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第9章 新たな生活

第315話 ダークエルフ

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 俺から事情を全て聞いたクリスタは納得したように一つ頷くと、言葉を発した。

「事情はわかりました。ですが、ダークエルフと繋がりを持つことができるかどうかは私にもわかりません。彼女達は普通のエルフ達よりも人間という存在を嫌悪していますから。」

「それは……どうしてです?」

「ダークエルフは昔、エルフよりも貴重で珍しい存在として人間に狙われていた過去があるのです。」

「そんな過去があったんですか。」

 それならば人間という存在を恨み、憎んでいるのも納得だ。

 なら無理に頼むのはダークエルフ達にとっても酷か……。とそう思っていると、その考えを読んだ彼女がニコリと笑って言った。

「ですが、私が認めた貴方……となれば話は別でしょう。少し位話は聞いてくれると思いますよ?」

「本当ですか!?」

「えぇ、きっと……彼女なら無下にはしないでしょう。」

 クスリと彼女がそう言って笑うと同時に玄関口の扉がコンコンとノックされる。

「クリスタ~?中にいるのか?」

「入ってきていいですよ、。」

「ん、お邪魔するぞ~。」

「へ?」

 ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、白色の肌で金髪というエルフの特徴とは違う、褐色の肌を持ち、更には銀髪の女性だった。

 その女性とバッチリ目があってしまうと……。

「な、なんで人間がこんなところにいるんだ!?」

「フフフ、トウカ貴女にはまだのことを話していませんでしたね。こちらはカオル……私が唯一この集落に出入りすることを許可した人間です。」

「だっ、だからなんで今日……今っ、ここにいるんだよ!?ウチが来ること知ってたよな!?」

「えぇ、もちろんです。ですがまた、彼女も今日用事があってここを訪れているのですよ。の貴女に出会うために。」

「ウチに?なんでまた人間なんかが……。」

「他でもない貴女にしか聞けないことがあるようなのですよ。話だけでも聞いてあげてはくれませんか?」

「………………。」

 はぁ……と大きくため息を吐いて、トウカと呼ばれたダークエルフの女性は俺の方に視線を向けてきた。そして歩み寄ってくると、こちらの目を覗き込みながら言った。

「……本当なら人間なんかと話すのだって嫌だが、縁のあるクリスタの頼みだからな。聞くだけ聞いてやる。」

「フフフ、ありがとうございますトウカ。」

「はぁ、んでウチに男の用なんだ人間。」

「実は神獣の居場所を知りたくて。」

「……神獣の居場所を?なんでそんなことを知りたがる?」

「大切なものを取り戻すために必要なんです。」

「大切なものねぇ、まぁ深くは聞かないけどさ。」

 俺からその言葉を聞き出すと、彼女は葉巻のようなものを咥えて火をつけた。そして煙をふかしながら忠告をしてくる。

「もし、仮にウチから神獣の居場所を聞いて、そいつを倒しに行こうって思ってるならやめときな。たとえ人間が何百人束になったって勝てる相手じゃあない。ただ息をするように殺されて終わりさ。」

 そう忠告した彼女にクリスタがクスクスと笑いながら言った。

「フフフ、それは……どうでしょうか?」

「……それはどういう意味?」

「カオルは貴女が見下している一介の人間という存在とは遠くかけ離れた存在なのですよ。もしかすると、あなたよりも遥かに強いかもしれませんね?」

 クリスタの煽るようなその言葉にトウカの額に青筋が浮かぶ。

「ウチよりも強い?その冗談笑えないよクリスタ。」

「冗談なんかじゃありません。信じられないのであれば……?」

「……悪いけどくたばったってウチは責任とらないよ。」

 そう言って彼女は立ち上がると、ギロリと鋭い視線を俺に向けてきた。

「殺されても文句無しだ。死人に口は無いんだからな。森で待ってるぞ。」

 それだけ告げると彼女はクリスタの屋敷を出て行ってしまった。

 彼女が居なくなってから俺はクリスタに詰め寄る。

「な、なんであんなふうに煽るようなこと言ったんですか!?」

「フフフ、あぁでもしなければトウカはきっと貴方を相手にしてくれませんでしたから。実力でわからせれば話を聞いてもらえる……とてもシンプルな条件だと思いませんか?」

 確かにクリスタがあのように煽ったからこそ、トウカは俺に興味……というか憎しみというべきか複雑な感情を抱いたのは事実だ。

 兎に角今はこちらのことを無視されなかっただけでも良いと思うべきか。

「そうですよ、それに……これは彼女のためでもあるんです。」

「あの人の?」

「はい、まぁ後でわかりますよ。それよりも今は森へと向かいましょうか。トウカが待っていますからね。」

 そして俺はクリスタとともにトウカが待っているという森へとむかうのだった。
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