189 / 350
第5.5章 大きくなりたいメア
第189話 霊薬の力
しおりを挟むメアの目的の霊薬をクリスタからもらった俺達は彼女にお礼を言ってエルフ達の集落を後にしようとした。
その時、見送りに来ていたクリスタにあるものを手渡される。
「カオルさん、帰る前にこれを。」
そう言って彼女が手渡してきたのは首から下げるペンダントのようなものだった。手のひらサイズの丸い円形の装飾には何やら紋様が彫ってある。
「これは?」
「わたくしがこの集落に入ることを認めた者に渡すペンダントです。一度魔力を流して見てください。」
彼女に言われるがまま、俺はペンダントに魔力を注いでみると、ペンダントに刻まれた紋様が青く光り輝いた。
「これで貴方の魔力にしか反応しない唯一無二の通行証の出来上がりです。」
「でも、いいんですか?こんなものもらって……。」
人間の俺がここに出入りするのはここに住んでいるエルフ達があまり良い気分にならないと思うのだが……。
そう心配に思っていると、またしても俺の心の内を読んだように彼女は言った。
「そのペンダントはエルフ達の長であるわたくしが認めた証。それを首から下げていれば、他のエルフ達も貴方のことを認めるでしょう。それだけ信頼性のあるものなのですよ。」
「そうなんですね……じゃあ、ありがたくもらっておきます。」
「フフフ、貴方の存在はきっと……エルフ達に良い影響を与えることになるでしょうから。気軽に訪ねてきてくださいね?」
「ありがとうございます。それじゃ、メア……頼む。」
「うん、パパ。クリスタまたね?」
「えぇ、また近々お会いしましょう。」
そして俺とメアは移動魔法で魔王城へと戻ってきた。
すると、早速メアは件の世界樹の霊薬を口にしようとする。
「早速飲む。」
「本当に大丈夫なのかそれ?」
「大丈夫。本能でわかる。」
俺の心配を他所にメアは小瓶の中に入っていた赤い液体を一気に口に含んだ……。すると、みるみるうちに彼女の表情が苦虫を噛み潰したような表情へと変わっていく。
どうやら、霊薬ということもあり味は美味しくはないらしいな。
しかし、なんとかゴクリと飲み干したメアの体にすぐに変化が現れ始めた。
「お?」
メアの身長がまるで木が上へ上へと伸びるように伸びていき、前まで俺のお腹ぐらいまでしかなかった身長が一気に俺の胸の辺りまで伸びたのだ。
それに伴ってやはり女の子としていろいろな部分が成長している。それと、特徴的だった額に生えた角も太く、長くなり、腰に生えていた羽と尻尾もかなり成長した。
「おぉ~、凄いな。あの薬を飲むだけでそんなに成長できるものなのか。」
ってことは俺が飲んだら……老化まっしぐらだな。
そして成長を終えたメアは自分の体を眺めてニヤリと笑う。
「ふふ……カナンには勝ってる。多分アルマにも負けてない。」
どこに勝ち負けがあるのかは不明だが……まぁ兎に角満足そうで何よりだ。
「パパ、見て!!メアも大きくなった!!」
「あぁ、そうだな……。それじゃあ今日から一人で寝られるな?」
「え゛っ?」
「カナンも大きくなって一人部屋になったんだ、メアも大きくなったし……そろそろ一人部屋が欲しいだろ?」
「大きくなったら一人で寝なきゃダメ?」
表情を青くしながらメアは問いかけてくる。
「まぁ、メアも女の子だしな……。寂しかったらカナンに頼んで一緒に寝たらどうだ?」
カナンならきっと受け入れてくれるだろう。
俺がそう告げると、メアはガックリと膝を着いた。
「失敗した……。パパと一緒に寝られなくなることは考えてなかった。」
「大袈裟だな、俺はいつだってここにいるんだぞ?」
「大きくなった代わりに、失ったものが大きいの……。今度またクリスタに相談決定。」
結局、その日からメアはカナンと一緒の部屋で過ごすことになり、俺は久し振りに一人でベッドの上に寝転んだ。
「ん~!!」
今日からは、体を大の字にして寝転がっても誰にも迷惑をかけることはない。
「流石にあそこまで女性的に成長したカナンとかメアと一緒に寝るってなったら……俺の方が持たないからな。」
まぁ今までも左右に女の子がいるというだけで、結構ドキドキしながら寝ていたのは事実だが……。
「さて、そろそろ寝るか……。」
今日は落ち着いて寝られそうだ。
そして俺は目を閉じてゆっくりと微睡みの中へと落ちていくのだった。
その時俺はクリスタにもらったペンダントを外すのを忘れていたことに気が付かなかった。
暗い部屋の中で首から下げていたペンダントの紋様は月明かりに照らされて青く光っていた……。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件
なるとし
ファンタジー
最強スライムぷるんくんとお金を稼ぎ、美味しいものを食べ、王国を取り巻く問題を解決してスローライフを目指せ!
最強種が集うSSランクのダンジョンで、レオという平民の男の子は最弱と言われるスライム(ぷるんくん)を救った。
レオはぷるんくんを飼いたいと思ったが、テイムが使えないため、それは叶わなかった。
レオはぷるんくんと約束を交わし、別れる。
数年が過ぎた。
レオは両親を失い、魔法の才能もない最弱平民としてクラスの生徒たちにいじめられるハメになる。
身も心もボロボロになった彼はクラスのいじめっ子に煽られ再びSSランクのダンジョンへ向かう。
ぷるんくんに会えるという色褪せた夢を抱いて。
だが、レオを迎えたのは自分を倒そうとするSSランクの強力なモンスターだった。
もう死を受け入れようとしたが、
レオの前にちっこい何かが現れた。
それは自分が幼い頃救ったぷるんくんだった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる