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第10章 三つ巴
第346話 地龍との再会
しおりを挟む移動魔法で転移してきた先で俺はまた懐かしさを感じることになった。
「このとんでもなくでかい山……懐かしいなぁ。」
「我と主の出会った場所だな。こういうのを主の世界ではロマンチックというのだろう?」
ついてすぐに俺の体から出てきたナナシは感慨深そうにそう言った。
「なんもロマンチックじゃないだろ。」
「うむぅ、主はつれないな。」
少しつまらなさそうにしているナナシをしり目に俺は魔力索敵で辺り一帯の魔物を探す。すると、目的のレッドワイバーンの他に見覚えのある龍の姿が目に映る。
「ん?あれは……。」
するとこちらの魔力に気が付いたのか、それは急接近して俺の目の前に現れた。
「とんでもない魔力を感じてきてみれば、久しいなラピスの従者よ。」
「久しぶりですねエルデさん。」
俺の前に現れた龍は大地を支配する龍エルデだった。俺に龍昇華の果実を食わせた張本人。まさかここでまた再開することになるとは……運命ってのはわからないもんだな。
「その成長ぶりを見るに余程龍昇華が馴染んだと見える。その力、此方み見せてはくれないか?」
「そう言いますと?」
「今ここで此方と手合わせ願う、といえばよかったかな?」
「なるほど、じゃあ少しだけ時間をください。すぐ戻ります。」
「承知した。」
移動魔法でレッドワイバーンのもとに飛ぶと一撃で仕留め、収納袋へと仕舞う。すると体の中に引っ込んでいたナナシが声をかけてくる。
『くっくく、これはこれは良い余興になりそうだ。なぁ主?』
「余興も何も、少し手合わせするぐらいだろ。」
『我には奴の態度はそうは見えなかったぞ。あれは明らかに戦いに飢えているものの顔だった。単なる手合わせで済むとは思えんがなぁ。』
「ま、ほどほどに済ましてくれるさ。多分。」
そして彼の前に再び移動魔法で姿を現すと、そこにはすでに巨大な龍の姿へと姿を変えていたエルデが待ち構えていた。
「待ちわびたぞ。さぁ、始めようか!!」
開始の合図は山全体を揺るがすようなエルデの咆哮から始まった。それと同時に俺の真下の大地がボコボコと隆起し、巨大な槍となって襲いかかってくる。この技はあの時エルデの従者のジンがやってきたものと同じようなものだが、規模が違う。本当に立っている大地がすべて敵に回ったような感じだ。
だが、大地なら……斬れる
アーティファクトを握り、迫りくる大地の攻撃を一刀のもとに斬りながらエルデへと距離を詰める。天狐の舞を習得した俺は一瞬で彼との距離をゼロにした。
すると、さすがに一瞬で懐を取られるとは思っていなかったのかエルデの表情が強張った。
「むぅっ!?」
懐から切り上げるようにアーティファクトを振るうと、確かに斬った感触を感じた後、目の前からエルデの姿が消えていた。
同時にゴトンと俺の横に落ちたのは真っ二つに斬られた彼の体の一部と思わしき岩。
「ふむ、人化したままでもその力か。まったく恐ろしい。」
そう話しながらエルデは大地の中から姿を再び現した。
「外殻を斬られたのはいつぶりのことだろうか……最早数えるのも億劫なほど前のことだ。」
どうやら俺がさっき斬り落とした岩はエルデの外殻部分に当たるらしい。
「さて、そろそろ本気を見せてほしい故……此方も力を示そう。」
そう言うと辺りの大地から突然大きく土が迫り上がり、俺とエルデのことをドーム状に覆った。
「むんっ!!」
そしてエルデが地中深くまで足を突っ込み魔力を込めると、彼を中心にして地表がみるみるうちに真っ赤に染まっていき、沸騰を始めた。
「溶岩になっているのか。」
流石にあんな溶岩に、この姿のままで足を突っ込んだら無事でいられるわけがない。
そう悟った俺は人化を解除することにした。
「人化解除。」
解除と同時に全身が黒い鱗で覆われる。それとほぼ同時に、エルデが更に魔力を込め叫ぶ。
「ボルカニック……バーストォ!!」
その叫びに反応し、ドームのなかの地表が全て赤く染まったかと思えば溶岩が大量に噴出し、大爆発を起こしたのだ。
普通ならば死を免れないこの状況でも、龍の姿へと戻った俺には溶岩でさえも熱さを感じさせるには至らなかった。
そして俺は拳を固く握り込むと、噴出する溶岩の中心へと突っ込み、エルデへと一直線に飛んだ。
そして噴出する溶岩を突き抜けると、その先にはブレスの構えに入っていたエルデの姿があったが、まさか溶岩を突き抜けてくるとは思っていなかったのか、一瞬彼の体が硬直した。
「いきます……。」
握りしめた拳をエルデの顔面目掛けて振り抜くと、外殻を粉々にする感覚と同時に肉に拳がめり込む感触が伝わってくる。
「ゴハッ!!」
俺の攻撃によってブレスは中断され、大きく仰け反ったエルデは自分で作り上げたドームを壊しながら倒れるのだった。
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