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第6章 龍闘祭

第204話 龍闘祭の始まり

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 五老龍達は俺の作った料理を堪能すると、これから行う予定のものについて話し始めた。

「さて、ラピスの振る舞いも終わったところで……だ。今回の会合の目玉、の準備を始めよう。」

 そう口にしたエルデにラピスが問いかける。

「して、今回の龍闘祭の組み合わせはどうする?前までは我の従者が参戦していなかった故はぶれる者がいなかったが……。」

「それに関しては問題ない。前回優勝した此方の従者を外し、他の従者達で総当たりした後に勝ち残った者と闘う……。それなら問題ないだろう?」

「それだとエルデ、あんたのとこのやつが有利にならない?」

「それも優勝したものの特権だ。強いものがすべてを握る……それが此方ら龍の中での決まりだろう?」

「それは確かにそうだけど……。」

 結局、エルデの従者がラスボスとして龍闘祭に参加することになり、俺はタラッサとエンラ、そしてグロムの三龍の従者のうちの誰かと闘うことになった。

「では龍闘祭の会場へ向かおうか。」

 エルデはパチンと指を鳴らすと、辺りに巨大な魔法陣が出現し、眩い光が放たれる。

 そして次の瞬間には俺は彼らと共に違う場所へと飛ばされていた。飛ばされてきた場所は巨大な闘技場のような場所で、観客席には様々な姿の龍達がつめかけている。

「観客は龍……なんだな。」

「うむ。ここにいる客どもは我以外の五老龍の配下の者だ。末端の龍達にとってもこの龍闘祭は数年に一度の一大行事なのだ。」

「ふ~ん。」

 とは言っているものの、ラピスの従者という体で来ているが……俺はただの人間だ。ここで俺が狩りにもし優勝してしまった場合どうなるのだろうか。

 と、そんなことを考えているとエルデが口を開く。

「わかっている者が大半だろうが、今回はラピスの従者が初めて参戦する故に龍闘祭の規約を説明しよう。」

 そう言って彼は一本ずつ指を立てながら言った。

「主な規約は二つ。まず一つ、この龍闘祭は殺し合いの場ではない故相手を殺すことは禁止である。二つ、観客に被害が及ぶ魔法やブレスは禁止。それだけだ。」

「一つ質問いいですか?」

「良いぞラピスの従者。」

「武器の使用はいいんですか?」

「構わない。」

 なら剣を使っても良いということだな。安心した。

「他に質問はないか?」

「大丈夫です。」

「うむ、では組み合わせを決めるか。先端の赤い棒を引いたもの同士と何もついていない棒を引いたもの同士で戦ってもらおう。」

 そう言ってエルデはどこからか四本の棒が入った缶を取り出した。それをラピス達が引っこ抜く。

「我のは赤だな。」

「おっ?オレのも赤だぜ~。」

「じゃあタラッサとワタシってことね。」

「そういうことですわね。」

 組み合わせは俺とグロムの従者、そしてエンラとタラッサの従者に決まった。

「組み合わせは決定だな。では、第一回戦はグロムの従者対ラピスの従者だ。両者準備を整え闘技場の中央へ。」

「おい、リッカ負けんじゃねぇぞ!!」

「わかってるっすグロム様っ!!」

 グロムは自分の従者を鼓舞し、リッカという名の従者は意気揚々と闘技場の中央へと歩いていく。

 それを見送ったラピスはふと俺に問いかけてくる。

「カオル、やれるか?」

「ご命令とあれば?」

「む、むぅやりづらいのぉ。……ぶっ倒してくるのだ!!」

「了解しました?」

 弄るようにわざとらしく、様という敬称をつけてラピスの名を呼んでやると彼女はぶるりと肩を震わせた。

 さ~て、ラピスに命令されたことだしやってやるか。

 俺は収納袋から剣を取り出すとそれを手にしながら中央へと向かう。
 そしてグロムの従者リッカと対面するとあちらがニコッと無邪気に笑いながら話しかけてきた。

「ウチはリッカっす!!グロム様に良いとこみせたいっすから、負けないっすよ~?」

「カオルです。どうぞお手柔らかにお願いします。」

 お互いに自己紹介を終えると、俺とリッカの間にエルデが立った。

「では両者構えっ!!」

 その掛け声と共にリッカは人の姿から一気に龍の姿へと姿を変える。黄色と緑の鱗が入り交じったなかなか派手なその姿が彼女の元の姿らしい。

 一方俺は龍になんて変身できるわけ無いので、鞘から剣を抜いて構えた。

 すると、エルデが首をかしげながら問いかけてくる。

「その姿のままでいいのか?」

「この姿の方が動きやすいので、大丈夫です。」

「む、なかなかに変わり者だな……。まぁ良い……では龍闘祭第一回戦…………始めッ!!」

 エルデの掛け声と共に龍闘祭の火蓋が切り落とされた。
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