14 / 88
二節 交錯する思惑
1-2-1
しおりを挟む
先日の戦闘でエリーの負ったケガが癒えたころ、エリーはリースの研究室へと呼び出されていた。
エリーが席に着いたのを確認するとリースが語り始める。
「さて、それじゃあ今日集まってもらったのは他でもない。吸血鬼についての見聞を広めてもらおうと思ってね。」
「吸血鬼についての見聞ねぇ。」
「先日捕らえた芦澤カナから得られた情報がいくつかあってね。端的に言えばそれの共有さ。まずエリーも実際に戦ったからわかっているとは思うけどどうやら吸血鬼っていうのは異常な再生能力を有しているらしい。」
「あぁ、銃弾をぶちこんでもケロッとしてやがったな。」
「うん、だけどある金属による攻撃ではある程度のダメージが期待できるらしい。それがこれさ。」
そう言ってリースが取り出したのはエリーのバイクに取り付けられていた武装のブレードだった。それを見てエリーもあることに気が付いた。
「そういやそのブレードで攻撃した時は再生してなかったな。」
「そう、古来から吸血鬼ってのは銀製の武器で殺すって手法が現代まで伝わっていてね。迷信かどうかを確かめるがてらこれを作ったのさ。結果はエリーも知る通り効果は抜群だった。おそらくこれから吸血鬼に対する有効な攻撃手段はこういう銀製の武器になるだろうね。」
ちなみに……と続けてリースは銀と同様に古来から吸血鬼に効くとされているニンニクや十字架、聖水などのものは一切効果が認められなかったとも説明した。
「それと、吸血鬼化すると超能力的なものにも目覚めるらしい。芦澤カナの場合自分の血を操り、形を変化させることができたみたいだ。これに関してはサンプルが彼女一人しか調べられていないからすべてに吸血鬼に当てはまるとはわからない不確定要素だけど。」
「吸血鬼ってやつの生態を調べるにはまた違う吸血鬼をとっ捕まえてこねぇといけねぇって話か。」
「そうだね、まだまだ研究が必要。ってわけで、今度は別のサンプルを捕まえてきてほしいな?」
キラキラと目を輝かせ、エリーへと視線を向けるリース。
「ったく、簡単に言ってくれるぜ。」
「前回はほら、普通の銃火器が効かないってのを知らずに挑んだわけだから。エリーがちょっと怪我しちゃったけど、今回はお陰でちゃんと準備できたよ。」
そう言うと、リースは机の上にガンケースを置いた。それを開けると、中には流通している銃とは少し異なる形の1丁の重厚なハンドガンが入っていた。
「ふん?こいつは……正規のメーカー品じゃねぇな。オリジナルか?」
「そ、設計から全て私がやったものさ。持った感じどうかな?」
「悪くねぇ。口径もデカいし、ハンドガンってよりかはマグナムに近い。」
「そのとーり!名付けて対吸血鬼用ハンドマグナムMk.1!」
「そのまんまじゃねぇか。」
「だってそれ以外に名前が思いつかなかったんだもーん。あ、銃弾はこれね。」
リースはカートンボックスを机の上に置き、その中から大口径の銃弾を1つ取り出す。
「これも対吸血鬼用に調合したオリジナルの銃弾さ。炸裂式で中には水銀が入ってる。銃弾の貫通力はあんまりないけど、体内で爆発することを想定したつくりになってるんだ。」
「ほぉ……。」
エリーはリースの持っていた銃弾を受け取ると、マガジンに一発装填した。
「試し撃ちは別室のシューティングレンジでやってね。あ、でも弾はまだそんなに作れてないからほどほどにね?」
「わかった。」
エリーは握り心地を確かめた後、マグナムにセーフティーをかけて服の内側のホルダーへとしまう。
「そういやメイとバリーの奴はどこいった?今朝から姿が見えねぇが……。」
「二人は今芦澤カナの身柄を渡しに行ってるよ。」
「あいつらだけで大丈夫か?」
「問題ないさ、最悪の場合対応できるようにバリーには武器も渡してある。」
「ならいいんだが。」
エリーは懐から煙草を一本取りだすと口にくわえた。そんな彼女にリースがライターを近づけてきた。
「ん。」
咥えた煙草をライターに近づけたエリーだったが、彼女が予想していた動きとは裏腹に、リースはパッとエリーの咥えていた煙草を奪うと、自分の口に咥えそれに火をつけた。
「煙草は体に良くないよエリー?」
「現在進行形でアタシの煙草奪って吸ってるやつに言われたかねぇよ。」
半ば呆れながら、エリーはもう一本煙草を取り出し自分で火をつけて吸い始めた。
「ふぅ……さてとほんじゃあちょっくらこいつの性能ってやつを試してくるわ。」
「うんうん、行ってらっしゃい。これから長くエリーの相棒になる予定の銃だ、大事に扱ってよ?」
「あぁ、わかってる。」
弾薬の入ったケースをもってエリーはリースの研究室を後にするのだった。
エリーが席に着いたのを確認するとリースが語り始める。
「さて、それじゃあ今日集まってもらったのは他でもない。吸血鬼についての見聞を広めてもらおうと思ってね。」
「吸血鬼についての見聞ねぇ。」
「先日捕らえた芦澤カナから得られた情報がいくつかあってね。端的に言えばそれの共有さ。まずエリーも実際に戦ったからわかっているとは思うけどどうやら吸血鬼っていうのは異常な再生能力を有しているらしい。」
「あぁ、銃弾をぶちこんでもケロッとしてやがったな。」
「うん、だけどある金属による攻撃ではある程度のダメージが期待できるらしい。それがこれさ。」
そう言ってリースが取り出したのはエリーのバイクに取り付けられていた武装のブレードだった。それを見てエリーもあることに気が付いた。
「そういやそのブレードで攻撃した時は再生してなかったな。」
「そう、古来から吸血鬼ってのは銀製の武器で殺すって手法が現代まで伝わっていてね。迷信かどうかを確かめるがてらこれを作ったのさ。結果はエリーも知る通り効果は抜群だった。おそらくこれから吸血鬼に対する有効な攻撃手段はこういう銀製の武器になるだろうね。」
ちなみに……と続けてリースは銀と同様に古来から吸血鬼に効くとされているニンニクや十字架、聖水などのものは一切効果が認められなかったとも説明した。
「それと、吸血鬼化すると超能力的なものにも目覚めるらしい。芦澤カナの場合自分の血を操り、形を変化させることができたみたいだ。これに関してはサンプルが彼女一人しか調べられていないからすべてに吸血鬼に当てはまるとはわからない不確定要素だけど。」
「吸血鬼ってやつの生態を調べるにはまた違う吸血鬼をとっ捕まえてこねぇといけねぇって話か。」
「そうだね、まだまだ研究が必要。ってわけで、今度は別のサンプルを捕まえてきてほしいな?」
キラキラと目を輝かせ、エリーへと視線を向けるリース。
「ったく、簡単に言ってくれるぜ。」
「前回はほら、普通の銃火器が効かないってのを知らずに挑んだわけだから。エリーがちょっと怪我しちゃったけど、今回はお陰でちゃんと準備できたよ。」
そう言うと、リースは机の上にガンケースを置いた。それを開けると、中には流通している銃とは少し異なる形の1丁の重厚なハンドガンが入っていた。
「ふん?こいつは……正規のメーカー品じゃねぇな。オリジナルか?」
「そ、設計から全て私がやったものさ。持った感じどうかな?」
「悪くねぇ。口径もデカいし、ハンドガンってよりかはマグナムに近い。」
「そのとーり!名付けて対吸血鬼用ハンドマグナムMk.1!」
「そのまんまじゃねぇか。」
「だってそれ以外に名前が思いつかなかったんだもーん。あ、銃弾はこれね。」
リースはカートンボックスを机の上に置き、その中から大口径の銃弾を1つ取り出す。
「これも対吸血鬼用に調合したオリジナルの銃弾さ。炸裂式で中には水銀が入ってる。銃弾の貫通力はあんまりないけど、体内で爆発することを想定したつくりになってるんだ。」
「ほぉ……。」
エリーはリースの持っていた銃弾を受け取ると、マガジンに一発装填した。
「試し撃ちは別室のシューティングレンジでやってね。あ、でも弾はまだそんなに作れてないからほどほどにね?」
「わかった。」
エリーは握り心地を確かめた後、マグナムにセーフティーをかけて服の内側のホルダーへとしまう。
「そういやメイとバリーの奴はどこいった?今朝から姿が見えねぇが……。」
「二人は今芦澤カナの身柄を渡しに行ってるよ。」
「あいつらだけで大丈夫か?」
「問題ないさ、最悪の場合対応できるようにバリーには武器も渡してある。」
「ならいいんだが。」
エリーは懐から煙草を一本取りだすと口にくわえた。そんな彼女にリースがライターを近づけてきた。
「ん。」
咥えた煙草をライターに近づけたエリーだったが、彼女が予想していた動きとは裏腹に、リースはパッとエリーの咥えていた煙草を奪うと、自分の口に咥えそれに火をつけた。
「煙草は体に良くないよエリー?」
「現在進行形でアタシの煙草奪って吸ってるやつに言われたかねぇよ。」
半ば呆れながら、エリーはもう一本煙草を取り出し自分で火をつけて吸い始めた。
「ふぅ……さてとほんじゃあちょっくらこいつの性能ってやつを試してくるわ。」
「うんうん、行ってらっしゃい。これから長くエリーの相棒になる予定の銃だ、大事に扱ってよ?」
「あぁ、わかってる。」
弾薬の入ったケースをもってエリーはリースの研究室を後にするのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
自衛官、異世界に墜落する
フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・
現代軍隊×異世界ファンタジー!!!
※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる