108 / 350
第4章 激突
第108話 変異した魔物
しおりを挟む「それじゃあ早速……見てみようか。」
そう言って彼女は青いファイルを開いた。その1ページ目から、早速厄介そうな依頼が顔を覗かせていた。
「まずはこれ、変異サイクロプスの討伐依頼。報酬は白金貨3枚。」
「変異サイクロプス?」
サイクロプスといえば、俺の知っている知識だと一つ目の巨人だが……それの変異種とはいったい。
「サイクロプスは一つ目の巨人の魔物。普通のサイクロプスは青肌なんだけど、こいつは赤い肌。……魔物ハンター達からはレッドスキンなんて異名で呼ばれてる。」
「そいつは強いんですか?」
「ここ見なよ。」
そう言ってリルが指差した依頼書の項目には、推奨ランクゴールド以上と書かれていた。
「レッドスキンは普通のサイクロプスよりも遥かに身体能力が高いんだ。前に現れたときはゴールドハンター四人がかりで倒したんだよ?」
「そうなんですね、ただ……報酬もそれなりですね。」
「そっ、まぁ普通はパーティーを組んで倒すような魔物だからね~。山分けしてもある程度自分のところに残るように報酬も多めなんだ。」
「一人でそれを倒したとしたら……全部一人占めできるって訳ですか。」
レッドスキンってのがどれぐらい強い魔物なのかはわからない。でも報酬のことを考えると……一人で討伐するべきだな。
と、考えていると
「まぁまぁ、他にも依頼はあるからそれを見てからでも良いんじゃないの?」
「そうですね。」
そして俺はその青いファイルに挟まれていた色んな依頼に目を通したが……多くのものは増えすぎて手に負えない魔物の討伐依頼だった。
正直言って、数多く倒さないといけない魔物の討伐依頼は面倒くさい。時間もかかるし……。それだったらさっきのレッドスキンみたいに、一体でも驚異的な魔物を倒す依頼を複数受けた方がいい。
それを顧みて、俺は2つの依頼を受けることにした。
「それじゃあリルさん、俺……レッドスキンとブラックスネークの依頼受けます。」
ブラックスネークってのはその名の通り黒い蛇の魔物らしい。こいつも変異種らしく、レッドスキンと同等位の難易度らしい。
「えぇ?キミ……正気かい?確かにこの二つは報酬もかなり良いけど、一人じゃかなり危ないと思うよ?キミの実力はよく分かってるけどさ……。」
「大丈夫です。」
「うぅ~……まぁキミがそういうなら良いけど。絶対無理しちゃダメだからね?これギルドマスター命令だから。」
「あはは、わかりました。それじゃ時間もないんで行ってきます。」
「えっ?行くって……今からかい!?…………って、もう居ないし。」
リルが驚いてカオルのことを二度見したときには既に彼は目の前から姿を消していた。
「も~……せっかちだなぁ。」
大きなため息を吐きながら、リルはカオルが受けた依頼書に再び目を通した。
「レッドスキンとブラックスネーク。どっちも色付きの魔物かぁ。……って、んん?」
二つの依頼書を見ていて、一つ気がかりな項目があったようで、彼女はおもむろにブラックスネークの依頼書を手に取るとその項目を読み始めた。
「えっと……?尚、目標の住み処の森では変異した魔物が多数目撃されているため注意されたし……。はぁっ!?」
小さい文字で書いてあったそれをリルはカオルに伝えていなかった。
「この依頼書送ってきたのどこのギルドだっけ?後でクレームいれとかないと。こういう大事なことはおっきな文字で書いといてよ。」
伝達ミスにガックリと項垂れるリルはテーブルに顔をつけながらポツリと呟いた。
「お願いだから無事で帰ってきてよね……。」
一方その頃……カオルはというと。
「ナイン。」
「はいマスター。」
俺はギルドの裏でナインのことを呼び出した。今回の依頼、彼女の力がなければ今日中にこなすのは難しいからだ。
「早速だが、俺をファフニール火山に連れてってくれ。」
「承知しました。」
そしてナインは機械仕掛けの剣を取り出すと空間を切り裂いた。
いつものようにそこをくぐった次の瞬間時間の流れが突然遅くなった。
「っ!!」
上を見上げれば、巨大な棍棒が俺がくぐっていた場所に向かって振り下ろされていたのだ。
「ちっ……。」
流石にこれは避けられない。避ければ後続のナインが危ない。
(頼むから発動してくれよ受け身っ!!)
そう願いながら腕をクロスさせ、振り下ろされている棍棒を受け止める準備をすると、時間の流れがもとに戻っていく。
そして次の瞬間、俺の体にとんでもない負荷がかかった。
「~~~~~っぐ!!」
「っ!!マスター!!」
「大丈夫……だっ。早くそこから……。」
空間の裂け目から姿を現したナインは俺を心配して声を上げたが、すぐに俺の意図を察してそこから離れてくれた。
それを確認して、俺は棍棒を振り下ろしていた張本人に目を向ける。
「ずいぶんな歓迎だなぁ……レッドスキン!!」
「グゴゴゴ……。」
俺に向かって棍棒を振り下ろしていたのは赤い肌をした一つ目の魔物……レッドスキンだった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる