171 / 350
第5章 成長する2人
第171話 水の狩人
しおりを挟む迷路の階層を抜けた俺とスリーはそれから先の階層を一気に駆け抜けると、あっという間にボス階層特有の巨大な扉の前にたどり着いた。
「ふぅ、やっとボス階層か。意外と長いダンジョンだったな。」
「マスター、スリーが割り出した計算ではあと5分ほど早くついているはずです。」
「その5分ってあの迷路の階層の時にわざとスリーが魔物を出したりしなかったら短縮できたんじゃないか?」
「まぁ、それも要因の一つであることに間違いはありません。」
あっさりとスリーは自分にも非があることを認めてしまう。
「ですが結果的にマスターのためにはなったと思います。なのでプラスマイナスゼロ……と言ったところでしょうか?」
「まぁそうかもな。……それで?この奥にいるやつが人魚のイヤリングを持ってるんだよな?」
「はい、間違いありません。」
よしならちゃっちゃと倒して人魚のイヤリングを手に入れるとするか。
そして俺は扉に近づいて手を添えると、迎え入れるように扉が自動で開いた。いざ中へと入ってみると、中は壁に大きな穴がたくさんあるだけでボスらしきものはいない。
それを疑問に思っていると、背後の扉が閉まる。それと同時に妙な音が部屋全体に響き始めた。
ゴゴゴゴゴゴ……。
「お、おぉ!?」
その轟音は部屋のあちこちに開いている大きな穴から聞こえてくる。そしてその音がだんだん近くなると、突然大きな穴からとてつもない勢いで水が流れ出してきたのだ。
「お、おいスリー?これ罠部屋とかじゃないよな!?」
「間違いなくボス部屋ですマスター。」
俺が慌てながらスリーに確認をとっている最中にもどんどん水位が増していき、あっという間に俺の首元まで水に浸かってしまった。
しかしまだまだ水は流れ込んできている……。こいつは不味いと思っていると、ふと水面に影が見えた。それと同時にキラリと何かが光る。その瞬間俺の危険予知のスキルが発動し、時間の流れがぴたりと止まった。
時間が止まると同時に見えたのは俺の目の前の水面からフォークのように三又に分かれた槍の先端だった。
そして水中にはその三又の槍を構えた厳つい顔をしたおっさんが……そのおっさんの下半身は魚のようになっている。言葉で簡潔に言い表すなら、男版人魚ってとこか。
にしても厳ついな。人魚と言えば美しい女性であるというイメージがあったのだが、それがただの幻想であるということを今嫌というほど思い知らされている。まぁでもよくよく考えたら人魚にも男はいるってことは不思議じゃない。
だっていくら人魚とはいえ女の人だけじゃ子孫は残せないからな。不老不死で子孫を残す必要がないってなら話は別だが……。
さて、人魚のイメージが盛大に打ち砕かれたところでこいつをぶっ倒す術を考えないとな。まぁまず最初はこいつで一発かましてみるか。
俺は魔神の腕輪を右手にはめると軽く魔力を籠めた。そして雷撃をおっさん人魚へと向けて放つ。まぁ水に生息してるんだから雷には弱いだろ。相性的な問題で……な。
雷撃を放つと同時に時間の流れが遅くなり、俺の目の前に水中から三又の槍が飛び出てきた。それと同時に雷撃がおっさん人魚に当たる。強力な電気ショックを受けたように一瞬動きを止めたヤツに俺は潜って近付くと拳に魔力を籠めた。
魔力爆発っ!!
スキルを思い浮かべて放った一撃だったが、寸でのところで正気に戻ったおっさん人魚はとんでもないスピードで向こう側へと泳いでいってしまった。
「ぷはっ!!クソ……ちょっと電気食らってたのにな。当たんなかった。」
呼吸をするために水面に顔を出すと、もうこの部屋に注がれ続けている水は俺の背丈をもあっさりと越えて、天井に差し迫っていた。
このまま水が注がれ続けたら……溺死してしまう。
おそらく水を止める方法は一つ……ヤツを倒すしかない。
決着は早めに着けないといけないな。
そして再び水中へと潜ろうとした時、不意に後ろから声をかけられる。
「マスター、水の狩人は使わないのですか?」
「水の狩人……あっ!!なるほど!!」
戦闘に集中しててすっかり存在を忘れかけていた。あれを使えば水中でも自由自在に動けるんだったよな?もう使うことになるとは予想外だったが、一度試す良い機会になったと考えよう。
俺は収納袋から水の狩人を取り出して左手の人差し指にはめた。すると、水の浮力を無視するように体がスッ……と水中に沈んでいく。
(っ!?これは……どうやって使うんだ!?)
戸惑っている間にも、あっという間にボス部屋の床に足がついてしまう。
ためしに少し体を動かしてみると、確かにそうだけど水の冷たさは感じるものの、動きを阻害されている感じはない。それこそまるで地上に立っているときとほぼ変わらないな。
(でもこれ強制的に浮力に逆らって底に足をつけてしまうんじゃ、ちょっと使いにくくないか?)
そう思った俺だったが、スリーが言っていたあることを思いだす。
『ミラ博士が作ったアーティファクトの記録リストに登録されているものです。欠陥はありません。』
(欠陥がないなら……きっとちゃんとした使い方があるはずだ。それを見極めよう。)
そう思っていた刹那、俺の目の前に先程槍で攻撃を仕掛けてきたおっさん人魚が現れる。さっきの雷撃を食らって怒り心頭……と言った表情だ。
(さてと……ちょうど良い練習台がやって来てくれたし、アイツでこれの使いかたを実践形式で紐解いて行くか!!)
息を止めながらスッと構えをとると、おっさん人魚は物凄いスピードでこちらに向かって攻撃を仕掛けてきたのだった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる