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二節 対吸血鬼専門部隊
3ー2ー5
しおりを挟むエリーが吸血鬼のサンプルを一ノ瀬へと渡してからしばらく時が流れた。
その間にも吸血鬼が起こしたと思われる事件が何度か世間を騒がせたが、二人へと一ノ瀬から出撃の要請が来ることはなかった。
そしてある日を境にぱったりと吸血鬼による事件も起こらなくなったのだ。
「どうなってやがる、前はあんなに毎日吸血鬼がやった事件が報道されてたってのに……すっかりなくなりやがった。」
「平和なのはいいことだけどね、なんか不気味……。少し探りを入れてみようかしら。」
「ん、頼むわ。」
そしてメイはラボにあるハッキング専用のコンピュータールームへと向かって行った。
「さて、アタシはどうすっか……。」
煙草を取り出して火をつけ、吹かしながらソファーの背もたれに深く背中を預けるエリー。そんな彼女のもとへリンが歩み寄ってきた。
「エリーお姉ちゃん。」
「んあ、リンか。どうした?」
「リースお姉ちゃんと練習して、すごいことできるようになったの。だから、見てほしくて。」
「すごいことか、見せてみな。」
「うん!!」
そしてリンは血の入った輸血パックのようなものを取り出すと、それに向かって意識を向ける。すると、驚くことにその血が突然発火し、メラメラと燃え始めたのだ。
「おぉ!?こいつはすげぇな。」
「えへへ、動かしたりもできるよ。」
そう言うとリンは自由自在にその炎を操って見せた。
そしていろいろな形の炎を変化させると、最後にリンは自分の前にそれを持ってくる。それを両手でパンと挟み込むと、炎は一瞬にして消え去った。
「ど、どうかな?」
「いや、普通にすげぇぜ?大道芸人もビックリの芸当だ。」
エリーはリンの頭を撫でる。するとそこへリースもやってきた。
「すごいでしょリンちゃんの力。」
「あぁ、血液を火に変える力……扱い方によっちゃかなりやべぇ。」
「そう、それも十分スゴイんだけど。それだけじゃないんだな~、リンちゃんの力は。」
「まだあんのか?」
「エリーも見たんでしょ?リンちゃんの両親の最後をさ。」
「あ~……。」
エリーはリンを保護したときのことを思い出した。あの時、リンの両親は血の針のようなもので壁に貼り付けになって死んでいた。
「リンちゃんの真に恐ろしい力は、自分に危害を加えようとする存在に対しての自動反撃さ。」
「ってことは力が二つあるってことか?」
「そういうことになるね。多分、吸血鬼の中でも稀なケースなんだと思う。」
「ほぉ~……。」
「今でこそ大丈夫だけど、初めは採血も大変だったよ。針を刺そうとすると、こっちに針が飛んでくるんだから。」
苦笑いしながらリースは言った。
「でも、今はもう大丈夫だもんねリンちゃん。」
「うん!!」
撫で撫でとリースはリンの頭を撫でる。すると、思い出したようにリースは言った。
「あ、そうそう。そろそろリンちゃんのお菓子無くなってきたから、タバコ買うついでにエリー行ってきてくれない?」
「ん、わかった。」
「お願いね~。」
特にやることもなかったエリーは、リースのお使いを頼まれた。
そしてコンビニで数日分のお菓子と自分のタバコを購入したエリーが、帰ろうとすると……。
「久方ぶりだな。傭兵エリー。」
「っ、テメェはッ!!」
彼女の前に現れたのは憎き吸血鬼であるヴラド。戦闘モードに切り替わったエリーに、彼は落ち着くように促した。
「今は戦いに来たわけではない。少し話をしにきたのだ。」
「…………なんのつもりだ?」
「ん、わかってくれたようで結構。ついてこい。」
エリーは警戒しながらもヴラドの後を追うのだった。
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