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第五章
野外料理の醍醐味
しおりを挟む火で焼かれているレインガルーダを見つめて、ウォータードラゴンは口からダラダラと、まるで滝のような大量のよだれを流している。
「お、美味しそうですねぇ~。」
「そうだな。」
彼女はまるで魅入られるように、皮が黄金色になってきているレインガルーダにどんどん顔を近づけていく。
「今つまみ食いしたら、食べさせてやらないぞ?」
「はっ!?あ、あはは~美味しそうだったのでぇ、ついつい……我慢します。」
薪の前で彼女は正座して、じっ……と焼かれるレインガルーダを見つめていた。
「にしても、数が少なくなったからか、上に飛んでる奴らも襲ってこなくなったな。」
「メスが様子を見に来たみたいですからねぇ~。こっちが手を出さなかったら、もう襲ってこないと思いますよぉ~。」
「そっか、それならもう安全だな。」
これだけの数のレインガルーダを討伐すれば、人に及ぶ被害も少なくなるだろう。後は放っておいてもきっと大丈夫。
「っと、脂が滴ってきたな。」
滴ってきている脂を刷毛ですくい取って、レインガルーダの肉全体に塗りたくっていく。丸鶏はこうして焼いてあげると、表面の皮がパリッと仕上がるのだ。
「さて、どのぐらい火が入ったかな。」
金属の串を肉の中心まで刺し込み、それの温度を触って確かめる。
「ん~、あともうちょっとって感じかな。」
まだ中心部分が、ほんのりと温かいだけに留まっている。もう少し熱くなれば火が入った証拠なんだが……。
「ま、待ち切れないですねぇ。」
「こういうのを今か、今か~って待つのが、野外料理の醍醐味だぞ?」
「うぅ~、焦らされるのは嫌いですよぉ~。」
それから滴ってきた脂を塗って焼くこと十分後……もう一度金串を刺して温度を確認してみると、すっかり中は熱々になっていた。
「よっし、出来たぞ。」
「ホントですかぁ!?」
レインガルーダを火から下ろして、彼女に手渡した。
「味付けはシンプルに塩と胡椒だけだ。今回は素材本来の味を確かめたかったからな。」
「充分ですよぉ~、じゃあいただきま~す!!」
焦らしから解放された彼女は、大口でレインガルーダにかぶりつく。彼女がかぶりついた瞬間に、パリッと皮が弾け、肉汁がジュワっと溢れ出ていた。
食べている様子を見ているだけでも、お腹が減ってくるような光景だ。
「おぉ……美味しいです~!!」
一口じっくりと味わった後、彼女はキラキラと目を輝かせながら、レインガルーダを骨ごとバリバリと食べ始めた。
「さて、俺も食べてみようか。」
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