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第10章 三つ巴
第329話
しおりを挟むアルマ様を探してダンジョンの中を走り回っているが、チラリと後ろを振り返れば大量にさっき倒したデュラハンナイトの仲間たちが俺のことを追いかけてきていた。
「くそっ、どこまで追いかけてくるんだこいつらは!!」
どこまで逃げてもこいつらは追いかけてくる。曲がり道を何度も曲がって、視界から消えてもいつか追いついてくるのだ。
「っ!!不味いな……行き止まりかっ。」
左手の法則に従って走ってはいたものの、ついに行き止まりに差し掛かってしまう。
「これじゃあ相手するしかないな。」
やむなしに腰からアーティファクトを引き抜いて構えると、しっかりと握っていたはずのそれが手からすっぽ抜け、ダンジョンの壁に突き刺さる。
「やばっ……。」
それに手を伸ばしている最中にもデュラハンナイト達が眼前に迫ってきている。しかしその時だった。
ズンッ……………。
「え?」
突如天井がプレス機のように降りてきてデュラハンナイト達を押し潰してしまったのだ。
そしてガラガラと音を立てて戻っていく天井の下には既に青い光の粒子となったデュラハンナイトだったものが……。それは行き場を求めるように少し彷徨うと、俺の方に向かってきて吸収されていった。
「何が起こったんだ?」
『うむ、罠だな。そのアーティファクトが突き刺さった壁面が罠の起動スイッチだったようだ。』
「……こいつに助けられたってことか。」
壁に突き刺さっていたアーティファクトを抜くと、俺はそれを鞘へと納めた。
「何はともあれ、邪魔者はいなくなったな。これで探索しやすくなる。」
そして一歩踏み進めたその時……。
キン……カキン!!
と、金属同士がぶつかり合うような音が何処かから反響して聞こえてきた。それと同時に、何回か爆発音も聞こえてくる。
「……!!あっちか!?」
咄嗟に走り出し、音のなる方へとダンジョンを進んでいくと……。
「おい!!逃がすなよ!!」
「わかってラァ!!」
ポッカリとできた広い部屋の中にゴツい装備を身に纏った男達が何人もいた。そいつらは何かと戦っているようだが……。
「フレイムブラスト!!」
なにやら魔法の詠唱のようなものと同時にそこで炎の爆発が起こる。その黒煙の中から何かが飛び出し、俺はその飛び出してきたものの正体を目の当たりにした。
「あ、アルマ……様?」
「ケホッケホッ!!うぅ……。」
黒煙の中から飛び出してきたのは服をボロボロにして体の至る所に怪我をしているアルマ様だった。
その姿を見て、俺の体の奥で何かがプツリと音を立てて切れた。
「逃さねぇぞ!!こんな手柄を立てる機会なんて滅多にねぇんだ!!」
よろめくアルマ様へと集団で襲いかかる男達。
俺は無我夢中で全身を龍化させると、翼でアルマ様のことを包み込んだ。
その次の瞬間、全身を襲うのは刃で切られ刺される痛み。
ポタポタと体を血が伝い地面に滴る。すると、自分に何も起こらなかったアルマ様がふと顔を上げた。
「カオ……ル?」
「ゴフッ……大丈夫ですかアルマ様?」
体の中からも血が迫り上がってきて口から血が垂れる。その中の一滴がアルマ様の白い頬に飛び散ってしまった。
「だ、大丈……夫?」
「大丈夫ですよ、今終わらせますから。」
アルマ様を庇いながらゆっくりと立ち上がると、体の至る所に刺さっていた剣や槍が抜けて地面に落ちる。
全身から血を流しながら俺はアルマ様を襲っていた奴らのことを睨みつけた。
「お前ら……覚悟はいいな?」
ドクンと心臓が大きく脈打つと同時に壊れた機械音声が頭上から響く。
『フウ……イン……ヲ………タモテマ…………セ。』
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