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第二章 呪われた運命

第157話 動き出す天使達

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 ふわりと優しく風が体を突き抜けていく感触でルアは目を覚ました。

「んっ……。」

 目を開けるとルアの目に、上から見下ろすリリィの顔が映る。今のルアはリリィに膝枕をされているようだ。

「ルアおはよ。」

「あ、あれ……ボク寝ちゃってたの?」

 どうやらルアは自分でも気が付かないうちに眠っていたようだ。

「うん。寝顔……可愛かった……よ?」

「あぅ……それはそれで恥ずかしいよ。」

 少し顔を赤くするルアに、リリィはクスリと笑う。そしてリリィの太ももから体を起こしたルアは、体の変化を感じた。

「あれ?なんか……体が軽い?」

 眠る前と眠った後では体の調子がまるで違ったのだ。

「ふふ……ここの花の香りのおかげ。」

「花の?」

「うん。花の香りは疲れを癒す効果がある。」

「へぇ~凄いよ!!全然違うもん。凄い体が軽いよ!!」

「よかった。」

 喜ぶルアの姿を見てリリィは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあそろそろ帰る。日が暮れそう。」

「うん、そうだね。」

 ルア達を照らしていた太陽はいつの間にか橙色に染まり、夕暮れを現していた。

「リリィ、またここに連れてきてくれる?」

「……!!ルアは……来たい?」

「うん!!」

「ならまた一緒に来る。」

 少し顔を赤くしながらリリィは移動魔法を使い、ロレットの城へと二人は戻るのだった。











 ルア達がそんな日常を過ごしている裏側で……不穏の影はゆっくりと伸び始めていた。

「今回も失敗……。やっぱり並の天使じゃ話にならないか。」

 黒いドレスを身に纏ったルアが天使達を倒していく様子が映し出された大きな鏡を眺めて、金色の髪を太ももまで伸ばしている女性がポツリと呟いた。

 そしておもむろに彼女が鏡に手を伸ばすと、鏡にビキビキと音をたてて亀裂が入り、ガラスが粉々に砕け散った。

「憎たらしい……あの黒いドレス。あの女のっ……。」

 砕けたガラスが握りこんだ手に突き刺さり、ポタポタと白い床に彼女の鮮血が滴り落ちる。

 そんな時、彼女の後ろにボロボロの天使が現れる。ルアのことを拘束していたあの天使だ。

「ゴホッ……ご、ご報告致します。私以外の天使は消滅しました。」

「……よく生きて帰ってこれたじゃない。」

「お誉めに預り光栄です……っぐぅっ!?」

 クルリと振り返った金髪の女性は、背後で跪いていた天使の首を掴んだ。

「皮肉で言ってるのよこの愚図。」

 表情に怒りを宿し、彼女は天使の首を強く締めた。

「くぁあっ……も、申し訳……ございません。」

「……まぁいいでしょう。」

 苦しみもがく天使の姿を見て、少しスッキリしたような表情になった彼女は、パッと手を離す。

「ゴホッゴホッ!!」

「それで?あの女の息子…………えっと名前は何て言ったかしら?アポ……アポ?」

「あ、アポロンですね。」

「あぁ!!そう、アポロン……。あれは協力してくれたの?」

「はい、こちらに協力的です。」

「ふふふふっ♪そう……そうなのね。自分の子供に裏切られ、殺される。その時あの女はどんな表情を浮かべるのかしら?楽しみだわ。」

「~~~ッ!!」

 歪んだ感情の金髪の女性から放たれた異様なオーラに、思わず天使は背筋が凍る。

「あぁ、あなたはもう下がってもいいわよ?聞きたいことは聞いたわ。」

「はっ……失礼します。」

 そして天使が立ち上がり、立ち去ろうとしたその時だった。

「えぁっ?」

 突然天使の首と体が別れ、首を失った天使の体は崩れ落ち、首は床に転がった。

「役立たずは要らないの。ただの天使はもう要らない……あなたは他の天使の養分になりなさい。」

「そん…………な………………ぁ。」

 そして天使は光の粒子に変わり、金色の髪の女性の近くに立っていた、ある天使の体に吸収されていく。

「ガブリエル、次はあなたに任せるわ。」

「はっ……お任せください。必ずや、あの♂を連れて参りましょう。」

 ガブリエルと呼ばれた緑髪の天使は、ペコリと頭を下げた。

「七大天使の名に懸けて……使命を全うします。」

 跪いたガブリエルは翡翠色の瞳をキラリと光らせ、他の天使とは比べ物にならないほど大きな翼を広げるのだった。
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