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第1.5章 レベリング
第027話 スケイルフィッシュ料理
しおりを挟む獲ってきたスケイルフィッシュを調理するために、俺はギルドに隣接している酒場の厨房へと赴くと収納袋の中から調理器具一式とスケイルフィッシュを一匹取り出した。
「さてと、まずはこの硬い鱗をとらないといけないな。」
この魚は細かくて硬い鱗がびっしりついている。普通の鱗かきでとれるとは到底思えない。それ以外に鱗をとる方法にすき引きという方法があるが、この硬い鱗に包丁は入るかな?
試しに鱗と鱗の隙間に包丁を這わせるように滑り込ませると、意外にもスッ……と包丁が入った。
「おっ?すき引きなら全然いけそうだな。」
そのまま包丁を大きく動かして鱗と皮一枚をすききり、流れで全体の鱗をとりきった。
「よしよし、鱗はこれで大丈夫。後は内臓を出して頭を落とそう。」
お腹に切れ込みをいれて、内臓を掻き出すと意外にも嫌な臭いはしない。肉食魚の内臓は匂う事があるんだが……それもない。これなら身の方に臭みが移ってるってことも無さそうだ。
そして頭を落としてお腹を洗い、三枚に下ろすと綺麗な白身が姿を現した。
「綺麗な白身だな。下ろしていた感じ身質も硬い訳じゃないし、普通に食べられると思うけどな。」
まぁ食べるといっても生では無理だろう。湖や川などの淡水域に住んでいる魚は基本的には生ではたべられない。あくまでもこれはあっちでの常識だが……こちらでも一応火を通した方が良いだろう。
こちらの世界の魚に寄生する生物のことはわからないからな。こっちの世界にも魚の危険性とかをまとめた本なんかがあればいいんだが……。あとで探してみようか。
「火を通すとしたら……綺麗な白身だし、フィッシュアンドチップスにでもしてみるか。」
フィッシュアンドチップスはイギリスの国民的な料理だ。白身魚のフライに揚げたイモを添える単純な料理だが、この料理の歴史はとても長く、数多くの人から愛されていた。
骨をとり、ある程度の大きさの切り身にすると下味をつけてパン粉をまぶし、高温の油へと投入する。
そして、綺麗な狐色に揚がったらフライドポテトを添えて完成だ。
試しに一つ味見してみるか。
カリッと揚がったスケイルフィッシュのフライにケチャップとマヨネーズをつけて口へと放り込んだ。
「んっ、臭みもないし、身質はふわふわで美味しいじゃないか。」
これを捨てるなんてとんでもない。
リルとラピス用にスケイルフィッシュのフィッシュアンドチップスを盛り付けると、酒場で待つ彼女達のもとへと向かった。
「あれ、もうできたの?」
「意外と簡単に捌けたので。それに調理もシンプルに済ませましたから。」
俺は二人の前にスケイルフィッシュのフィッシュアンドチップスを置いた。すると、ラピスは目を輝かせる。
「おぉ~っ!!なんとも美味そうな匂いだ。カオル!!これはなんという料理なのだ?」
「これはフィッシュアンドチップス。白身魚のフライとフライドポテトを盛り合わせたシンプルな料理。普通の酒にもビールにも合う料理です。」
「へぇ~っ!!じゃあ私はビールと一緒に飲もっかな~♪」
ウキウキでリルは樽に入ったビールを注ぎに行った。そして取り残されたラピスは俺に向かって問いかけてきた。
「びーる?なんだそれは。」
「ビールってのは酒……まぁ気分が良くなる飲み物だな。」
「おぉ!!それは面白そうだ。我も飲むぞ!!」
俺から話を聞いたラピスはリルのもとへと向かう。そして二人はジョッキにビールをなみなみと注いで戻ってきた。
「さてとっ、それじゃあさっそく食べよっかな~。いただきま~す。」
「我も食べるのだ!!」
二人は早速スケイルフィッシュのフライにケチャップをつけて口の中へと放り込んだ。リルは美味しそうにそれを食べながら、口に残る油をビールで一気に流し込んだ。
「ぷっ……はぁ~っ、これ美味しいじゃん!!ビールに最高に合うし、これなら酒場で人気メニュー間違いなしだね!!」
凄まじい勢いでビールとフィッシュアンドチップスを食べ進めていくリル。そんな彼女を真似してラピスもフライを食べたあとに、口に残る油を流し込むべくビールを口に含んだが……その瞬間。
「ふぐっ!?」
突如としてラピスは口を押さえて、顔色が悪くなった。なんとかゴクンと飲み込むと、ラピスはリルに視線を送りながらビールを指差して言った。
「お、おぬし!!こんな苦いものを飲んでいるのか!?」
「え?そうだけど?」
驚愕の表情を浮かべるラピスに、ケロリとしながらリルは答える。
「あはは、まだまだこっちは子供みたいだね~。言うなればこれは大人の味ってやつなのさ♪」
「ぐぬぬぬぬぬ……。我はそんな苦いものは要らんのだ!!」
「じゃあキミのビールも私がもらうね~。」
ビールを飲まずにフィッシュアンドチップスのみを食べ進めているラピスからビールを奪うと、リルは自身の酒豪さを見せつけるように、ジョッキに注がれたビールを一気飲みして見せた。
それをラピスは唖然としながら見ていた。
「ぷは~っ!!いや~最高だね。」
「お、おい!!カオル、ビールとは気分が良くなる飲み物だと言っておったではないか!!我は美味しいとは思えんぞ!?」
「あ~……まぁビールってのは結構好みが別れる飲み物だからな。ラピスは合わなかったってだけさ。」
「むむむ……そうなのか。」
「別に酒なんて無理して飲む必要はないから、飲めなくても気負うことはないぞ?」
「だが我も飲みたいのだ!!」
「う~ん、そうか。じゃあちょっと待っててくれ。」
俺はドリンクや酒などが無造作に置いてあるカウンターに向かうと、いくつかの酒とジュースを混ぜた。それをラピスに持っていく。
「ほれ、これなら飲めると思うぞ?」
「……苦くないか?」
「苦くない。むしろちょっと甘いかもな。」
「ふむ……。」
訝しげに俺が作った酒を見つめると、ラピスは恐る恐るそれを口に含んだ。すると、カッ!!と目を見開く。
「おお!!美味しいではないか!!これなら我も飲めるぞ!!」
よほど美味しかったのか、ゴクゴクと一気に飲み干してしまうラピス。そして彼女は飲み終えたグラスを俺に返してきた。
「カオルもう一杯だ!!」
「はいはい。」
「いい飲みっぷりだね~。じゃあ私ももう一杯ぐらいビール飲もっかな~。」
そうしてスケイルフィッシュの試食会は朝方まで続くのだった。
次の日からギルドの酒場のメニューにはスケイルフィッシュのフィッシュアンドチップスが並ぶようになり、一躍人気メニューとなった。
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