上 下
222 / 350
第7章 動き出すヒュマノ

第222話 エルフの集落再び

しおりを挟む

「う…………。」

 深い微睡みの中から目を覚ますと、俺は知らない部屋のベッドで寝かされていた。

「俺は確か…………ハッ!?う、腕っ!!」

 眠りに落ちてしまう前に記憶に残っていた、腕がまるで龍のようになってしまっていた光景。それを思い出して、咄嗟に自分の手を確認すると元の肌に戻っていた。

「戻ってる。」

 ひとまず変形していた体がもとに戻ったのは安心だが……。

「ここはどこなんだ?」

 部屋を見渡してもこんな部屋に来た覚えはない。それに辺りに人もいないようだ。

 ひとまず外の状況を確認して情報を集めるべく、俺は窓のカーテンを開けて外を眺めた。すると、窓の外にはエルフが何人も歩いているのが見えた。

「まさか……ここは。」

 ここがどこなのかを察すると同時に俺の背後で扉が開き、誰かが入ってきた。

「おや、お目覚めでしたか。」

「クリスタさん?」

 振り返ると、そこには食べ物をお盆にのせて持ってきたクリスタの姿があった。

「ってことは、やっぱりここはエルフの集落。」

「そうですよ。なにやら魔王城が襲撃にあったようで、倒れてしまった貴方とジャックをカーラとリルがここに連れてきたのです。」

「そうだったんですか。ジャックさんは無事なんですか?」

「ジャックのことならば心配ありませんよ。貴方よりも先に回復して、既に執事として働いているでしょう。」

「よかった…………って、ちょっと待ってください?」

 ジャックが無事であることに安心したのも束の間、俺はある疑問にたどり着く。

「俺って何日間眠りについていたんです?」

「今日で……ちょうど一週間ですね!」

「えぇっ!?」

 一週間も俺は眠りについていたのか!?その間アルマ様達の食事は!?ストックは一週間分は無いはずだぞ!?

 いろんな不安が頭を駆け巡っていると、クリスタに肩をポンと叩かれる。

「まぁまぁいろいろな不安があるのはわかりますが、今はしっかりと療養しましょうね。」

 そう言われてクリスタに動かされて、無理矢理椅子に座らせられると、目の前に軽い朝食と翡翠色の液体の入った小瓶が置かれる。

「これは?」

 俺は翡翠色の液体が入った瓶を片手に取ってクリスタに問いかけた。

「疲労回復のお薬ですよ。少し苦いですが……効果は私が保証します。」

「ふむ……。」

「空腹の状態では本来の効果を発揮しませんから、ちゃんとご飯を食べてから飲んでくださいね?」

「ありがとうございます。」

 普段エルフ達が口にしているのであろう文化的朝食を食べ終えた俺は、その翡翠色の液体を口にした。
 すると口に広がったのは強烈な苦味……。

「~~~っ!?」

 思わず顔をしかめていると、クリスタがクスクスと笑う。

「良薬は苦いものですから。我慢してください?」

 なんとかその苦い薬を飲み干すと、クリスタはパチパチと拍手を送ってくる。

「うぅ……ご馳走さまでした。」

「はいよく飲めました♪」

「苦い苦いと聞いてはいましたけど、ここまでとは思ってませんでしたよ。」

「フフフ、まぁ世界樹の葉のエキスを濃縮したものですから。それに、すぐに効果は現れると思いますよ?」

 そう彼女が告げた瞬間、一週間寝込んでいたせいで気だるく、重かった体が嘘のように軽くなる。

「おぉ……。」

 流石世界樹から作られた薬だな。まぁ苦かったが、効果は抜群だ。薬の効果を実感していると、クリスタが語り始める。

「それにしても驚きましたよ。ここに貴方とジャックが担ぎ込まれてきた時……ボロボロのジャックにも驚きましたが、貴方の姿がまるで別人でしたからね。」

「俺の体……鏡で見たわけじゃないから詳しくは知らないんですが、どんな感じになっていたんです?」

「そうですね~、一言で言い表すなら……龍人族ドラゴニュートでしょうか。」

「ドラゴニュート?」

「数百年前に絶滅してしまった種族です。私も文献でしか姿を見たことはないのですが……額から生えていた鋭い角、そして背中に生えていた龍のような翼、体を護るように覆っていた鱗……まさにあのときの貴方は龍人族と同じ見た目でしたよ。」

 額に角?背中に翼?鱗は……まぁ一瞬見たから覚えているが……。

 額に手を当てても、背中をさわってもそんなものが生えていたような痕はない。

「それでも、龍人族のような特徴は1日程で全てなくなってしまっていましたね。まるで最初からなかったみたいに……痕も残さず。」

「そうだったんですか。」

 戦闘の最中にそんな風に体が変わっていたとなればドリスが驚いた表情を浮かべていたのも納得だな。それに、駆け寄ってきたナインとスリーがまさに理解不能……といったような様子だったことも。

 これも龍昇華の果実を食べたせい……なのかな。

 そんなことを思っていると、クリスタが俺に釘を挿すように言ってくる。

「いい忘れていましたけれど、目が覚めても暫くは安静ですからね?」

「えぇっ!?すぐにでも魔王城に戻りたいんですけど……。」

「ダメです許しません。」

 胸の前で手をクロスさせてXマークを作り、プイッと顔を背ける彼女。

「薬師の言うことはちゃんと聞かなきゃダメですからね!!絶対です。」

「は、はい~……。」

 クリスタの気迫に圧され、俺は首を縦に振ってしまうのだった。
 アルマ様達は大丈夫だろうか……美味しいご飯を食べているかな?心配だ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...