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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第174話 裏切り者と反逆者

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 ルアたちが七大天使に対して切磋琢磨している最中、天界ではレトがある準備を始めていた。黒いドレスに身を包んだ彼女は黒いオーラを溢れさせると、そのオーラはだんだん人の姿を象り始め、レトの目の前に黒い翼を生やした女性が一人姿を現した。

「お久しぶりでございますレト様。」

「えぇ、久しぶりねルシファー。」

 レトは自分の前で跪く黒い翼を持った女性をルシファーと呼んだ。

「私が呼び出されたということは……いよいよ、愚かな神どもに鉄槌を下す時が来たのですか?」

「いいえ、まだその時ではないわ。」

「ではなぜ私を?」

「私は少しの間ここを離れるわ。だから私の代わりに攻めてくる天使たちを相手してほしいの。」

「天使の相手ですか……。」

 レトの願いにルシファーは少し面倒くさそうな表情を浮かべた。

「下級な天使ども程度であればこの天界と地上の結界を破ることは不可能では?」

「下級な天使なら……ね。今は少し状況が違うのよ。」

「状況が違う?それはどういうことでしょうか?」

「いよいよあっちは七大天使を動かしてきそうなのよ。」

「七大天使……。」

 七大天使という言葉にルシファーは表情を変えた。

「ずいぶん懐かしい名前ですね、憎たらしい顔を何人か思い出しました。あいつらが動くのであれば話は別です。あの時の復讐を果たすいい機会です……。このルシファー、命に従います。」

「助かるわルシファー。」

「それで……ここに来た天使どもは皆殺しにしても良いのですね?もちろん七大天使のやつらも。」

「構わないわ。」

「フフフフ…………アッハハハハハハハ!!楽しくなってきました。」

 レトから許可をもらうと、ルシファーはさぞかし楽しそうに……狂ったように笑い始めた。そして興奮した彼女の背中から新たに四対の黒い翼が生えてきた。総計六対の翼……禍々しさがさらに増す。
 しばらく笑った後、正気に戻った彼女はレトにあることを問いかけた。

「そういえばレト様はどちらへ?」

「ちょっとバカ息子に説教をしにね。」

「レト様のご子息ですか……アポロン様ですね?」

「そっ、あんのバカ……あのメンヘラ女神に寝返ったからね。」

「メンヘラ女神、あぁ!!レト様を目の敵にしているあの……。」

「あぁ、名前は言わなくていいわよ。聞くだけで鳥肌が立ちそうだから。」

 ルシファーがレトが嫌っている女神の名前を口に出そうとすると、彼女は嫌そうにそう言った。

「それじゃあ行ってくるから、ここは任せたわよ。」

「承りました。」

 ぺこりとルシファーがお辞儀をしたのを見てレトは天界から姿を消した。
 そして一人になったルシファーはポツリと呟く。

「七大天使…………フフフフ、懐かしい。私もそんな名で呼ばれていたときがありました。」

 ルシファーはハイヒールをカツカツと鳴らしながら、天界を歩き回る。すると、不意にピタリとその歩みを止めた。

「そういえば、私の後釜はどうなったのでしょう?ラファエル、ガブリエル、ウリエル、イオフィエル、ザドキエル…………。あぁ、イオフィエルとザドキエルは私が消したんでしたね。となれば、私を含めて変わったのは三人ですか。」

 ルシファーがそう独り言を呟いていると、彼女一人しかいなかった天界に続々と天使達が姿を現した。

「おや?」

「貴様は何者だ?裏切り者のレトはどこだ!!」

 ルシファーを取り囲むように現れた天使の中の一人が彼女に問いかける。

「おやおやおやおや?私を知らない?……フフフ、どうやら変わったのは上の天使達だけではないようですね。」

 ルシファーはクスリと笑うと、黒く染まった六対の翼を大きく広げた。

「その黒い翼……堕天した者か!!天使の恥晒しめ……。貴様も元天使ならば知っているだろう、我々は堕ちた者の処理も使命だとなぁッ!!」

 光の槍を手にした天使はルシファーへと向かって矛先を突きつける。そして矛先がルシファーの喉元へと突き刺さろうとしたその時……黒い羽だけを残して天使達の目の前から彼女の姿が消えた。

「なっ!?」

 突然ルシファーが消えたことに驚く天使達。そして今しがたルシファーへと攻撃をしかけた天使の背後に彼女は音もなく姿を現し、天使の耳元で囁く。

「フフフ、もちろんわかっていますよ。でも、そんなに焦らなくても良いでしょう?私はあなた達にいくつか質問があるんです。私を処理するのはそれに答えた後でも良いのでは?」

「きっ……貴様ッ!!」

 背後に立つルシファーへと槍を向けようとする天使だったが、天使の意思に反して体はまるで石になってしまったかのように動かない。

「な、う、動けな…………。」

「それでもお話を聞くのは一人いれば十分ですね。あなた以外は……殺しましょう♪」

 にこやかに笑いながらそう言い放ったルシファーは手を天に掲げて指をならす。すると、音を鳴らした人差し指の先に丸い光の塊ができた。

「き、貴様何を……っ!!」

「フフフ、あなた達はを見たことがありますか?あるわけないですよね?……これがです。最後にしっかり目に焼き付けてくださいね♪」

 そしてルシファーが指先にできた光の球体を掌で包み込むと、彼女の掌から眩い光が溢れだし、天使達を包み込んだ。

 眩い光がおさまり、ルシファーに拘束されていた天使が目を開けると、先ほどまでルシファーを取り囲んでいた天使達は自分以外いなくなっていることに気が付いた。
 しかし、その代わりに先ほどまで天使がいた場所には、ほわほわと光の粒子が浮いていた。

 ルシファーはその粒子を体に取り込むと、愕然とする取り残された天使に話しかけた。

「さぁ、邪魔者はいなくなりました。これでゆっくりお話ができますね。」

 そう微笑みかけたルシファーの笑顔は慈愛と狂気が入り交じった不気味なものだった。
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