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第5章 成長する2人

第169話 親切心とは

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 次の階層へと続く階段を下りきった先で俺たちを待ち構えていたのは、レンガのようなものが積み重なってできた薄暗い通路だった。
 この光景は以前見たことがある。それもダンジョンの中で……な。

「今度は迷路か。」

「そのようですマスター。」

 以前ラピスとダンジョン攻略をした時にあった迷路の階層と、この階層の造りが酷似していたのだ。

「スリー、ゴールまでの道のりはわかるか?」

「少々お待ち下さい。」

 スリーは一度目を閉じた。そして少し時間をおくと彼女は再び目を開き言った。

「この階層の造りをマップ化して記憶領域データベースに記録しました。ナビゲーションを開始します。マスター、スリーの後ろにしっかりと着いてきてください。」

「わかった。」

 そしてスリーの後に着いて行くと、彼女は迷いなく分かれ道を進んでいった。その最中、彼女は時に道の端を歩いたり、ジグザグに道を歩いたりと奇妙な歩き方をしていた。その理由について歩きながら問いかけてみると……。

「マスター、この迷路には大量のトラップが仕掛けられています。先ほどからずれた歩き方をしていたのはそのためです。」

「なるほどな。」

「例えば、マスターの2マス横にある床。少し盛り上がっているのがわかりますか?」

「これか?」

 俺はスリーが指差した足元の床に目をやると、確かに彼女の言う通り他の床と比べてほんの少しだけ浮いているというか、盛り上がっている。

「ちなみにこれを踏むとどうなるんだ?」

「真横の壁が開いて致死性の高い毒が塗られた矢が100本飛び出してきます。」

「うわぁぉ……。」

 殺す気満々のトラップじゃないか。毒が塗ってあるってだけでも相当なのに、それが100本!?

「他にもたくさんありましたよ?普通の人間であれば即死するようなトラップが……。もちろんこの先にもまだまだありますので、くれぐれもスリーの後ろから離れないようお願いします。」

「あ、あぁ。」

 絶対に離れないように気をつけよう。そう決心せざるを得ないスリーの言葉だった。


 
 そうしてスリーの後ろにぴったりとくっつきながら迷路を進むこと数分でやっとゴールらしき場所が見えてきた。

「お、やっとゴールか。」

「はい、あそこが次の階層へとつながる階段になっているようですね。」

 見た限りゲートガーディアンもいないし、この階層もクリアか……とそう思っていたときだった。

「ではマスター。少々お暇だったかと思いますので、こちらをどうぞ。」

「はぇ?」

 気の抜けた声を上げる俺の目の前で、スリーは突然ポチっと少し盛り上がっていた床を踏んだ。すると突然天井が開き、ドスンと音を立てて一体の魔物が落ちてきた。

「す、スリー?」

「ちょうど最後の最後に魔物を召喚するトラップがありましたので、ぜひ倒して経験値になさってください。」

 そう言って少し微笑んだ彼女の笑みはまるで悪魔のようだった。

「はは、それって俺のためを思ってやってるのか?」

「もちろんです。スリーはマスターが強くなるためでしたらいたしますよ?」

「そ、そっかぁ……。」

 苦笑いを浮かべていると、落ちてきた魔物が体の前で組んでいた腕を広げて臨戦態勢に入っていた。しかもその腕は左右合わせて計6本生えていた。その6本の手にはそれぞれ違った武器が握られている。

「どこかの観音様かよ。物騒すぎるぞ。」

 そう突っ込みつつも俺は収納袋からナイフ状のアーティファクトを取り出した。

「ひとまず様子見からいくか。」

 そして俺がアーティファクトに魔力を籠めて、四方八方からの斬撃を思い浮かべながらそれを振るう。すると、6本腕の魔物に向かって俺の思想通りに見えない斬撃が襲い掛かる……が。

「…………。」

 あろうことかそいつは6本腕に握られていた武器で自分に迫ってきていた見えない斬撃を全て受け止めて見せたのだ。

「やっぱり強いな。」

 このダンジョンに出てくる魔物は全体的に強い魔物ばかりだ。おそらくほとんどがレベル50を超えている魔物ではないだろうか?もしかすると殺気に階層のゲートガーディアン並みに強いかもしれないぞこいつは……。
 そう思っていると、今度はこちらの番だと言わんばかりにヤツが右手で握っていた長剣が俺に迫ってくる。

「いよっと!!」

 軌道は単純だからこの程度なら避けられる。そう思っていた刹那、その長剣の影から今度は槍の矛先がきらりと光る。

「っ!?」

 それを少し魔力を纏わせたアーティファクトで受け流した俺はヤツからいったん距離をとった。

「隙の無い二段構えならぬ六段構えか?厄介すぎるだろ。」

 生憎こんなところで時間を食ってはいられない。魔力消費は大きいがを使おう。

 そして俺は体で生成される魔力を大量にナイフのアーティファクトに注ぎ込んだ。すると、アーティファクトの刃がグンと伸び、まるで太刀のような形へと変化するのだった。
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