く混ぜ合わせた後、棒状に整形する。
「あとはこれを冷蔵庫で冷やして……生地が落ち着くのを待つ。」
その間にカミルが食べ終わった後の皿とか、使った器具の後片付けをしておこう。
カチャカチャと皿洗いをしていると、私の足首をツンツンとつつく感触があった。足元へと目を向けると、そこには口元を牛乳まみれにしたコカトリスの雛がいた。
「ピィッ!!」
「口元が牛乳だらけじゃないか。ちょっと動くなよ……。」
洗い物をしていた手を止め、私は屈み綺麗な布で雛の口元をぬぐう。
「これで良し……。」
「……まるで母親のようじゃなミノル。」
そんな私の姿を見たカミルがポツリとつぶやいた。
「まぁ、傍から見たらそうかもな。」
「傍から見てもそうじゃが……実際こいつもお主のことを母親と思っておるのではないか?いくら雛とはいえ、魔物がここまで他の生き物に懐くことはないはずなのじゃ。」
……これも聞いた話だが、産まれたばかりの雛は最初に見たある程度の大きさの物体と、音を発する物を親と認識することがあるらしい。
「ピッ!!」
「むっ!?な、何じゃ!?」
昔聞いた話を思い出していると、コカトリスの雛が今度はカミルの足にすり寄りに行った。突然の行動にカミルは慌てている。
「ふっ、カミルのことも親だと思っているんじゃないか?」
「なっ……なんじゃと~?……じゃがそうでもなければ妾のような存在にここまで寄ってくるはずないか。」
「まっ、カミルも石にされたくなかったら少しでもこの子に愛情を注ぐんだな。」
「むぅ、仕方がないか。石になるのはごめんじゃからのぉ~。」
やれやれと言った様子でカミルはコカトリスの雛を両手で持ち上げた。そしてその瞳をじっと見つめながら言った。
「良いか?妾がお前の親じゃ。しかとその眼に焼き付けておくのじゃぞ?間違っても石化の魔眼なんぞ使うでないぞ?」
「ピィー?」
何を言われているのかわからないようで、コカトリスの雛は首をかしげているが……カミルに話しかけられてなんだか嬉しそうだ。小さな羽をパタパタと動かして全身で嬉しさを表現している。
「む、むぅ?な、なぜこ奴は喜んでおるのじゃ?」
「カミルに話しかけられてうれしいんじゃないのか?」
「そ、そうか……うむ、なんじゃよくわからんが急にこ奴が可愛く見えてきたのじゃ。」
どうやらコカトリスの雛の純粋さがカミルの母性本能を刺激してしまったらしい。急に可愛く見えてきてしまったようだ。
「こ奴の世話は妾がするのじゃ~。ミノルは外にいるあの牛を世話するのじゃろ?」
「ん、まぁそうだな。だが一人で大丈夫か?」
「妾に任せておけば何も問題ないのじゃ~。くっふっふ……最強のコカトリスに育ててやるのじゃ~。」
う~ん、何か主旨が変わっている気がするがまぁいいか。カミルが自分で世話をするというのならやらせてあげればいい。
「それじゃあその子のことは任せたぞ?」
「うむ、妾に任せるのじゃ~!!」
思わぬ事態が良い方向に転がったな。これからは賑やかになりそうだ。
雛と戯れるカミルを見て、これからまた一段と生活が賑やかになることを確信したのだった。
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