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第三章 一節 切り開かれた未来
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しおりを挟むエリーとメイの他に会議室に招かれていたのは、先ほどエリーにボコボコにされた男とその上司の男、そして一ノ瀬の計5人だった。
対吸血鬼を謳っている割には集まっている人数が少ないことに、エリーとメイの二人が違和感を覚えながらも、一ノ瀬が司会を務めブリーフィングが始まった。
「そ、それでは対吸血鬼専門部隊……第一回目のブリーフィングを始めます。ご存知かと思いますが、部隊の総括を務めます一ノ瀬です。作戦行動のリーダーの黒井さん、自己紹介お願いします。」
「了解した。俺の名前は黒井、今回結成された対吸血鬼専門部隊の指揮を一任されている。よろしく頼む。」
そう自己紹介した黒井に、エリーがあるツッコミを入れた。
「部隊っつう割には、集められてる人数がすくねぇな。来てねぇ奴らがいるんじゃねぇの?」
「その通り、今回参加しているのは俺と直属の部下の坂本だけだ。他の部隊のものには俺からブリーフィングの内容を追って伝える手筈になっている。」
「部隊のトップだけ来たっつうわけだ。ま、アタシらも全員の名前と顔覚えるつもりなんざサラサラねぇし、丁度いいわ。」
そう言ってエリーは煙草を取り出すと、口に咥えて火をつけた。すると、先ほどエリーのボコられた坂本が口を開いた。
「お、おいここは禁煙……。」
「あ゛?」
「…………。」
ここが禁煙であることを注意しようとした彼だが、エリーにすごまれると一瞬で黙り込んでしまう。
「ん、続けようぜ。アタシらの自己紹介はいいだろ?テメェらも知ってんだし。」
「……そうだな。一ノ瀬君次に進んでくれ。」
「はい、では最初にこちらをご覧ください。」
すると一ノ瀬が一人一人に書類を手渡し始める。そこには今まで起こった吸血鬼によるものと思われる事件のおおよその件数が書き記されていた。
「この資料に目を通していただければ、最初に起こった芦澤カナによる吸血事件を皮切りに、爆発的に事件が増えているのがお分かりいただけるかと思います。政府はこの事態を重く受け止め、吸血鬼と称される人物の確保、処理を決定しました。」
「確保に処理ねぇ。」
「小耳にはさんだ話だが、当初芦澤カナの確保を政府は彼女たちに任せたらしいな?それは事実なのか?」
黒井の質問に一ノ瀬はうなずいた。
「はい、間違いありません。」
「では傭兵エリー、その芦澤カナはどうなったのだ?」
「それに関しては私から説明するわ。」
黒井の質問に対して口を開いたのはメイ。
「私たちは政府から依頼を受けて確かに芦澤カナを確保した。でもね、移送中に新手の吸血鬼に襲われて身柄を奪われてしまったのよ。」
「その話を信じろと?」
「別に信じなくたっていいけど、嘘をついたって私たちには何の得もないわ。」
「……まぁ良いか。それで、吸血鬼の特徴は?もちろん捕獲できたのだから対抗策もあるのだろう?共有を頼む。」
「その前に……一ノ瀬さん、これ受け取ってくれる?」
そしてメイは一ノ瀬へと一枚の紙を手渡した。
「は、はい……ってこ、これは。」
「吸血鬼に関しての情報料はもちろんもらうわよ。私たちだって命がけで入手した情報だし、それがあれば吸血鬼から国民が守られるのよ?安いものよね?」
「お、お前たちというやつはっ!!」
「おっと、黙ってな。」
立ち上がろうとした坂本へ、すぐさまエリーが銃を抜いて突き付けた。
「テメェらは命令でやってんのかもしれねぇが、こっちはビジネスで参加してんだ。テメェの境遇とアタシらの境遇を履き違えんなよ。」
「ぐっ……。」
険悪な雰囲気が漂う中、一ノ瀬は何やら端末を操作する。するとメイの端末に通知が入った。
「情報料……確かに納付しました。これでいいでしょうか?」
その言葉にメイはにっこりと笑った。
「うん、確かに確認したわ。それじゃあ吸血鬼についての情報共有と行きましょうか。」
そしてメイは吸血鬼についての対策法や有効手段などなどを全員に共有した。
彼女の話を聞いて黒井は興味深そうに口を開く。
「弱点は銀……か。となれば新しい兵器が必要だな。開発部門に掛け合っておこう。それでは一ノ瀬君、我々は開発部門の研究者と話をつけねばならない。十分な情報は得られた、本日のブリーフィングはこれにて失礼する。」
すると黒井と坂本はさっさと会議室を出ていってしまう。彼らの失礼な態度を一ノ瀬が彼らに代わって二人に謝罪する。
「す、すみません彼らはお二人にあまりいい印象を抱いていないようでして。」
「ん、別に構いやしねぇ。ほんじゃアタシらもいくぜ?指令はメイの端末に飛ばしてくれ。」
そしてエリーとメイの二人も会議室を出ていった。そこに取り残されたのは一ノ瀬ただ一人だけだった。
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