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第三章 一節 切り開かれた未来
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しおりを挟む後日、エリーとメイの二人は一ノ瀬に指定されたブリーフィングを行うという場所にやってきていた。
「ここね。」
「まぁ予想通り政府関係の建物だわな。」
二人が建物の前にたどり着くと、中からスーツを着た女性が二人のもとへ駆け寄ってきた。
「お、お待ちしておりました。初めまして、私連絡させていただいた一ノ瀬と申します。傭兵のエリーさんとメイさんですね?」
「えぇ、そうよ。」
「本日は来ていただきありがとうございます。どうぞ中へ……。」
「ちょっと待て。」
中へといざなおうとする一ノ瀬にエリーが待ったをかける。
「ど、どうしました?」
「実はよ、メイにゃ黙ってたが……アタシら一回テメェらの暗殺部隊に狙われてんだ。」
そう言ってエリーは旅館へと襲撃をかけてきた集団が持っていた銃火器携帯許可証を、一ノ瀬へと投げつけた。
「こ、これは……。」
「一回殺そうとしといて、都合が悪くなりゃあ手を借りようとするのか?そいつは自分勝手が過ぎるってもんだよなぁ?」
声に怒りをあらわにさせながらエリーは銃を抜いて一ノ瀬に突き付ける。
「たとえアタシらに仕向けた奴がテメェじゃなかったとしても、テメェだってその政府の組織の中の一人だ。どう責任取る?ん?」
そう問い詰めると、一ノ瀬はその場で両膝を地面につけて額を地面に擦り付ける勢いで二人に向かって土下座した。
「ま、誠に申し訳ありませんでした!!知らなかったでは済まされないことは重々承知です。こちらの都合をお二人に押し付けてしまったこともお詫びします!!ですが、今の日本にはお二人の力が必要なのです!!どうか……どうかっお願いします!!」
誰が見ても全力の土下座。それを躊躇なくやってのけた一ノ瀬に、エリーは銃をしまうと手を差し伸べた。
「ん、アンタの気持ちは伝わったぜ。前任の不愛想な野郎よりかは信頼できそうだ。その土下座に免じて協力してやる。」
「あ、ありがとうございます!!」
顔を上げた一ノ瀬の額からは少し血が流れている。地面に強く頭を擦り付けたせいだろう。
「そんじゃあ案内してくれよ、ブリーフィングやるんだろ?」
「はいっ!!ささ、こちらへどうぞ。」
そしてエリー達は一ノ瀬に連れられて建物の中を歩いていく。その最中にメイがエリーに言った。
「ちょっとエリーさっきの話、なんで私に言ってくれなかったの?」
「あ?んなもん決まってんだろ、メイに余計な心配かけたくなかったからな。」
けらけらと笑うエリーにメイは少し顔を赤くした。
「も、もう、そういうのちゃんと報告してよね……。」
「へいへい。」
そんなことを話しながら二人は会議室のような場所に連れてこられると、一ノ瀬に中に入るように促された。
「こちらです中へどうぞ。」
「…………。」
しかし、エリーはなかなか中に入ろうとしない。そしてチラリと一ノ瀬のほうに視線を向けると言った。
「アンタと違って中にいるやつはアタシらに協力的じゃねぇみてぇだな。」
「へ?」
ぐいっと一ノ瀬の襟元を鷲掴みにするとエリーは会議室の扉を開けて、彼女のことを放り込んだ。
「きゃあっ!?」
「っ動くな!!……って一ノ瀬さん?」
中に放り込まれた一ノ瀬に向けられたのはドアの真横で待ち構えていた男の銃口。
ポカンとしている男の手にエリーの手が伸びると、あっという間に銃を奪われ、逆に銃を突き付けられてしまう。
「おいおい、随分アタシらを歓迎してくれてるみてぇだなぁ。お?コラ。」
「うっ……。」
ぐりぐりと男の額に強くエリーは銃口を押し付ける。するとジワリと血が滲み始めた。そしてエリーがそうやって男を虐めていると、席についていた貫禄のある男が口を開く。
「傭兵エリー、こちらの部下の無礼をお詫びしよう。どうかその銃を下ろしてはくれないか?」
「テメェの部下なのか?ちゃんと教育してくれよ。」
エリーはドン!!と男を突き飛ばして転ばせると、すぐに腰からナイフを抜いて転んでいた男の顔の真横スレスレに突き刺した。
「おいテメェ、次はねぇぜ?」
「わ、わかった!!す、すまなかった!!」
「あ?口の利き方がなってねぇなぁ。申し訳ありませんでした。だろ?」
「くっ、も、申し訳ありませんでした。」
「ふん、まぁ許してやるか。」
深く床に突き刺さったナイフを抜くと、男から奪った銃をエリーはあっという間にバラバラに分解してしまった。それを男に前に落とす。
「あとは自分で組み立てな。」
そう言い残し、エリーはドッカリと椅子に座り、机の上に足を乗せた。
「さ、ブリーフィング始めようぜ?」
こうしてひと悶着を挟んだのちブリーフィングが始まった。
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