117 / 350
第4章 激突
第117話 カーラvsステラ
しおりを挟む翌朝……眠りについていた俺は、突然体の内側を覗かれるような異常な感覚に襲われ目を覚ました。
「はっ!?」
俺が起きると同時に隣で寝ていたアルマ様とメアも目を覚ます。
「うぇ~……なんか気持ち悪いのが流れてきたよ。」
「私にも来た。すごいイヤな感じのやつ。」
「二人にも……。」
今のは一体なんなんだ?兎に角、アルマ様もメアも感じたのなら、ラピスやジャックも感じているはず。
あの二人なら何か知っているかもしれない。
そう思った俺は急いで着替えを済ませると部屋を出た。
「まずは近いラピスの部屋からだな。」
俺の部屋から程近い場所にあるラピスの部屋の扉をコンコンとノックすると、寝ぼけた様子の彼女が扉を開けて顔を出した。
「むぅ~……なんだカオルか?」
「ラピス、朝早くにすまないが……今さっき変な感じしなかったか?」
「変な感じ?……あぁ、さっきの魔力干渉のことか。」
「魔力干渉?」
「第三者が強大な魔法を使って他の者に干渉することだ。恐らく先のは、超広範囲の探知魔法だろう。まったく朝から喧しい魔法を使ってくれるものだな。」
「超広範囲の探知魔法……。」
そんなのができるのは一人しかいない。南の魔女……ステラだ。
「あの魔力の内側を覗かれる感覚からして、恐らくは何者かの魔力を探っているのだろう。」
「あぁ、それでもう……確信に変わったよ。」
「む?」
「ありがとなラピス。今日の朝食はちょっとだけ色つけとくよ。」
「おぉ!!それは楽しみだの。」
貴重な情報を得たところで、俺はジャックのもとへと向かう。
すると、コツコツとゆっくりと廊下を歩いてこちらへと向かってきていた彼と鉢合わせた。
「カオル様おはようございます。」
「おはようございますジャックさん。さっきの感じましたか?」
「えぇ、ハッキリと。」
「ラピスの話だと誰かの魔力を探るための超広範囲の探知魔法らしいんですが……。」
「それで間違いありません。恐らくは……カナン様を探すためにもステラ様が使ったものかと。」
「やっぱりそうですよね。」
「国王の暗殺者を探すのに魔力を探る探知魔法は使いませんからな。」
いよいよヒュマノの本当の目的が暴かれた。となれば、俺はカナンを守るためにできる限りのことをやるしかない。
その頃、カーラ宅にて……。
「んっ、おっ始めたかい。」
眠りについていたカーラは大きな魔力を感じとり目を覚ました。隣のベッドで寝ているカナンはまだ目を覚ます気配はない。
「朝っぱらからデカいのかましてくれるねぇ~。この街に住んでるヤツのことなんざ1mmも考えてない。」
ゆっくりと体を起こしていつものローブに身を包んだカーラは、杖を手に取るとカナンに向けた。
「妨害結界……四重。」
彼女がそう唱えると、四重に重なった結界がカナンの体を包み込んだ。
これは魔力干渉を受けないようにするための結界魔法であり。カーラはそれを四重にして重ねがけしたのだ。
「これでよし。」
一仕事終えたカーラが一息ついていると、彼女はこの家に向かって大きな魔力を持った何者かが近付いてきているのを感じとった。
「ステラのやつだねぇ。ま、久々に顔だけ拝んでやるか。」
やれやれとため息を溢しながらも、カーラは家の外へと出た。すると、彼女の前には南の魔女であるステラが仁王立ちしていた。
「久しぶりだなカーラ。まさか魔王の城下町にいるとは思わなかったぞ。」
「一番ここが居心地がいいもんでねぇ。……それでアタシに何の用だい?」
カーラは鋭い視線をステラに向けた。すると、ステラはクスリと笑って言った。
「いやなに、顔を見に来ただけだ。前にあったのは何十年も前のことだからな。」
「…………そうかい。」
警戒を緩めずに話を聞いていたカーラに、ステラは続けて言った。
「あぁ、それと……カーラ。その家のなかにいる勇者をこちらに渡してくれるか?」
「勇者?いったい何のことだい?」
「ハハハハ、とぼけても無駄だ。お前が匿っている勇者には封印魔法とともにマーキングをしていた。さっきの探知魔法はそのマーキングを探すのに使ったってわけだ。」
「……はぁ、封印魔法にマーキング。随分勇者に執着するじゃないか。」
「ヒュマノの最大戦力、そして魔族への対抗手段だからな。……さぁ、大人しく返せ。」
「ステラ、あんたねぇ……あんな小さい子に感情や言葉を封印する魔法をかけてなんとも思わなかったのかい?」
「勇者に感情や言葉など要らない。魔族を打ちのめす……ただの兵器だからな。」
その言葉を聞いた瞬間、カーラの中で何かが切れた。
「あぁ、そうかい。あんたらがあの子のことをどうしたいのか……嫌というほどわかったよ。」
そしてカーラは杖をステラへと向けた。
「あの子を取り戻したいんなら……アタシを殺していきな。」
「大人しく渡す気はない……か。なら仕方ないな。」
ステラは腰からまるで木の枝のように細い杖を取り出した。
「四方の魔女が一人いなくなるのは寂しいが、また代わりを見つければいいことだ。」
そして杖を構えて向かい合っていた二人はほぼ同時に魔法を放った。
「龍の息吹き!!」
「スパークブレイク!!」
ステラの放った炎の魔法と、カーラの放った雷の魔法がぶつかり合い大きな衝撃波を生み出した。
その衝撃波は魔王城まで響き渡った。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる