上 下
224 / 249
第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第222話 因縁の再会

しおりを挟む

 上空から二人の天使が地上にいる東雲を見下ろしていた。

「おやおやおやおやおや~?序奏を聴いてもぴんぴんしてる人がいますねぇ~。」

 わざとらしく目を細めながらラグエルは東雲のことを見つめた。その隣で並んで立つミカエルも口を開いた。

「どうやら堕天したルシファーが彼らに手を貸しているようですからねぇ。ある程度ラグエルの神器の対処法も心得ているのでは?」

「あぁ、あぁなるほど~つまり、もっとラグエルの演奏を聴きたいということですねぇ~?うぇへへへへ、それじゃあアンコールにこ答えるとしましょ~。」

 そしてラグエルが再びラッパを口元に近づけようとしたときだった。

「おい貴様……。」

「おやぁ?なんでしょうかぁ~?」

 東雲はラグエルのことを指さして言った。

「過去に一度貴様はこの世界に来て大量に妾の同族を殺したな。それを覚えているか?」

「う~ん?確かにラグエルは一度この薄汚い世界に来ましたけれどぉ~、その時は数えきれないほど殺しましたからねぇ~。いちいち顔なんて覚えてませんよぉ~。あなただって踏みつぶした蟻の数なんて覚えてないでしょ~?」

「貴様からすれば妾たちは地面を這う蟻と同じというわけか。くくく、くくくくく……。」

 ラグエルの言葉に怒ることはなく東雲はくつくつと笑い始めた。そんな彼女の様子を見てラグエルは首をかしげる。

「おやおやぁ?気でも狂いましたかぁ?」

「つくづく貴様は外道で助かる。純粋な怒りの原動力になるからな。」

 そして東雲は一度目を閉じると、再びカッと目を見開いた。すると彼女の瞳に真っ赤な炎が宿る。憤怒の炎だ。

 赤い炎を瞳に宿した東雲を見たラグエルは興味深そうに呟く。

「その赤い炎は七大欲求の一つ、憤怒の炎ですねぇ~。罪深い、罪深いですよぉ~?そんなあなたには残酷な鎮魂歌レクイエムを送りましょ~。」

「ふん、その鎮魂歌は自分に捧げるのだなっ。」

 そう口にすると東雲は陽炎のようにゆらりと姿を消すと、突然ラグエルの目の前に姿を現した。

「妾の一族の仇とらせてもらうぞ。クソ天使。」

 東雲がラグエルへと向かって手をかざすと、真っ赤な魔法陣が彼女の前に現れる。そこから炎をまとった深紅色の槍がラグエルへと向かって放たれた。

憤怒の真槍グングニル。」

 業火を纏ったそれをラグエルは身をひらりと翻して躱した。そしてラグエルとミカエルの二人の間を憤怒の真槍グングニルが通り過ぎていく。

「危ない危ない、あれを喰らえばひとたまりもありませんでしたねぇ~。まぁ当たってやりませんけどねぇ?」

「今のはあいさつ代わりだ。あの程度でくたばられてはこっちが困る。」

「ふふふふっ、ラグエル私も手を貸しましょうか~?」

「問題なぁ~し、今回の主役はこのラグエルですからねぇ~。」

「そうですかっ、それじゃあ私は邪魔が入らないように動いてますよ。」

 そしてミカエルが視線を向けた先にはちょうど白の赤から出てクルルシファーの姿が映っていた。彼女自身も自分を見下ろしているミカエルに気が付いたのかニヤリと口元をゆがめた。

「ふふふふふふふっ、やっとですね。」

 ミカエルはルシファーのもとへとゆっくりと降りていく。そしてルシファーの前に立つとぺこりとお辞儀した。

「お待たせしましたお姉さま。」

「ミカエル、まだ敵を装うのです。ラグエルに怪しまれては困りますから。」

「あ、す、すみませんお姉さま。ついつい浮かれてしまいました。」

「フフフフ、その無邪気なところは昔から変わらずですね。さぁ、少し踊りましょうかミカエル?」

「はいっ!!お姉さま!!」

 ルシファーは自分の神器である明星を取り出して剣の形にすると、それに応えるようにミカエルは長い杖の先に天秤が付いた神器を取り出した。

「ほぅ、それがあなたの神器ですか。」

「はい、という神器です。」

「面白い神器を授けてもらいましたね。どんな性能なのか今から披露してもらいましょうか。」

「もちろんです!!」

 すると、二人は上空に飛び上がりまるで打ち合わせでもしていたかのようにお互いに戦う演技を始めた。息の合っている演技ゆえに傍から見れば白熱した戦いにも見える。

 そして二人が戦い始めたことをラグエルは横目で確認すると、東雲のほうに向きなおった。

「さぁそろそろコンサートを始めますよぉ~?しっかり聴いて逝ってくださ~い。うぇへへへへ♪」

「そんな耳障りな音なんぞ聴く気にならん。とっとと片を付けてやる。」

 パン!!と東雲は両手を合わせるとラグエルと彼女を囲むように薄紅色の結界が張られる。

「これでお互いにこの空間から出ることはできん。」

「わざわざ自分から逃げ道をふさぐとか無謀じゃないですかねぇ~?まったく何を考えているのかわかりませんよ。」

「くくく……妾が考えているのはただ一つ、貴様を殺すことだっ!!」

 メラメラと憤怒の炎を全身に纏わせた東雲はラグエルへと向かってとびかかっていく。

 自分を殺し、彼女の一族をも皆殺しにした因縁の相手との戦いの火蓋が今……切り落とされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

処理中です...