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第五章
戦略的撤退
しおりを挟む「随分苦戦したようだな、ナルダッ!!」
「チッ……妨害魔法が乱れたか。ここで増援とは面倒な。」
上から魔法を乱れ撃ちながら、降下してくるカリンとリリン。その魔法の攻撃から逃れたナルダは、俺に鋭い視線を向けてきた。
「……今日は一度退く。次に私が来る時まで震えて待っていろ。」
そう言い残してナルダは俺たちの前から消えた。
「逃げたか?」
「そうみたいね。」
ナルダが去ったことを確認すると、二人は俺のところに駆け寄ってきた。
「社長、怪我はないか?見たところ服はボロボロになっているようだが……。」
「大丈夫です。」
さっき本当に死を垣間見たけど、神気を解放したからなのか、何とか生きている。しかし、神気を解放したからどうなったのか……イマイチ自分でもわからない。
「一応これで一旦危機は去ったのかしら?」
「本当に一旦だな。奴はまた来ると言っている、油断はできぬな。」
「そうですね。」
「兎にも角にも社長は休んでくれ。此方は次の襲撃に備えるため、フィースタ達と協議を進めてくる。」
そして一度カリン達と別れて、俺は師匠のところへと向かった。
「失礼します。」
「柊か……って、めちゃくちゃボロボロじゃないか!?」
「実はさっきナルダの襲撃があって……。」
「ナルダか、あいつは相当強かっただろう?」
「本当に強かったですよ。一回死にかけましたから。」
「死にかけたとしても、今こうして生きているじゃないか。それでいいだろう?」
「まぁ、そうですね。」
「ところで、生存報告はそのへんにして……柊、まともな服を着たほうがいいぞ?その……下が丸見えだ。」
「いっ!?」
師匠は照れ照れと顔を赤くしながら、申し訳無さそうに言った。そこで初めて俺は自分の服の惨状に気が付いた。
「す、すみませんっ!!すぐに着替えてきます!!」
「あ、あぁ……。」
急いで部屋から出て、新しい服に着替え始める。
(なんでリリンもカリンも言ってくれなかったんだぁ……ってかあの二人にも見られていたと思うと、めちゃくちゃ恥ずかしくなってくる。)
鏡で確認することはできないが、おそらく俺の顔は羞恥心で真っ赤になっていることだろう。
そして着替えを終えた後に、改めて俺は師匠の部屋へと戻るのだった。
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