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第4章 激突

第117話 カーラvsステラ

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 翌朝……眠りについていた俺は、突然体の内側を覗かれるような異常な感覚に襲われ目を覚ました。

「はっ!?」

 俺が起きると同時に隣で寝ていたアルマ様とメアも目を覚ます。

「うぇ~……なんか気持ち悪いのが流れてきたよ。」

「私にも来た。すごいイヤな感じのやつ。」

「二人にも……。」

 今のは一体なんなんだ?兎に角、アルマ様もメアも感じたのなら、ラピスやジャックも感じているはず。
 あの二人なら何か知っているかもしれない。

 そう思った俺は急いで着替えを済ませると部屋を出た。

「まずは近いラピスの部屋からだな。」

 俺の部屋から程近い場所にあるラピスの部屋の扉をコンコンとノックすると、寝ぼけた様子の彼女が扉を開けて顔を出した。

「むぅ~……なんだカオルか?」

「ラピス、朝早くにすまないが……今さっき変な感じしなかったか?」

「変な感じ?……あぁ、さっきののことか。」

「魔力干渉?」

「第三者が強大な魔法を使って他の者に干渉することだ。恐らく先のは、超広範囲の探知魔法だろう。まったく朝から喧しい魔法を使ってくれるものだな。」

「超広範囲の探知魔法……。」

 そんなのができるのは一人しかいない。南の魔女……ステラだ。

「あの魔力の内側を覗かれる感覚からして、恐らくは何者かの魔力を探っているのだろう。」

「あぁ、それでもう……確信に変わったよ。」

「む?」

「ありがとなラピス。今日の朝食はちょっとだけ色つけとくよ。」

「おぉ!!それは楽しみだの。」

 貴重な情報を得たところで、俺はジャックのもとへと向かう。

 すると、コツコツとゆっくりと廊下を歩いてこちらへと向かってきていた彼と鉢合わせた。

「カオル様おはようございます。」

「おはようございますジャックさん。さっきの感じましたか?」

「えぇ、ハッキリと。」

「ラピスの話だと誰かの魔力を探るための超広範囲の探知魔法らしいんですが……。」

「それで間違いありません。恐らくは……カナン様を探すためにもステラ様が使ったものかと。」

「やっぱりそうですよね。」

「国王の暗殺者を探すのに魔力を探る探知魔法は使いませんからな。」

 いよいよヒュマノの本当の目的が暴かれた。となれば、俺はカナンを守るためにできる限りのことをやるしかない。









 その頃、カーラ宅にて……。

「んっ、おっ始めたかい。」

 眠りについていたカーラは大きな魔力を感じとり目を覚ました。隣のベッドで寝ているカナンはまだ目を覚ます気配はない。

「朝っぱらからデカいのかましてくれるねぇ~。この街に住んでるヤツのことなんざ1mmも考えてない。」

 ゆっくりと体を起こしていつものローブに身を包んだカーラは、杖を手に取るとカナンに向けた。

「妨害結界……四重。」

 彼女がそう唱えると、四重に重なった結界がカナンの体を包み込んだ。

 これは魔力干渉を受けないようにするための結界魔法であり。カーラはそれを四重にして重ねがけしたのだ。

「これでよし。」

 一仕事終えたカーラが一息ついていると、彼女はこの家に向かって大きな魔力を持った何者かが近付いてきているのを感じとった。

「ステラのやつだねぇ。ま、久々に顔だけ拝んでやるか。」

 やれやれとため息を溢しながらも、カーラは家の外へと出た。すると、彼女の前には南の魔女であるステラが仁王立ちしていた。

「久しぶりだなカーラ。まさか魔王の城下町にいるとは思わなかったぞ。」

「一番ここが居心地がいいもんでねぇ。……それでアタシに何の用だい?」

 カーラは鋭い視線をステラに向けた。すると、ステラはクスリと笑って言った。

「いやなに、顔を見に来ただけだ。前にあったのは何十年も前のことだからな。」

「…………そうかい。」

 警戒を緩めずに話を聞いていたカーラに、ステラは続けて言った。

「あぁ、それと……カーラ。その家のなかにいる勇者をこちらに渡してくれるか?」

「勇者?いったい何のことだい?」

「ハハハハ、とぼけても無駄だ。お前が匿っている勇者には封印魔法とともにマーキングをしていた。さっきの探知魔法はそのマーキングを探すのに使ったってわけだ。」

「……はぁ、封印魔法にマーキング。随分勇者に執着するじゃないか。」

「ヒュマノの最大戦力、そして魔族への対抗手段だからな。……さぁ、大人しく返せ。」

「ステラ、あんたねぇ……あんな小さい子に感情や言葉を封印する魔法をかけてなんとも思わなかったのかい?」

「勇者に感情や言葉など要らない。魔族を打ちのめす……ただの兵器だからな。」

 その言葉を聞いた瞬間、カーラの中で何かが切れた。

「あぁ、そうかい。あんたらがあの子のことをどうしたいのか……嫌というほどわかったよ。」

 そしてカーラは杖をステラへと向けた。

「あの子を取り戻したいんなら……アタシを殺していきな。」

「大人しく渡す気はない……か。なら仕方ないな。」

 ステラは腰からまるで木の枝のように細い杖を取り出した。

「四方の魔女が一人いなくなるのは寂しいが、また代わりを見つければいいことだ。」

 そして杖を構えて向かい合っていた二人はほぼ同時に魔法を放った。

龍の息吹きドラゴンブレス!!」

「スパークブレイク!!」

 ステラの放った炎の魔法と、カーラの放った雷の魔法がぶつかり合い大きな衝撃波を生み出した。

 その衝撃波は魔王城まで響き渡った。

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