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二節 対吸血鬼専門部隊
3-2-1
しおりを挟む対吸血鬼専門部隊へと所属することになったエリーとメイ。二人は他の部隊メンバーと違い、独立して動く遊撃部隊のような立ち位置にいた。
そのせいもあってか、なかなか彼女達に一ノ瀬から出撃の連絡は来なかった。
しかし、今日この日やっとメイの端末に一ノ瀬から連絡が入った。
「こちらメイ、一ノ瀬さんね?」
『は、はい。突然で申し訳ないのですが、急ぎお二人に出撃をお願いしたいのです。』
「急ぎで……ねぇ。何があったの?」
『実は、吸血鬼と思われる人物の家を特定できまして、そこに黒井さんの指揮のもと部隊が突入したのですが……その部隊と連絡が途絶えてしまったのです。その調査、及びできれば吸血鬼の捕獲をお願いしたいのですが。』
「なるほどね、わかったわ。位置情報だけこっち送って、あとはエリーが向かう。周辺の封鎖はそっち任せるわ。」
『お願いします。』
そしてメイは一ノ瀬から詳細な位置情報を受け取ると、すぐにエリーのもとへと向かう。
「エリー、仕事よ。」
「んぁ?やっとかぁ……待ちくたびれたぜ。で、内容は?」
「吸血鬼の捕獲。場所はこっちでナビゲートするわ。」
「りょ~かいっと!!」
エリーは身を預けていたソファーから起き上がる。そしてパイルバンカーの入ったアタッシュケースを手に取った。
「ほんじゃ、いっちょ仕事すっか。」
「一応補足情報として頭に入れといてほしいけど、先に向かった他の部隊とは連絡がつかなくなったらしいわ。」
「ハッ、まぁそいつ等が生きてたら助けてやるよ。」
「えぇ、お願い。」
メイに見送られながら、エリーは別の対吸血鬼専門部隊が消息を絶ったという場所へ向かうのだった。
エリーがその現場にたどり着くと、そこには凄惨な光景が広がっていた。
「うぉ……こいつはヒデェな。」
彼女の前には数え切れないほどの死体が散乱していた。武装している死体が殆どのため、エリーはこの死体が消息を絶った部隊メンバーだと確信した。
「メイ、聞こえるか?」
『聞こえてるわ。』
「現場に着いたが……とんでもねぇ量の死体がある。多分先に来てた部隊の奴らだ。」
『生存者はいない?』
「今のところは。」
『わかった、それはこっちで報告しとく。エリーは調査をお願い。』
「了解。」
エリーは無線を切ると、腕にパイルバンカーを装着した。
「うしっ、行くか。」
死体を踏み越えて、先へ先へと彼女は進んでいく。すると徐々に彼女の鼻を突く、強烈な血の匂いが強くなっていった。
「っ、この先にいるな。」
強くなる匂いの方向へと歩みを進めると、その先で彼女は二人の男を発見した。
そのうちの一人にエリーは見覚えがあった。
「よぉ、久しぶりだな。」
エリーがそう声を掛けると、男がぐるりと首を傾け視線を向けてくる
「アハァ?お姉サン、ひっさしぶりィ~。また遊んでクレル?」
その男はメイ達を襲撃し、芦澤カナを強奪していった吸血鬼だった。
男はエリーの姿を見るやいなや、片手で持ち上げている別の男の首を容赦なくへし折った。
「かぎゅっ!!??」
「ア、壊れちゃっタ。同じ吸血鬼デモ、やっぱりモロイ。」
ケタケタと笑いながら男は、首の骨が折れた別の吸血鬼を無造作に放り投げた。
「デモ、お前はもういいんダ。とっても、面白イおもちゃが来てくれたカラ!!」
「ハッ、勘違いすんな。遊んでやるのはアタシだよ!!」
腰から銀でできたナイフを抜き、エリーは男へと向かう。
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