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第9章 新たな生活

第324話 元の体へ

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 魔王城へと戻ってきた俺は自分の部屋のベッドに横になると、カニバルから得た結晶を手に取った。

「こいつでやっと元の体に戻れる。」

 やっとこの体にも慣れてきたところだが……元の体に戻れるのなら躊躇う余地はない。

「さて……。」

 俺が結晶を取り込もうとすると、ナナシが声を欠けてくる。

『我の体と別れるというのに、随分嬉しそうだな主よ?』

「当たり前だろ、自分の元の体に戻れるんだから。」

『我の体が主には召さなかったか。』

「ま、性別が違うってのも理由だ。」

 そして俺が結晶を口の中に放り込んで取り込むと、早速変化が現れた。

 ドクン……。

「ッ!!」

 来た……心臓の鼓動が大きくなり、体が熱くなっていく。進化の前兆だ。

「ぐっ……。」

 それと共に、制御を外れて体の至る所が龍化していく。

「頼むから戻ってくれよ!!」

 その願いと同時に、俺の全身を覆っていた鱗が弾け、辺りに飛び散った。

「お、終わった……のか?」

 自分の体を確認するために鏡の前に立つと、そこに映った自分の姿に俺はホッと一つ息を吐く。

「やっと……戻った。」

 鏡に映っていた自分は、本当の自分の姿だった。俺はやっと……元の体に戻ることができたのだ。

 この喜びは何とも代えがたいものだ。

『元の体に戻れて嬉しそうだな主よ。』

「あぁ、嬉しいことこの上ない。まぁ、進化というよりかは元に戻った形になってるけどな。」

『くくく、存外そういうわけではないぞ?ステータスという面では進化の前を遥かに超えている。だが、スキルはほとんど我へと戻ってきたようだな。』

 試しにステータスを確認してみると、確かにステータスはかなり上昇している。そしてナナシが言っていたように彼女から流れ込んできたスキルの殆どは消えてしまっていた。

 だが、一つだけ残っているものがある。

「……なんでこの自動反撃は残ってるんだ?これもナナシのスキルだよな?」

『うむ、我のスキルで間違いない。だが、そのスキルは主の肉体に残ることを選んだようだ。』

「なんでまた……。」

『それは我にもわからんな。気に入られたのではないか?』

「スキルが他人を気に入るなんてことあるのか?」

『それすらもわからん。』

「そうか。」

『まぁ特に今の我に必要なスキルではない。主が持っているとよい。』

「良いのか?」

『特に取り返す手段もないのでな。』

 このスキルには何度も助けられたし、自分の力になるのであれば越したことは無いか。ありがたくもらっておこうか。

「さて、じゃあ元の体に戻ったことをアルマ様に報告しに行くか。」

 アルマ様とは絶対に元の体に戻るって約束していたからな。

 早速俺は着替えて部屋の外に出た。するとなんの偶然だろうか、そこでアルマ様とばったり出くわしたのだ。

「あっ!?!?カオル!!戻ったの!?」

「はい、お待たせしました。」

 するとアルマ様は俺のお腹へと向かって飛び込んできた。前の体ではそんなことはしなかったのだが、やはり元の体に戻ったからなのだろうか。

「えへへ、やっぱりカオルはこれだよ。安心感が違うもん。」

 すりすりと顔をこすりつけながらそう言ったアルマ様はしばらくその感触を堪能した後、ゆっくりと顔を離すと、こちらを向いてにこりと笑った。

「おかえりカオル!!」

「ただいま戻りましたアルマ様。」

 すると、不意にアルマ様に腕を引かれた。

「カオル、みんなにも教えに行こ?みんな待ってるよ?」

「はい、アルマ様。」

 そしてアルマ様に手を引かれて皆のもとへと向かうと、みんなからも祝福とともに出迎えられるのだった。
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