上 下
349 / 350
第10章 三つ巴

第350話 初の依頼は異常に終わる

しおりを挟む

 クリスタたちと別れた後、ギルドへと向かった俺たちはナナシのハンター登録の手続きをリルに進めてもらっていた。

「いや~それにしても今年はすごいね。ハンターギルドができてから類を見ないほど強い人たちがどんどん来るや。」

 苦笑いを浮かべながら書類を作るリル。

「えっと、ナナシちゃんだよね?」

「くくく、ナナシか。そんな呼ばれ方をしたのは初めてだ。」

「あはは、ダメだったかな?とかのがいい?」

「いや、構わんさ。それでいい。そういう呼ばれ方も新鮮だ。」

「うんうん、それじゃあナナシちゃん。これからランクを決めるんだけど、どこから始めたい?」

「それは我が決めてもよいものなのか?」

 リルのそんな問いかけに思わず疑問を抱くナナシ。

「そもそもキミ達はこのギルドの基準じゃあ測れない実力の持ち主っぽいからね。こっちで決めるほうが野暮ってものだよ。ちなみにラピスちゃんとか魔王様たちは今もうダイヤモンドランクになってるよ。」

「え!?アルマ様たちもうダイヤモンドになったんですか?」

「うん。だいぶもう依頼もこなしてもらってるからね。」

「俺よりももう上にいってるんですね。」

 アルマ様たちがすでに俺よりも上に行ってしまっている事実に驚いていると、ナナシが俺のほうを向いて確認を取ってきた。

「主はまだそのダイヤモンドとやらにはなっていないのか?」

「俺はまだゴールドだな。」

「ふむ、では我もそのゴールドでよい。特段そういう称号にこだわっているわけではないからな。」

「それならゴールドで登録しちゃうけど、いいのかな?」

「うむ、構わん。」

 そしてナナシは俺と同じゴールドでハンター登録されることとなった。金ぴかの証明書を受け取ったナナシは早速リルに依頼についての話を持ち掛ける。

「して、今我が受けられる依頼はあるのか?」

「あるよあるよ~、ナナシちゃんの強さを見極めるって意味でもめちゃめちゃ良いのがね。」

 そう言ってリルは待ってましたと言わんばかりに一枚の依頼書をナナシに手渡した。その内容は……。

「ふん?クラーケンか。」

「そ、実は近くの海に出没してきたみたいでね~。漁師の人たちが海に出れなくて困ってるんだ。」

「なるほどな。これは今すぐ倒したほうがよさそうだ。」

 ニヤリとナナシは笑うとおもむろに手のひらを広げ、ギュッと握りしめた。そしてもう片方の手で指をパチンと弾くとギルドの床に巨大な魔法陣が現れる。

「へ?」

 素っ頓狂な声を上げてリルが首をかしげたと同時に魔法陣が光を発し、そこから丸焼きにされた香ばしい香りを放つ巨大なイカが姿を現したのだ。

「こいつでよいのだろう?」

「えぇ~……嘘でしょ。」

 呆然としながらリルはその現れた巨大なイカに近づくと、一つ頷いた。

「間違いなくクラーケンだけど、どうやったのこれ?」

「簡単な話だ。この周辺にいるこいつの気配を探り、遠距離から魔法で攻撃しただけのこと。久しぶりだった故少々火力を間違えたが……倒したことに変わりはあるまい。」

「簡単に言うけど、それヤバいことやってるからね?」

 半ば呆れながらリルが丸焼きにされたクラーケンを眺めていると、それにおもむろにナナシが近づきがぶりと食らいついた。

「んっ、味はまぁまぁだな。主の記憶にあった料理に近いものだと思ったんだが。」

「それってまさかイカ焼きのこと言ってるのか?」

「それだ!!」

「あれはまたいろいろ味付けがあってだな……。」

「ではこのクラーケンもしっかりと味付けしてやれば美味くなるのか?」

「保証はできないけど多分美味しくなると思う。」

 その答えを聞くとナナシはリルにあることを問いかける。

「リルよ、この魔物の亡骸は倒した証明に使うだけだろう?」

「え?まぁそうだね。一応素材とか売れるけど。」

「そんな金はいらん、報酬金で十分だ。今はこの好奇心を満たす方が先だ。」

 最早クラーケンのことを食材としか見ていないナナシは、触手をおもむろに鷲掴みにすると、ギルドの酒場の方へと運んでいく。

「主~、行くぞ~。」

「はいはい、わかりましたよ。」

 彼女の好奇心を満たすため、俺もその後に続き久しぶりに酒場の厨房へと足を運ぶのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】 「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」 ――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。 勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。 かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。 彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。 一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。 実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。 ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。 どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。 解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。 その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。 しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。 ――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな? こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。 そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。 さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。 やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。 一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。 (他サイトでも投稿中)

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...