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第7章 動き出すヒュマノ
第222話 エルフの集落再び
しおりを挟む「う…………。」
深い微睡みの中から目を覚ますと、俺は知らない部屋のベッドで寝かされていた。
「俺は確か…………ハッ!?う、腕っ!!」
眠りに落ちてしまう前に記憶に残っていた、腕がまるで龍のようになってしまっていた光景。それを思い出して、咄嗟に自分の手を確認すると元の肌に戻っていた。
「戻ってる。」
ひとまず変形していた体がもとに戻ったのは安心だが……。
「ここはどこなんだ?」
部屋を見渡してもこんな部屋に来た覚えはない。それに辺りに人もいないようだ。
ひとまず外の状況を確認して情報を集めるべく、俺は窓のカーテンを開けて外を眺めた。すると、窓の外にはエルフが何人も歩いているのが見えた。
「まさか……ここは。」
ここがどこなのかを察すると同時に俺の背後で扉が開き、誰かが入ってきた。
「おや、お目覚めでしたか。」
「クリスタさん?」
振り返ると、そこには食べ物をお盆にのせて持ってきたクリスタの姿があった。
「ってことは、やっぱりここはエルフの集落。」
「そうですよ。なにやら魔王城が襲撃にあったようで、倒れてしまった貴方とジャックをカーラとリルがここに連れてきたのです。」
「そうだったんですか。ジャックさんは無事なんですか?」
「ジャックのことならば心配ありませんよ。貴方よりも先に回復して、既に執事として働いているでしょう。」
「よかった…………って、ちょっと待ってください?」
ジャックが無事であることに安心したのも束の間、俺はある疑問にたどり着く。
「俺って何日間眠りについていたんです?」
「今日で……ちょうど一週間ですね!」
「えぇっ!?」
一週間も俺は眠りについていたのか!?その間アルマ様達の食事は!?ストックは一週間分は無いはずだぞ!?
いろんな不安が頭を駆け巡っていると、クリスタに肩をポンと叩かれる。
「まぁまぁいろいろな不安があるのはわかりますが、今はしっかりと療養しましょうね。」
そう言われてクリスタに動かされて、無理矢理椅子に座らせられると、目の前に軽い朝食と翡翠色の液体の入った小瓶が置かれる。
「これは?」
俺は翡翠色の液体が入った瓶を片手に取ってクリスタに問いかけた。
「疲労回復のお薬ですよ。少し苦いですが……効果は私が保証します。」
「ふむ……。」
「空腹の状態では本来の効果を発揮しませんから、ちゃんとご飯を食べてから飲んでくださいね?」
「ありがとうございます。」
普段エルフ達が口にしているのであろう文化的朝食を食べ終えた俺は、その翡翠色の液体を口にした。
すると口に広がったのは強烈な苦味……。
「~~~っ!?」
思わず顔をしかめていると、クリスタがクスクスと笑う。
「良薬は苦いものですから。我慢してください?」
なんとかその苦い薬を飲み干すと、クリスタはパチパチと拍手を送ってくる。
「うぅ……ご馳走さまでした。」
「はいよく飲めました♪」
「苦い苦いと聞いてはいましたけど、ここまでとは思ってませんでしたよ。」
「フフフ、まぁ世界樹の葉のエキスを濃縮したものですから。それに、すぐに効果は現れると思いますよ?」
そう彼女が告げた瞬間、一週間寝込んでいたせいで気だるく、重かった体が嘘のように軽くなる。
「おぉ……。」
流石世界樹から作られた薬だな。まぁ苦かったが、効果は抜群だ。薬の効果を実感していると、クリスタが語り始める。
「それにしても驚きましたよ。ここに貴方とジャックが担ぎ込まれてきた時……ボロボロのジャックにも驚きましたが、貴方の姿がまるで別人でしたからね。」
「俺の体……鏡で見たわけじゃないから詳しくは知らないんですが、どんな感じになっていたんです?」
「そうですね~、一言で言い表すなら……龍人族でしょうか。」
「ドラゴニュート?」
「数百年前に絶滅してしまった種族です。私も文献でしか姿を見たことはないのですが……額から生えていた鋭い角、そして背中に生えていた龍のような翼、体を護るように覆っていた鱗……まさにあのときの貴方は龍人族と同じ見た目でしたよ。」
額に角?背中に翼?鱗は……まぁ一瞬見たから覚えているが……。
額に手を当てても、背中をさわってもそんなものが生えていたような痕はない。
「それでも、龍人族のような特徴は1日程で全てなくなってしまっていましたね。まるで最初からなかったみたいに……痕も残さず。」
「そうだったんですか。」
戦闘の最中にそんな風に体が変わっていたとなればドリスが驚いた表情を浮かべていたのも納得だな。それに、駆け寄ってきたナインとスリーがまさに理解不能……といったような様子だったことも。
これも龍昇華の果実を食べたせい……なのかな。
そんなことを思っていると、クリスタが俺に釘を挿すように言ってくる。
「いい忘れていましたけれど、目が覚めても暫くは安静ですからね?」
「えぇっ!?すぐにでも魔王城に戻りたいんですけど……。」
「ダメです許しません。」
胸の前で手をクロスさせてXマークを作り、プイッと顔を背ける彼女。
「薬師の言うことはちゃんと聞かなきゃダメですからね!!絶対です。」
「は、はい~……。」
クリスタの気迫に圧され、俺は首を縦に振ってしまうのだった。
アルマ様達は大丈夫だろうか……美味しいご飯を食べているかな?心配だ……。
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