腐りかけの果実

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
82 / 88
二節 開花

4-2-4

しおりを挟む

 やることも特になく怠惰な日常を過ごしていたエリーのもとへ突然リースが訪れる。

「やぁ、エリーずいぶん暇そうじゃない?」

「ん~?そりゃあ暇にもなるぜ。最近吸血鬼どもも大人しくしてるみてぇだし、やることがねぇんだからよ。」

「んっふっふ~、その暇な時間も今日で終わりだよ。これを見たまえっ!」

 そしてリースはパソコンの画面をエリーに見せる。その画面では何かの動画が再生待ちの状態になっている。

 リースがマウスを操作してその動画の再生ボタンを押すと、動画が再生され始めた。

「ん?こいつは……日本の動画じゃねぇな。この特徴的なスーツ……ロシアンマフィアか?」

「そのとーり、これはつい先日起きたロシアンマフィアの抗争の現場を捉えた監視カメラの映像だよ。」

 画面に映る2つのマフィアの組織は、激しい銃撃戦を繰り広げている。その最中、片方の組織から一人の男が銃弾飛び交うその場を堂々と体をさらけ出して歩き始めたのだ。

「なんだコイツ。」

 当然何の遮蔽物もない場所を歩いていたその男は、すぐに体中を銃弾で貫かれてしまい仰向けに倒れ込んだ。
 しかし、全身を銃で貫かれたのにもかかわらず男はゆっくりと立ち上がると、再び歩き始める。

「おいおい、コイツどうなってやがる。」

 再び銃弾で貫かれるが、今度は倒れることなくゆっくりと歩いて、敵のマフィアの構成員たちの目の前まで歩み寄った。
 その次の瞬間男は目の前にいた敵の構成員の顔面を鷲掴みにすると、すさまじい力で首を素手でもぎ取ってしまったのだ。そして続けざまに、周りにいた他の構成員たちを次々に撲殺していく。

 ある者は顔面を殴られた瞬間に頭部がはじけ飛び、またある者は胸をパンチで貫かれて死んでいく。

 あまりにも人間離れしている虐殺劇に、エリーはぽつりと言葉を漏らした。

「コイツ、吸血鬼か?」

「正直その可能性は高いよね。でも、吸血鬼特有の特殊能力を使っている描写がないんだ。」

「確かに……。見てる限りとんでもなく高い身体能力でゴリ押してる感じはするな。」

 そして片方の構成員が皆殺しにされてしまうと、映像は終わった。

「ほんで、この映像でやべぇやつがいるってのはわかったが……こいつらがどうだってんだ?」

「実はこの尋常ではない力を持っている男が所属しているマフィアってのが、以前エリーが片付けてくれた半グレと繋がってたやつらなんだよ。」

「あ~、そういやそんな奴もいたなぁ。」

「でもって本題だけど、彼らがつい先日この日本に上陸したって情報を掴んだわけだよ。で、この映像に映ってた男も来てるっぽいんだ。」

「ロシアンマフィアがわざわざ日本にねぇ~……何を企んでんだか。」

「真の狙いはわからない。でも一応ツバキの旅館を狙ってた半グレと関りがあった組織だから、エリー達には彼らのことを調べてほしい。で、必要だったら排除してかまわない。」

「そういうことなら任しとけよ。メイと二人して退屈してたんだ、やってやるぜ。」

 そしてすぐにもエリーとメイの二人は動き始めるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...