1,014 / 1,052
第五章
食事のお誘い
しおりを挟むお酒を飲んでいた俺以外の面々がすっかり潰れてしまった頃、屋敷に誰かが訪ねてきた。
「この時間ってことは……。」
ある程度の予想をつけて扉を開けてみると、そこには目の下に大きな隈を作ったカリンがいた。
「お、お疲れ様です。」
「ここ最近すまないな社長。マドゥの事を任せっきりにしてしまって。」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。……今ちょうどご飯を食べていたところだったんですけど、良かったら食べていきます?」
「良いのか?」
「もちろん、たくさん食べて英気を養っていって下さい。」
「では、せっかくならユリとフィースタも連れてきたいのだが……構わんか?」
「大丈夫ですよ。」
「感謝する。」
そしてカリンは目の前からパッと姿を消すと、次の瞬間にはユリとフィースタを連れてまた現れた。
「お招き頂いてありがとうございます、あなた様。」
「ご、ご馳走になるぞヒイラギ社長。」
「フィースタもユリもいらっしゃい。たくさん食べてってくれ。」
玄関口で話していると、リビングからひょっこりと顔を出してマドゥがこちらの様子を伺っていたらしい。それにカリンが敏感に気づいた。
「マドゥ!!」
マドゥの事を目にした瞬間、カリンの目の下にあった隈がパッと消えていた。いったいどういう原理なのだろう……と疑問に思っていると、カリンがいつの間にやら屋敷の中に入って、マドゥのことをぎゅ~っと抱きしめていた。
「ま、ママ…お、お帰りなさい。」
「う~むっ、ただいまだ!!すまなかったなぁ、マドゥや。しばらく淋しい思いをさせてしまった。」
「ぜ、全然大丈夫だったよ?シアちゃん達とずっと一緒だったし……。」
「今日からは、これまでの埋め合わせを含めてさらに愛情を注いでやるからなぁ。楽しみにしておくのだ。」
仲の良さそうな二人の様子を見て、フィースタとユリの二人も笑っていた。
「マドゥが家族になってからというものの、母上が楽しそうだ。」
「ふふふ、そうですね。」
「ちなみにユリは、あれを見て羨ましいとか思ったりしないのか?」
ふと疑問に思ったことを問いかけてみると、ユリはう~んと頭を悩ませた。
「羨ましいと思わない……と言えば嘘になる。とはいえ、アタシももう立派なエルフの大人になったしな。」
そう語ったユリの言葉を聞いて、俺は以前フィースタが教えてくれた、エルフにおいて大人と認められる年齢を思い出してしまった。
(ん?…………ん!?エルフの大人って確か、100歳を超えてやっと大人として認められるって話を前にフィースタが……。)
チラリとフィースタの方に視線を向けてみると、俺の思っていたことを見抜いたようで一つ大きく頷いた。
ちなみにこれは後ほど判明したことなのだが……社員として入ってくれたエルフ達全員が、エルフ基準で大人と呼ばれる年齢だった。
4
お気に入りに追加
633
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!
矢立まほろ
ファンタジー
大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。
彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。
そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。
転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。
しかし、そこには大きな罠が隠されていた。
ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。
それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。
どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。
それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。
果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。
可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる