53 / 249
第一章 転生そして成長
第51話 狐につままれたのは②
しおりを挟む
由良の頬っぺたをぷにぷにとつつきながら、くつくつと笑う東雲の姿を見てロレットが狼狽えながら言った。
「た、確かに我はこの手に切った感触があった……なのにどうやって……。」
「不可思議か?コレットの孫よ。」
「っ!?」
突然後ろから聞こえた声に、ロレットが振り返るとそこには東雲の姿があった。
「なっ、これはいったい……」
ロレットは由良の方にも目を向けるが、由良の元には依然として彼女のことをからかい続ける東雲の姿があった。
「ふ、二人っ……だと!?」
「二人どころではないぞ?」
慌てるロレットの後ろから更に増えた東雲が肩を叩く。
「なっ……なっ………。」
思わずロレットが後退りをすると、ドン……と何かに背中がぶつかった。
「くくくくく…………。ほれ、こっちにも…………。」
「こっちにもおるぞ?」
「くくくくく………くくくくく♪」
「こ、これは…………。」
気が付けば、ロレットの周りを大量に増えた東雲が埋め尽くしていた。
くつくつという笑い声が全方位から聞こえる最中、由良の声が響いた。
「解ッ!!」
「っ!?」
その声が聞こえた瞬間にロレットの背中に衝撃が走り、一瞬視界がぐわんと歪む。すると、周りを埋め尽くしていた東雲の姿がゆっくりと掻き消えていった。
そしてロレットの眼前には、たった一人……相も変わらずくつくつと笑う東雲だけが残っていた。
全身から冷や汗を流していたロレットの背中を由良が強く叩いた。
「まったく、しゃんとするのじゃ。」
「わ、我は……何を見ていたのだ?」
「お主はたった今まで幻覚を見せられておったのじゃ。」
「幻覚……か。いったいいつから……。」
先ほどまでのことを思い返すが、自分が幻覚に陥った瞬間がわからずにいるロレット。そんな彼女に答えを授けるように東雲が言った。
「いつからもなにも、最初からだ。」
「最初からだと!?」
「そこの木に向かって、その剣を振り下ろしていた様はとても愉快だったぞ?くくくくく……。」
東雲が指差した方角を見てみると、一本の木が真っ二つに切り裂かれていた。
それを見たロレットは恥ずかしさからか、顔が少し赤く染まる。
「だが、まぁ…………由良よ。良く妾の幻術を看破し打ち破ったな。」
「最初はまんまと踊らされてしまいましたがの。」
どうやら由良も東雲に幻覚を見せられていたらしい。しかし、何とか自力で抜け出し、ロレットのことも救ったようだ。
「そう謙遜するな、妾の幻術を脱け出せる者はそう多くはない。」
そう素直に東雲は由良のことを称賛する。一方ロレットはまんまと踊らされてしまったことに、少し落ち込んでいるようだ。
そんな彼女にも東雲は声をかけた。
「そっちのコレットの孫もそんなに落ち込むな。妾の好敵手だったコレットも最後まで妾の幻術を破ることはできなかったのだからな。」
「くっ……お婆様が破れなかったのなら……我が代わりに破るまでだっ!!」
「っ!!バカ、待つのじゃ!!」
地面を抉りながら踏み込み、一瞬でロレットは東雲との距離を詰める。そして剣を振り下ろしたのだが……再び視界がぐわんと歪んだ。
そして、剣は空を切り、周りから東雲の笑い声が聞こえてくる。
「くくくくく、さぁ大見得をきったが……どうやって破る?」
「こうやって……だっ!!」
ロレットは魔力を剣に纏わせ、体を捻りながら回転するように剣を凪ぎ払った。
「……ほぅ!!」
感心するような東雲の声を聞きながら、ロレットはある音を必死に耳で拾っていた。
(どこだ?……どこにいる…………。)
神経を尖らせ、耳を澄ませるロレット。すると、彼女の耳が僅かに草が揺れる音を感じ取った。
「っ!!そこだッ!!」
音のした方へと踏み込み、剣を振り下ろすと……
ガキンッ!!
……と硬い金属に当たったような、痺れるような感覚が剣を伝って伝わってくる。
それと同時に、ロレットの目の前に尻尾で攻撃から身を守った東雲の姿が飛び込んできた。
「フフフ……我も幻術とやらを破ったぞ?」
「潜在能力はコレット以上か。これだから、龍種は化け物ばかりで嫌になる。」
半ば強引に幻術をうちやぶったロレットに、ため息混じりに話ながらも、東雲は尻尾でロレットのことを弾き飛ばす。
「くっ……!!」
衝撃で由良の近くまで弾き飛ばされたロレット。そんな彼女に呆れながら由良は言った。
「相変わらずの強引さじゃの~。」
「方法や過程などどうでも良い。兎に角あれを突破できたことを褒めてほしいものだな。」
そんな軽口を言い合う二人を前に東雲はクスリと笑った表情を崩さないまま言った。
「まぁ、ひとまずは合格……といったところか。ほれ、次の手はそっちにくれてやる。どこからでもかかってこい。」
そう言うと、東雲は服の隙間から御札のようなものを取り出し、二人に向かって構えるのだった。
その表情は未だ崩れる様子はない。
「た、確かに我はこの手に切った感触があった……なのにどうやって……。」
「不可思議か?コレットの孫よ。」
「っ!?」
突然後ろから聞こえた声に、ロレットが振り返るとそこには東雲の姿があった。
「なっ、これはいったい……」
ロレットは由良の方にも目を向けるが、由良の元には依然として彼女のことをからかい続ける東雲の姿があった。
「ふ、二人っ……だと!?」
「二人どころではないぞ?」
慌てるロレットの後ろから更に増えた東雲が肩を叩く。
「なっ……なっ………。」
思わずロレットが後退りをすると、ドン……と何かに背中がぶつかった。
「くくくくく…………。ほれ、こっちにも…………。」
「こっちにもおるぞ?」
「くくくくく………くくくくく♪」
「こ、これは…………。」
気が付けば、ロレットの周りを大量に増えた東雲が埋め尽くしていた。
くつくつという笑い声が全方位から聞こえる最中、由良の声が響いた。
「解ッ!!」
「っ!?」
その声が聞こえた瞬間にロレットの背中に衝撃が走り、一瞬視界がぐわんと歪む。すると、周りを埋め尽くしていた東雲の姿がゆっくりと掻き消えていった。
そしてロレットの眼前には、たった一人……相も変わらずくつくつと笑う東雲だけが残っていた。
全身から冷や汗を流していたロレットの背中を由良が強く叩いた。
「まったく、しゃんとするのじゃ。」
「わ、我は……何を見ていたのだ?」
「お主はたった今まで幻覚を見せられておったのじゃ。」
「幻覚……か。いったいいつから……。」
先ほどまでのことを思い返すが、自分が幻覚に陥った瞬間がわからずにいるロレット。そんな彼女に答えを授けるように東雲が言った。
「いつからもなにも、最初からだ。」
「最初からだと!?」
「そこの木に向かって、その剣を振り下ろしていた様はとても愉快だったぞ?くくくくく……。」
東雲が指差した方角を見てみると、一本の木が真っ二つに切り裂かれていた。
それを見たロレットは恥ずかしさからか、顔が少し赤く染まる。
「だが、まぁ…………由良よ。良く妾の幻術を看破し打ち破ったな。」
「最初はまんまと踊らされてしまいましたがの。」
どうやら由良も東雲に幻覚を見せられていたらしい。しかし、何とか自力で抜け出し、ロレットのことも救ったようだ。
「そう謙遜するな、妾の幻術を脱け出せる者はそう多くはない。」
そう素直に東雲は由良のことを称賛する。一方ロレットはまんまと踊らされてしまったことに、少し落ち込んでいるようだ。
そんな彼女にも東雲は声をかけた。
「そっちのコレットの孫もそんなに落ち込むな。妾の好敵手だったコレットも最後まで妾の幻術を破ることはできなかったのだからな。」
「くっ……お婆様が破れなかったのなら……我が代わりに破るまでだっ!!」
「っ!!バカ、待つのじゃ!!」
地面を抉りながら踏み込み、一瞬でロレットは東雲との距離を詰める。そして剣を振り下ろしたのだが……再び視界がぐわんと歪んだ。
そして、剣は空を切り、周りから東雲の笑い声が聞こえてくる。
「くくくくく、さぁ大見得をきったが……どうやって破る?」
「こうやって……だっ!!」
ロレットは魔力を剣に纏わせ、体を捻りながら回転するように剣を凪ぎ払った。
「……ほぅ!!」
感心するような東雲の声を聞きながら、ロレットはある音を必死に耳で拾っていた。
(どこだ?……どこにいる…………。)
神経を尖らせ、耳を澄ませるロレット。すると、彼女の耳が僅かに草が揺れる音を感じ取った。
「っ!!そこだッ!!」
音のした方へと踏み込み、剣を振り下ろすと……
ガキンッ!!
……と硬い金属に当たったような、痺れるような感覚が剣を伝って伝わってくる。
それと同時に、ロレットの目の前に尻尾で攻撃から身を守った東雲の姿が飛び込んできた。
「フフフ……我も幻術とやらを破ったぞ?」
「潜在能力はコレット以上か。これだから、龍種は化け物ばかりで嫌になる。」
半ば強引に幻術をうちやぶったロレットに、ため息混じりに話ながらも、東雲は尻尾でロレットのことを弾き飛ばす。
「くっ……!!」
衝撃で由良の近くまで弾き飛ばされたロレット。そんな彼女に呆れながら由良は言った。
「相変わらずの強引さじゃの~。」
「方法や過程などどうでも良い。兎に角あれを突破できたことを褒めてほしいものだな。」
そんな軽口を言い合う二人を前に東雲はクスリと笑った表情を崩さないまま言った。
「まぁ、ひとまずは合格……といったところか。ほれ、次の手はそっちにくれてやる。どこからでもかかってこい。」
そう言うと、東雲は服の隙間から御札のようなものを取り出し、二人に向かって構えるのだった。
その表情は未だ崩れる様子はない。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる