上 下
30 / 350
第1.5章 レベリング

第030話 大人買い

しおりを挟む

 いよいよ俺たちは目的の大型ショッピングセンターの前へとやってきた。俺はすでに何度もお世話になっているから見慣れている場所だが、アルマ様やラピスにとってはかなり目を惹く建物だったらしい。二人は遠目で見ながらもいったいどんな建物なのかと期待を膨らませていた。

「お~っ!!おっきい!!アルマこんなの見たことない!!」

「我もこのような建築物は初めて見たな。」

「カオルあの中に何があるの?」

「あの中では食料品や衣服などなど日用品が多数売られています。」

「へぇ~!!面白そう。」

「衣服には興味なんぞはないが、食料品には興味がそそられるのだ。」

 二人がそわそわし始めたので、早速中へと入ることにした。

 中に入ると、目の前には巨大な食料品売り場が広がっていた。俺が求めている調味料もこの売り場にあるはずだ。

「ふわぁぁぁぁっ……すごいいろんなのがあるねカオル!!」

「お、おいカオルよ!!そこに置いてある果物のようなものは食っても良いのか?」

「ダメに決まってるだろ。」

 ラピスは今にも陳列されている果物に飛び付きそうになっているが、なんとかそれを抑えつける。流石に買ってもいないものを食われたらたまったものではないからな。

「その代わり、食べたいと思ったものは…………まぁ10個位までなら買ってやる。」

「おぉ!!太っ腹だの!!」

 喜ぶラピス。一方アルマ様は指を咥えながらおずおずと問いかけてきた。

「カオル、アルマもいい?」

「もちろんです。お好きなものを……。」

「えへへ、やった~!!」

 すると、パタパタと走ってアルマ様はスーパーマーケットの中へと飛び込んでいってしまった。

「あっ!?アルマ様!!」

「カオル様、魔王様は私めが……。」

 アルマ様の後ろをジャックがついていく。彼がついているのなら安心だろう。

 ホッと一安心していると、両手いっぱいにいろんなものを抱えたラピスがやって来た。

「ラピス……10個までって言ったよな?」

「10個なんて小さい数字では収まりきらなかったのだ。」

 しょぼんとしながらラピスは言った。

「はぁ……まぁいいや。」

 まぁラピスの気持ちはわからんでもない。見たこともない物を大量に目の前にすれば、欲しくなるのは必然のことだからな。

 そして俺はラピスが持っていた果物や野菜、肉、お菓子の中からいくつか手にとって買い物かごに放り込んだ。すると、ちょうどラピスの手に持っているものが約10個ほどまで減った。

「これはもともと買おうと思ってたからな。残ったそれで10個ってことにしてやるよ。」

「ホントか!?」

「あぁ。」

「むふふふふふっ♪やったのだ。」

 ひどく上機嫌になったラピスを連れて調味料売り場へと向かう。そして様々な調味料を買い物かごに放り込んでいると、アルマ様とジャックがカートを押してやって来た。

「カオル!!ここすごいいっぱい美味しそうなものあるんだね。ついいっぱい持ってきちゃった。」

 そう口にしたアルマ様が押していたカートにはぎっちりとお菓子等々が詰められていた。そしてとなりにいたジャックが申し訳なさそうに頭を下げた。

「申し訳ありませんカオル様……。」

 ジャックは立場上、アルマ様に物申すことが難しい。だから彼がアルマ様を止められなかったのも容易く想像がつく。

「大丈夫ですよ。」

 俺がそう了承すると、ラピスが驚きながらこちらを向いた。

「あれはよいのか!?」

「なんだかんだラピスだっていっぱい持ってきただろ?」

「むぐぐぐ、確かにそうだが……。」

「ま、お互い様ってことで文句は無しだ。」

「うぐぐ……わかったのだ。」

 渋々ラピスも納得させたところで俺は会計へと向かった。

 そして店員の口から告げられた金額は……。

「合計で3万4千2百円になります。」

 おおぅ……俺の買った調味料とかだけで一万いくかいかないかのところだったと思うが、それ以外でけっこう出費が嵩んだな。
 まぁ、今ではこのぐらいの出費はどうってことはない。何せ貯金はまだまだあるからな。

 ちなみにどうやってあちらの世界のお金をこちらの世界のお金に変えているかというと、ジャックがというもので変えてくれている。
 あちらの世界の金貨を対価として捧げると、こちらの世界の一万円札に交換されるという仕組みらしい。

 なんとも便利な技だよな。

 会計も終えたところでショッピングセンターを後にして帰路についた。

「カオル、こんなにいっぱいありがと~。」

「大丈夫ですよ。」

「ホントは我ももう少し欲しかったのだがの~。」

「また次に来たときに買ってくれ。ただし、今度は自分のお金で買えるようにな。」

 そんな会話を挟みながら歩いていて、いよいよジャックの屋敷が見えてきたところで異変が起こった。

「ん!?」

 突如として俺以外の全ての時が止まったのだ。どうやらこの世界でもパッシブスキルの危険予知は有効らしい。

「この世界で危険予知が発動するのか。」

 まぁこのウイルスのせいで犯罪率は著しく上昇していたし……この世界も前ほど安全じゃなくなっているってことだな。
 さてとまぁ、そんなことは置いといてどうしてこんなところで危険予知が発動したんだ? 

 キョロキョロと辺りを見渡してみるが、特にこれといって危険そうなものは見当たらない。

「危険予知はこれから先の未来を予測して発動している。ってことは……もしかして。」

 みんなよりも先に少し進んでみると、細い十字路の左右の道に鉄パイプや角材等を手にしている集団が待ち構えているのが見えた。

「なるほどこいつらか。」

 いかにも野蛮な格好をしたそいつらの腕には蠍の刺青のようなものが……。

「蠍の刺青?確か……前にニュースで見たな。」

 この世界にウイルスが蔓延し始めて、問題を起こし始めた半グレ集団がいる……って確かニュースで報道していたのを見たことがある。そしてその半グレ集団の特徴は体のどこかに蠍の刺青を彫っているということも……。

 恐らくさっき買い物をしているときに目をつけられたか。あれだけ大人買いをしていたからな。俺達を金持ちだと思って待ち構えていたのか。

「厄介なのに目をつけられたな。」

 まぁ、厄介なのに目をつけられたからといってもやることは変わらない。

 パキパキと指を鳴らすと、俺は両方の拳を軽く握った。

「全力でやったら死ぬかもしれないからな。この最初の一回だけは手加減してやるよ。」

 二度目も襲ってきたら……その時は手加減しないかもしれないがな。そして俺は半グレ集団の中へと歩いていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...