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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第222話 因縁の再会
しおりを挟む上空から二人の天使が地上にいる東雲を見下ろしていた。
「おやおやおやおやおや~?序奏を聴いてもぴんぴんしてる人がいますねぇ~。」
わざとらしく目を細めながらラグエルは東雲のことを見つめた。その隣で並んで立つミカエルも口を開いた。
「どうやら堕天したルシファーが彼らに手を貸しているようですからねぇ。ある程度ラグエルの神器の対処法も心得ているのでは?」
「あぁ、あぁなるほど~つまり、もっとラグエルの演奏を聴きたいということですねぇ~?うぇへへへへ、それじゃあアンコールにこ答えるとしましょ~。」
そしてラグエルが再びラッパを口元に近づけようとしたときだった。
「おい貴様……。」
「おやぁ?なんでしょうかぁ~?」
東雲はラグエルのことを指さして言った。
「過去に一度貴様はこの世界に来て大量に妾の同族を殺したな。それを覚えているか?」
「う~ん?確かにラグエルは一度この薄汚い世界に来ましたけれどぉ~、その時は数えきれないほど殺しましたからねぇ~。いちいち顔なんて覚えてませんよぉ~。あなただって踏みつぶした蟻の数なんて覚えてないでしょ~?」
「貴様からすれば妾たちは地面を這う蟻と同じというわけか。くくく、くくくくく……。」
ラグエルの言葉に怒ることはなく東雲はくつくつと笑い始めた。そんな彼女の様子を見てラグエルは首をかしげる。
「おやおやぁ?気でも狂いましたかぁ?」
「つくづく貴様は外道で助かる。純粋な怒りの原動力になるからな。」
そして東雲は一度目を閉じると、再びカッと目を見開いた。すると彼女の瞳に真っ赤な炎が宿る。憤怒の炎だ。
赤い炎を瞳に宿した東雲を見たラグエルは興味深そうに呟く。
「その赤い炎は七大欲求の一つ、憤怒の炎ですねぇ~。罪深い、罪深いですよぉ~?そんなあなたには残酷な鎮魂歌を送りましょ~。」
「ふん、その鎮魂歌は自分に捧げるのだなっ。」
そう口にすると東雲は陽炎のようにゆらりと姿を消すと、突然ラグエルの目の前に姿を現した。
「妾の一族の仇とらせてもらうぞ。クソ天使。」
東雲がラグエルへと向かって手をかざすと、真っ赤な魔法陣が彼女の前に現れる。そこから炎をまとった深紅色の槍がラグエルへと向かって放たれた。
「憤怒の真槍。」
業火を纏ったそれをラグエルは身をひらりと翻して躱した。そしてラグエルとミカエルの二人の間を憤怒の真槍が通り過ぎていく。
「危ない危ない、あれを喰らえばひとたまりもありませんでしたねぇ~。まぁ当たってやりませんけどねぇ?」
「今のはあいさつ代わりだ。あの程度でくたばられてはこっちが困る。」
「ふふふふっ、ラグエル私も手を貸しましょうか~?」
「問題なぁ~し、今回の主役はこのラグエルですからねぇ~。」
「そうですかっ、それじゃあ私は邪魔が入らないように動いてますよ。」
そしてミカエルが視線を向けた先にはちょうど白の赤から出てクルルシファーの姿が映っていた。彼女自身も自分を見下ろしているミカエルに気が付いたのかニヤリと口元をゆがめた。
「ふふふふふふふっ、やっとですね。」
ミカエルはルシファーのもとへとゆっくりと降りていく。そしてルシファーの前に立つとぺこりとお辞儀した。
「お待たせしましたお姉さま。」
「ミカエル、今はまだ敵を装うのです。ラグエルに怪しまれては困りますから。」
「あ、す、すみませんお姉さま。ついつい浮かれてしまいました。」
「フフフフ、その無邪気なところは昔から変わらずですね。さぁ、少し踊りましょうかミカエル?」
「はいっ!!お姉さま!!」
ルシファーは自分の神器である明星を取り出して剣の形にすると、それに応えるようにミカエルは長い杖の先に天秤が付いた神器を取り出した。
「ほぅ、それがあなたの神器ですか。」
「はい、万象の天秤という神器です。」
「面白い神器を授けてもらいましたね。どんな性能なのか今から披露してもらいましょうか。」
「もちろんです!!」
すると、二人は上空に飛び上がりまるで打ち合わせでもしていたかのようにお互いに戦う演技を始めた。息の合っている演技ゆえに傍から見れば白熱した戦いにも見える。
そして二人が戦い始めたことをラグエルは横目で確認すると、東雲のほうに向きなおった。
「さぁそろそろコンサートを始めますよぉ~?しっかり聴いて逝ってくださ~い。うぇへへへへ♪」
「そんな耳障りな音なんぞ聴く気にならん。とっとと片を付けてやる。」
パン!!と東雲は両手を合わせるとラグエルと彼女を囲むように薄紅色の結界が張られる。
「これでお互いにこの空間から出ることはできん。」
「わざわざ自分から逃げ道をふさぐとか無謀じゃないですかねぇ~?まったく何を考えているのかわかりませんよ。」
「くくく……妾が考えているのはただ一つ、貴様を殺すことだっ!!」
メラメラと憤怒の炎を全身に纏わせた東雲はラグエルへと向かってとびかかっていく。
自分を殺し、彼女の一族をも皆殺しにした因縁の相手との戦いの火蓋が今……切り落とされた。
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